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聖女の位を奪われたけど、精霊の加護は私に与えられたようです  作者: 三門鉄狼


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竜人族の土地

 私の一言でジルと竜人族のドランのケンカ? が収まったのはいいんだけど、その結果竜人族の土地へ行くことになってしまった。


 私たちが乗ってきた馬車はドランが放った火炎魔法で破壊されてしまったので、フロベール子爵に馬車を借り、私たちは川を渡る。


 関所を抜け、見たこともないくらい長い橋を渡ればそこは竜人族が住む国だ。


「そういえばドランたちはどうやってこの川を渡ってきたの? 橋には関所があるし、ほかの場所も見張りがいるって話だったけど」


 私は気になっていたことを問いかける。


 ちなみにこの馬車には私とジル、ドランと竜人族リーダーのレイガスさんが乗っている。ほかの竜人族の人たちはもう一台の馬車だ。


 その周りはジルの護衛の騎兵の人たち。


 そう、つまりドランたちは馬車に乗ってこちらへ渡ってきたわけではない。歩いてというのも大変だし、ちょっと気になったのだ。


 と言ってもそんなに知りたいわけじゃない。

 なにか話すきっかけが欲しかった。


 なにしろこの車内、沈黙が続きすぎて気まずい!


 そりゃもちろん仲良しこよしというわけにはいかないのはわかる。

 わかるけど……目的の竜人族の集落までは半日以上かかるそうだ。その間ずっとこの沈黙が続くのは耐えられません!


 ジルと二人のときみたいにとは言わないけど、もうちょっと会話があってもいいと思うの。


 それで話を振ってみたところ、


「ふん、飛んできたに決まっているだろう」


 バカにするようなドランの言葉が返ってきた。


「飛んできた?」


 どういうこと?

 私がさらに問いかけるとドランは小馬鹿にしたような顔でこっちを見て言ってくる。


「どういうもこういうも、飛ぶと言ったら空を飛ぶに決まっている」


 いや、わからないんだけど……。


 それにしても透明感のある綺麗な顔立ちにその表情はとんでもなく不釣り合いだ。


 見かねたレイガスさんが横から解説してくれる。


「我ら竜の民の中には竜化という術を使える者がいる。その程度は異なるが、背に翼を生やし空を飛ぶことができる者は多い」


 なるほど!

 理解できました。


 私の隣のジルも頷いた。


「空には警戒の目も向きにくい。夜闇に乗じればまず見つからないだろう。考えたな」


 ジルの言葉に「そういうことだ」と頷くレイガスさん。

 しかしドランは小馬鹿にしたような表情のまま、


「はっ、ここまで説明しないと理解できないとはな。人間はずいぶんと鈍い」


「……人間は翼なんか生えねえんだよ。それを前提に説明できないやつのほうが鈍いんじゃねえのか?」


「なんだと!」


 あーもーどうしてこうなるの?

 いちいち突っかかるドランもドランだけど、ジルもドラン相手だとなんだか喧嘩腰になるし……。


 馬車の中で剣でも抜かれたらたまらないので私はまた間に割って入る。


「私、竜化って知らなかった。ドランはどのくらいまで竜に変身できるの?」


「……っ!」


 あれ?

 なんか奇妙な沈黙……。


 ドランは困ってるような怒ってるようなすごい表情で私を睨んで叫んだ。


「そんなこと初対面の貴様に教えてやるわけがないだろうが!」


 ……むかっ!


 そんなに怒ることないんじゃないんですか?

 気まずい沈黙をどうにかしようと思って話題を振ってみただけだったのに。


 ――けっきょくそれ以降は私も黙ってしまい、気まずいまま半日を馬車で過ごすことになったのだった。




 陽が沈む直前くらいに竜人族の村に到着した。


 村の人は私たちを見てすごく警戒していた。当たり前だけど。

 レイガスさんが皆に事情を説明し、ようやく私たちは村に入れてもらうことができた。


 レイガスさんはこの村の長でもあるようだった。


「人間の村とそう変わらないね」

「そうだな」


 レイガスさんとドランに連れられた私たちは周りを見回しながら歩いていく。


 強いていえば、扉のサイズが少し大きいかなというくらい。

 きっと頭の角や尻尾のぶんだろう。


 周りの建物からは村人たちが警戒しきった様子で私たちを見ている。

 人間が襲撃してきているという現状じゃそれも仕方ないだろう。

 石とか投げられないだけまだマシと思おう。




 村長であるレイガスさんの家もほかの家とほとんど同じ外観だった。


 ただ、村の話し合いをしたり、客人を泊めたりすることがあるため建物は大きめだ。

 部屋を用意してもらって私たちはそこに泊まることになる。


 夕食は、竜人族からはレイガスさんとドランの二人だけ。

 当然会話が弾むわけもなし。

 息が詰まるようだった。


「はぁー疲れた……」


 部屋に戻るなり私はベッドに倒れ込んだ。


 こんな気まずいのを、襲撃者が現れるまで続けなければいけないのか。

 自分が提案したこととはいえ……ちょっと後悔。


『すごいすごい! ここすごいねアリシア!』


 と、不意に精霊のルーが姿を見せた。

 キラキラと光を放ちながら窓から外に飛び出していく。


「あ、ちょっと、ルー? どうしたの?」


 私は彼を追いかける。

 窓の外はデッキになっていた。


『ここ、魔力が綺麗でとても澄んでる。すごく過ごしやすい!』


「そうなんだ」


 言われてみれば空気も美味しい気がする。

 どうしてだろう? 緑が多いからかな?


 デッキの柵に手を置いて見回せば一面の森が夜の闇に溶け込んでいる。

 人間の土地の場合は、村のまわりはほとんど切り開かれて畑になっているから、雰囲気は全然違う。


 遠くに星明かりをうつして煌めく川が見える。その向こうは人間の土地――ロミア王国だ。


 ずいぶん遠いところまで来たなぁ……なんて思っていると、森からガサガサ音が聞こえてきた。


 最初は鳥かなと思ったんだど、それにしては音が大きい。


 恐る恐る覗き込んできるとそこには……。


「ドラン?」


「ん? なんだ貴様か。どうした、そんなところで」


「いや、あなたこそなにしてるの?」


「見回りだ。人間が来たと聞いて殺気立っている者もいたからな」


「ええと、それはつまり私たちを心配してくれたってこと?」


「ちっ!」


 なんで舌打ち!?


「貴様らは一応客人だ。客人になにかあれば我らの名誉が傷つく」


 あーはいはい、わかりましたよ。

 私たちのことは嫌いだけど、自分たちの体面のために仕方なーく守ってくれてるのね。


「それはありがとう。私はもう寝るから、おやすみなさい」


 さっさと部屋に戻ろうとするとドランが呼び止めてきた。


「いや、ちょっと待て」


 そして軽くジャンプしてデッキに飛び乗ってきた。

 うわ、すごい身体能力。


「少し話がある」


 え、なに……?

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