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聖女の位を奪われたけど、精霊の加護は私に与えられたようです  作者: 三門鉄狼


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襲撃者

 デッキに上がってきたドランは無言で私を見下ろしてくる。


 話があるって言ってたのになにも言ってこない。

 我慢しきれなくなって問いかけようとしたところで、ドランの視線がそれた。


 驚いた表情で周りを飛び回っているルーを見ている。


「なっ……聖なる精霊? まさか貴様と契約しているのか?」


『そうだよー。ルーはアリシアの精霊』


 ドランの言葉にルーが答える。

 え? ドランにはルーが見えるの?


 私以外の人間には、ルーが魔力を高めて姿を見せるようにしないと見えないはずなのに。


『竜人族とかー、エルフとかー、魔力の多い種族には最初から見えてることが多いみたい』


 ルーがそう教えてくれる。

 そうだったんだ。


「聖なる精霊と契約しているとは、まさか貴様、聖女……?」

「ええと……」


 迷ったけど、私はけっきょくドランに事情を正直に話すことにした。

 べつに秘密にしなければいけないことではないし、そこをごまかして上手な説明ができるとも思えなかった。


「ふん、やはり人間というのはどうしようもなく愚かだな。富だの地位だのにこだわり、真の名誉を見失っている」


 私の話を聞き終わったドランは吐いて捨てるようにそう言った。

 相変わらず乱暴な口調だけど、その言葉に私は少しだけ救われる。


「貴様も貴様だ。そのときなぜ自分を陥れた者たちに立ち向かわなかった?」


「じゃあ、あなたならどうしてたの?」


「即位式とやらに乗り込み、首謀者たちを斬り捨てる」


 いや、それはさすがに乱暴すぎるでしょ。

 まあジルも似たようなことしようとしてたけど……。


「不本意だが……そこはあの男と同感だな」


 ドランは不機嫌そうに言う。

 そんな態度に私は思わず笑ってしまう。


「ふふっ」


「なんだ?」


「いや、二人って実は似た者同士なんじゃないかなって思って」


「冗談ではない! 誰があのような者と……!」


「いやいや、本当に」


 考えてみれば二人のやりとりも兄弟喧嘩みたいな雰囲気だったし。

 それによく見れば、ドランの目はジルと同じシトリンのような金色をしている。


 本当に兄弟だったりして……。


 いや、そんなわけないけどね。


「あ、ところで話ってなんだったの?」


 しゃべっているうちに忘れるところだった。


 私が問いかけるとドランは改めて私に向き合い言ってきた。


「あのときは貴様のおかげで助かった。礼を言っておく」


 あのとき?

 ああ、フロベール子爵が拳銃で狙っているのを知らせたことか。


 そのお礼を言いにわざわざ?

 しかも嫌っている人間の私に対して?

 律儀だなぁ。


「どういたしまして。でも、それはジルにも言ってあげて」


「それは……まあ、考えておく」


 よしよし。

 ジルはあの砦の司令官だ。

 今後もドランたちとやり取りする機会はあるだろう。

 仲が悪いままなのはよくないものね。


「ああ、それともう一つ」


 立ち去りかけていたドランは私に背を向けたまま言ってくる。


「竜化について誰かれかまわず訊くのはやめておけ。特に異性に対しては……そういうのは、親しい間柄になってからするものだ」


「え?」


 それってつまり……。


 ――そんなこと初対面の貴様に教えてやるわけがないだろうが!


 あのときのドランの態度は怒ってたって言うより……。


 うわっ! 恥ずかし……っ!


「あの……ごめんなさい。教えてくれてありがとう……」


「ああ……」


 頭を軽くかきながら、ドランは今度こそ立ち去ろうとする。


 しかし……。


「あれは……」


 ドランが川の方に視線を向け動きを止める。


 彼がじっと睨む先を私も見るけど、特になにも見えなかった。

 さっきと変わらず、くらい森と煌めく川の水面があるだけだ。


「どうかしたの?」

「襲撃者だ。森の中を抜けてこっちに向かってくる」


 本当に来た!

 心臓が跳ね上がる。

 その姿は私には見えていないのに、緊張感がゾワゾワと肌の上を走る。


「襲撃者だ! 川の方からだ! 迎え撃つぞ!」


 ドランは声を上げながら走っていく。


「貴様は部屋の中にいろ!」


 私にそう告げていくのも忘れない。

 言われるまでもない。

 戦いとなったら私は役立たずだ。怪我人の治療が必要になるまでは邪魔にならないよう引っ込んでいたほうがいいだろう。


 そう思って部屋に戻ろうとしたとき、隣の部屋の窓が開いた。

 そちらはジルの部屋だ。


 あ、もしかしてさっきのドランとの会話を聞かれていただろうか?


 そんな場違いな心配は次の瞬間吹き飛んだ。


 顔を出したと思ったらジルはそのままバッタリと倒れてしまったのだ。


「ジル!?」


 慌てて駆け寄り抱え起こす。


「襲撃者……向かわないと……」


 ジルはうわ言のようにそんなことを口にするけど、どう考えてもそんな場合じゃない。


 吐息は荒く、額には脂汗が浮いている。


「ひどい熱……!」


 さっきまでなんともなかったのに、どうして。


 理由はわからないけど、幸い私は治癒魔法が使える。


「ルーお願い」


 私は精霊に呼びかけて治癒魔法の呪文を唱える。


 しかし飛んできたルーはジルを見て言う。


『やめたほうがいいよ。治癒魔法は効かない……ひょっとしたらよけい悪くなっちゃうかも』


 え?

 どういうこと!?

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