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聖女の位を奪われたけど、精霊の加護は私に与えられたようです  作者: 三門鉄狼


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竜化

 私たちはザレスへ向けて出発した。


 ザレスはそこそこの規模の街なので医者がいるとのこと。ジルの腕を診てもらうことができる。

 もっともこの腕が医者にどうにかできるのかどうかはわからないけど……。



 まるで竜のような鱗に覆われた腕。



 ジルはそれを押さえ込むようにしながら苦しんでいる。

 ひどく発熱しているところは竜人族の土地での熱病のような症状に似ている。


 しかし今回は私の力でどうにかすることはできなかった。


 体内で魔力が暴れ回っているのはわかるんだけど、ルーの手を借りてそれを静めようとしてもうまくいかないのだ。

 まるで素手で嵐を止めようとしているみたいな感触。

 暴れ方が前の比じゃないくらい激しい。


 治癒魔法は当然のように効果がなかった。


 聖女の力を持っていても私にはなにもできない。

 それがすごく悔しかった。




 カルカス殿下より先行して私とジルを乗せた馬車はザレスに到着した。


 リゼルはもうこの街にいるのだろうか。

 彼に会いたい気持ちはもちろんあるけど、今はジルのことが最優先だ。


 私たちは診療所へと駆け込んだ。


「……こんな症状は見たことがありません」


 医者の反応は予想していたものではあったけど、それでもショックだった。


 街一番の腕だと評判を聞いてきたその医者は困惑するように頭を横に振る。


「竜人族なら身体を竜に変じると言いますからこのようになることもあるでしょうが……この方は人間ですよね?」


 ジルが第五王子だということは明かしていないので、医者はそんなふうに言う。


「ええ……」


 私は頷きながらある可能性を思いついていた。


 いえ、でもそんなことってあるの?


 思いついたことを口にしようか迷っているところに診察室の扉がノックされた。


 現れたのはカルカス殿下と、


「リゼル……?」


「アリシア!」


 視力を矯正する眼鏡という器具をつけた青年が私に駆け寄ってきた。

 濃い青の髪もアパタイトみたいな水色の瞳も昔のままで、すぐに彼だとわかった。


 服装だけは立派な刺繍のほどこされたローブに代わっていたけど。


 リゼルは私の両肩を優しく抱くようにつかんで言ってくる。


「よかった……行方不明って聞いて……王都にいなかったから即位式の事件のことを知るのが遅くなってしまったんだ。本当にすまない」


「ううん、大丈夫。ありがとう、心配してくれて」


 私は思わず笑みを浮かべてしまう。

 心配性で過保護なところは相変わらずだ。


「でも、どうしてここに?」


 リゼルがこの街に到着してたときはカルカス殿下が事情を話して、ジルの診察が終わるまで待っていてもらう予定だったはず。


「それがね、リゼルはジル王子の症状がなにかわかるかもしれないっていうんだ」


 カルカス殿下の言葉にお医者さんが「お、王子!?」と驚愕しているけど、相手にしている余裕はなかった。


「リゼル、本当!?」

「うん。もしかしたらだけど……」


 リゼルはベッドに寝ているジルに向き直った。

 鱗に覆われた腕を観察し、何度か探知魔法でジルの魔力を調べていく。


 その様子を見て私は息をのむ。


 横で見ていてもわかった。

 リゼルが発動した術式の精緻さ。

 私なんかとは、ううん、もしかしたら魔法学園の教師の誰とも比べ物にならないくらい正確で複雑な展開だ。


 昔はわからなかったリゼルの持つ魔法の才能が今になってようやくわかった気がした。


「……間違いなさそうだ」


 ジルの身体を調べ終えたリゼルが小さく息をついて言う。



「これは『竜化』だね」



「竜化……」


 聞きなれないその言葉を私は思わず繰り返す。

 リゼルは頷いて説明を続ける。


「体内にある魔力がドラゴンの持つ魔力と同じ性質に変化する。肉体もそれに影響を受けて変質してしまうんだ」


「っ!」


 私はカザハン王国でのことを思い出す。

 聖女の浄化の魔法でも倒せない魔物――魔獣に襲われたときにジルが発動した炎魔法。

 竜人族のドランの魔法に似ていると思ったけど、勘違いじゃなかったんだ。

 あのときすでにジルの竜化は始まっていたのかもしれない。

 いえ、きっとそれよりもっと前から……。


「竜化はドラゴンの魔力に接することで、それに反応して始まると言われている。心当たりは?」

「ええ……」


 私は頷く。

 私とジルは竜人族の村に滞在した。

 そしてジルはその夜、魔力の暴走で高熱を出して苦しんだ。

 あのときが始まりだったんだ。


「でもどうしてジルだけ? 一緒に竜人族の土地に行った私はなんともないのに……」


「……誰でも竜化が起こるわけじゃない。もともと潜在的にドラゴンに近い性質の魔力を持っていなければ竜化は起こり得ない。そしてドラゴンの性質は血統によってしか受け継がれない」


「…………」


 さっき頭をよぎった可能性がふたたびよみがえる。

 そう、それはあり得ない話じゃないのだ。


 ロミア国王の六人の子供のなかでジルだけ母親が違う。

 その母親というのはもしかしたら……。


 リゼルは私が考えていることを読み取ったかのように告げた。


「ジル殿下には竜人族の血が流れている」

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