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聖女の位を奪われたけど、精霊の加護は私に与えられたようです  作者: 三門鉄狼


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陰謀と希望【SIDEクリスティナ/リゼル】

「どういうことよ!」


 使用人がもたらした報告にクリスティナは叫び声を上げた。


「はい、ですから暗殺は失敗したようでございます」

「失敗!? なんで! ふざけないでよ!」


 あまりに淡々とした態度の使用人にクリスティナはいらだちを隠せない。


「落ち着いてください、お嬢様。このようなことはよくあることでございます」

「どうして落ち着いていられるのよ! このままじゃ……」


 アリシアに知られてしまった。

 もしかしたら依頼者が自分だということももう知られているかもしれない。


 報告ではあの女のところにはカルカス第二王子とロミア王国の王子がいるという話だ。

 あの女一人ならいくら騒いだところで大したことはできないだろう。

 しかし二人の王子の証言が加わればどうだろうか?


 たとえ証拠がなくても、噂は流れてしまう。

 聖女が暗殺を依頼したと。

 そうなれば自分の評判は地に落ちる。


「なんでよ! どうしてこうなるのよ!」


 クリスティナは腕を振り卓上のティーセットを振り払う。

 床に落ちた食器が不快な音を立てて割れた。


「なんとかしなきゃ……なんとか……」


 頭を抱えなにかに取り憑かれたようにそう繰り返す。

 彼女の中ではまだ、アリシアをどうにかすれば自分は元の地位に戻れることになっている。

 聖女の位を取り戻し、セウェルス第一王子と結婚し、この国の女性のトップに上り詰められる。

 そう信じているのだ。


「お嬢様」


 使用人が言ってくる。


「なによ」


「先ほど入手した情報なのですが、どうやらセウェルス殿下がアリシア様を王都に呼び出したようです」


「どういうことよ!?」


 使用人の話によればセウェルス王子は宮廷魔導師のリゼルを捕らえ、彼の名を騙った手紙であの女を呼び出したらしい。


「アリシア様は各地で魔物を討伐し聖女と呼ばれ評判を集めております。殿下はその力を利用しようとお考えなのではないでしょうか」


「そんな……」


 冗談ではない。

 セウェルス王子の心はクリスティナから離れてしまっている。

 王子だけではない。

 聖女庁も、父ですらも、クリスティナを見限っている。


 もしあの女が聖女としての力を持っているのなら、ふたたび彼女を祭り上げかねない。


 自分があの女に負けてしまう。


「ダメよ……そんなの、絶対にダメ……!」


「ひとつ、方法がございます」


 使用人の言葉にクリスティナは目を見開いて飛びついた。


「なにっ!? 早く話しなさい!」


「衆目の前で見せつければ良いのです。アリシア様ではなくお嬢様が本物の聖女であると」


「……それができればこんなことにはなっていないのよ!」


 本来は自分が手に入れるはずだった聖女の力はあの女に奪われてしまった。

 自分が本物の聖女だと証明する手段はない。


 少なくともクリスティナの中ではそういうことになっているのだった。


 クリスティナは髪をかきむしる。

 綺麗にカールしたブロンドの髪が、ぐしゃぐしゃに乱れてしまう。


 そんな荒れた様子のクリスティナを見て、使用人はあくまで淡々と告げる。


「それができるのでございます」


「え……?」


「先日、屋敷に出入りしている商人が面白い魔道具を持って参りまして――」


 そう語る使用人の顔はろうそくに照らされ怪しく輝いていた。



◇◆◇◆◇



「まいったな……」


 リゼルは小さく息をついて牢屋のベッドに腰を下ろした。


 エルテシア王宮にある牢に彼は閉じ込められていた。


 カザハン王国北端の都市ザレスからエルテシア王国の王都に戻ったリゼルは国立図書館へ向かった。

 ジル王子の竜化を治す方法について調べるためだ。


 心当たりはあったのでいくつかの本を借り出し、宮廷魔導師団の本部に戻った。

 そして自室で該当箇所を読み漁っていたところに王国兵が現れた。


 セウェルス第一王子の命令でリゼルを拘束すると言う。

 罪状は国家に対する反逆罪。


 もちろんリゼルにはまったく身に覚えがないが、命令を受けただけの兵士にそんな抗議が通じるわけもない。

 リゼルは王宮の牢に連れていかれた。


 その場で魔法で兵士を攻撃し逃げ出すことはできたが、それでは宮廷魔導師の皆に迷惑がかかる。

 たとえ冤罪だろうが陰謀だろうが、正当な裁きの場に顔を出さず逃げれば罪を認めることになる。


「とはいえ、いつまでもこうしているわけにもいかない……」


 実は竜化を治す方法についてはあらかた調べ終えていた。

 ただ、そのためには少々レアなアイテムが必要で、それを探すのに時間がかかりそうだった。


 あまりのんびりと王宮の牢屋を堪能してはいられない。


「仕方ないな」


 リゼルは立ち上がると魔法を発動させる。

 牢屋には魔力の発生を阻害する術式がほどこされていたが、それを無効化してしまう程度はリゼルにはたやすいことだった。


 やがてベッドに横たわるリゼルの偽物が現れた。

 幻影を生み出す魔法だ。

 声をかけても反応しないし触ることもできないのですぐにバレるだろうが、しばらくごまかせればいい。


 それからリゼルは牢の壁に土魔法の術式を流し込み、穴を開ける。

 くぐり抜けたら元のとおりに壁を戻しリゼルは牢屋を脱出した。

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