表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女の位を奪われたけど、精霊の加護は私に与えられたようです  作者: 三門鉄狼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/36

聖女のその後【SIDEクリスティナ】

「誰よ、こんなぬるい紅茶を淹れたのは!」


 クリスティナはカップをソーサーに叩きつけるように置いた。

 ガチャン!と音が彼女の私室に響き渡るが、もちろん割れるようなことはない。

 感情に任せているように見えて、ちゃんと加減している。

 もちろん侍女に対する嫌がらせである。


「も、申し訳ございませんっ」

「はやく淹れなおしてきて」


 怯えるようにティーセットを持って部屋を出ていく侍女を見ても、クリスティナの気は全然晴れなかった。


(まったく、どうなっているのよ!?)


 苛立たしげにテーブルを指で叩きながらクリスティナは考える。

 しかしどれだけ考えたところで答えが出ないことはわかっている。


 どうして自分に聖女の力が発現しないのか?


 聖女の即位式はとどこおりなく行われた。

 定められたとおりに誓いの祈りをし、司祭長から冠を授けられた。

 それから祭壇にこうべをたれた。

 聖なる精霊がこの身に宿ったという実感はなかったが、精霊は基本的に人間が認識できる存在ではない。

 手順どおりにしたのだから問題はないはずだ。


 しかし――即位式から一週間たっても、クリスティナの身にはなんの変化もなかった。


 精霊の姿が見えたと言われているのは初代聖女だけだが、歴代の聖女の多くは

「精霊の気配を感じる」

 とか

「精霊の声が聞こえる」

 といったような経験を証言として残している。


 だがクリスティナにそんなものが訪れる気配はまるでない。


 それに、魔法学園で習ったとおりに治癒魔法の術式を唱えてもなにも発動しない。


 クリスティナとしては正直、精霊を感じられるかどうかなどどうでもいい。

 それよりも治癒魔法が使えなくては、聖女としてまるで役立たずということになってしまう。


 そちらのほうが問題だった。


(せっかくアリシアを追い払って聖女になったのに)


 あの庶民の女はずっと目障りだった。

 クリスティナが成績でトップを取ることは入学時から決まっていたことだったのに。

 あの女はことあるごとにクリスティナを出し抜いてきた。


 そのせいで聖女庁も一回はあの女を聖女に認定してしまったほどだ。

 幸い即位式の前にクリスティナの実家のエシャート公爵家が圧力をかけて間違いを正させたけど。


 やり方が強引だったために、アリシアが試験で不正を働いたことになり、その結果彼女は魔法学園の卒業資格を失ってしまったが、クリスティナにとってはそんなことはどうでもいい。


 目の前を飛び回るうっとうしい羽虫を追い払ったあと、その羽虫がどうなろうが知ったことではないのと同じだ。


 それよりも、そんな面倒を乗り越えてようやく聖女になったというのに、いまだにその成果がないのが彼女の苛立ちの原因なのだった。


 紅茶が遅い。

 次はそう言って侍女をいびってやろうと思っていると扉がノックされた。



「クリスティナ、いいかな」



「は、はい、少々お待ちくださいませ、セウェルス様っ」


 婚約者の来訪に、クリスティナは慌てて身だしなみを整える。

 鏡で問題がないことを確認してから、椅子に座り直して姿勢を正す。


「……お待たせいたしました。どうぞ」


 そう告げると、セウェルス第一王子が入ってきた。


 絹のような金色の髪にインディゴライトのような青色の瞳。

 眉目秀麗を絵に描いたようなその姿に、クリスティナはいつも惚れ惚れする。


 しかしここ数日は同時に気まずさも感じてしまっていた。

 

「どうかな、聖女の力は目覚めたかい」

「いえ……まだ、調子が優れないようで……申し訳ありません」


 クリスティナが心苦しそうに頭を下げると、セウェルスは一瞬困ったような顔を浮かべる。

 しかしすぐに爽やかな笑みを取り戻すと、優しい声で言ってくる。


「そうか……なに、焦ることはない。記録では、覚醒までに一ヶ月かかったという聖女もいる。まずは体調を整えることだ」

「はい……ありがとうございます」


 クリスティナがそう答えると、セウェルスは彼女の肩を軽く叩き、そのまま部屋を出て行こうとする。


「あ、お待ちください。せっかくですから、一緒にお茶を……今、侍女に淹れさせておりますので」

「すまない。いろいろと雑事が溜まっていてね。また必ず」


 セウェルスはあっさり部屋を出ていってしまった。


「…………っ」


 クリスティナは悔しさに顔を歪ませる。


 セウェルス王子は毎日のようにクリスティナの私室を訪れては、聖女の力に目覚めたかどうかを確認してくる。

 だが、まだ一度もそれ以外の話をしていない。


 せっかく聖女になり、彼と婚約者となったのに。

 これでは学園で同じクラスだったときより接点が少なくなっている。


(なんで! どうしてこうなるのよ! ああイライラする!)


 クリスティナは綺麗なカールが台無しになりそうなほど激しくブロンドの髪をかき回す。


「クリスティナ様、お待たせいたしました……」

「遅いわよ! このグズ!」


 物事が思いどおりに進まない苛立ちをクリスティナはふたたび侍女にぶつけるのだった。

ブクマ、ポイントたくさんいただいてます! ありがとうございます!

今日はこの話も入れて4話更新予定。

次は夕方に更新予定です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ