表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女の位を奪われたけど、精霊の加護は私に与えられたようです  作者: 三門鉄狼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/36

次の砦へ

 ジルと一緒に砦へやってきて一ヶ月が過ぎた。


 私は相変わらずだ。

 兵士のみんなに魔法を教えたり、怪我をした人を治したり。

 あ、あとスティーブさんに乗馬を教えてもらっている。

 この前みたいなことがあったときに自分だけでも駆けつけられるようにね。

 そのうち剣術も習いたいと言ったらさすがにジルが渋い顔をしていた。


 ジルとも以前と同じように話せるようになった。

 とはいえ、ときどき王族らしい雰囲気が垣間見えたりして、ドキッとしてしまうことはあるんだけど。


 そのジルだけど、魔法の能力が急にアップしたらしい。

 もともと炎魔法が得意だったけど、今では宮廷魔導師団レベルなんじゃないかというすごい威力の魔法を放っている。

 どういうことなんだろう?

 危機を乗り越えて強くなるとかそういうやつ?

 本人は「学園にいたときにこの実力が出せてたらもっと成績上位にいけたのに」って悔しがってたけど。


 そんな感じで一ヶ月が過ぎ、私とジルは予定どおり次の砦に移ることになった。

 ガリアードさんに諸々を引き継いで、馬車に乗り込む。


 私たちが乗るのはスティーブさんが駆る馬車だけど、今回はジルが王族であることを隠す必要がないので、護衛の騎兵が周りを囲んでいる。


「ううう、なんだか落ち着かない」


 これはジルの護衛であって、私が王族扱いされているわけじゃないことはわかってるんだけど。

 それでもなんだか気になってしまう。


「なに言ってるんだ。もし聖女になってたらもっとすごい待遇だったと思うぞ」

「そうかもしれないけど……」

「ほら、見ろ。村の人たちが見送りに来てくれてる」

「え!?」


 窓から外を覗くと、近くの村の人たちがわざわざ道端まで集まってきて、手を振っていた。


「魔物退治のときの噂が広まったんだろうな。あの量の魔物を倒せてなかったら、今ごろこの辺の村はみんな避難してなきゃいけないところだっただろうから、喜んでくれてるんだよ」


 そう言いながら、ジルは窓から村人たちに手を振りかえしている。

 そのそつのない感じは「やっぱり王族だなぁ」と思わせられる。


 一方私はというと、馬車の床にしゃがんで身を隠そうとしていたところをジルにジト目でとがめられた。


「……なにしてるんだ?」

「いや、だって……恥ずかしくて」

「恥ずかしがることないだろ。あいつらはみんな、お前にも感謝してるんだ。ちゃんと応えてやってくれ」


 そう言われ、そっと窓から顔を出す。

 そして村の人たちに手を振り返すと、わっと歓声が上がった。


「聖女様!」

「ありがとうございます! おかげで助かりました!」

「せいじょさまー!」


 誰も彼もが嬉しそうに笑っている。

 私は「いやその、聖女ではないんだけど……」と言いそうになった言葉をなんとか飲み込んだ。


 なんだか満たされたような気持ちが胸に広がる。


 私が目指していたのはこの光景だったのかもしれない。

 たとえ本物の聖女にはなれなかったとしても……。




「あそこが次の砦?」

「ああ、そう見えないかもしれないけどな」


 うん、たしかに。


 馬車が向かう先に見えてきたのは農地の中に建つ立派なお屋敷。

 そう、ジルが普通の貴族だと思っていたときに私がイメージしてた「貴族の屋敷」そのものだった。


「ここは少し離れたところにある川の向こう側が竜人族の領地なんだ。砦……っていうか防壁がその川に築かれていて、あの砦はどちらかというと兵士の宿泊所や物資の保管場所としての役割のほうが大きかった」


 ジルの説明が過去形なのは、その役割が過去のものだからだ。

 竜人族と人間との戦争は大昔の話で、今は長らく争いは起こっていない。


「じゃあここでやることは戦争の準備っていうよりは、竜人族との交渉ごとになるの?」

「そうなるな。重要な交渉はもちろん父上――国王の出番だが、日常的なやりとりはここを任された俺の仕事になる」


 ジルの役目がいくつかの砦の指揮官だと聞いたときはもっと危険な印象を抱いたけど、そんなことはないようだ。

 前の砦も、長らく和平が続いているエルテシア王国との国境沿いだったので、戦争とは無縁な感じだったし。


 私はそのことにホッとする。

 私の魔法は戦争の後方支援にはピッタリかもしれないけど、それでも人々が争って傷つく姿を見たくはない。

 平和が一番だ。


 あ、でも待てよ。

 ジルは交渉みたいな細かい仕事より戦争のほうが向いてるのでは?


「……なんか言いたそうな顔してるな」

「いや、ジルはもしかしてそういう仕事より、派手に戦うほうが好きだったりするのかなって思って」

「あのなぁ!」


 ジルはピクリと眉を釣り上げた。


「言っとくけど、俺はそういう政務に関わる知識もちゃんと学んでるからな。大体、戦争だって指揮官やってたら、派手に魔法をぶっ放してればいいってもんでもないだろ」

「……でも本当は?」

「まあ……魔物相手に魔法ぶっ放してるほうが楽っちゃ楽だけどよ」

「やっぱり〜」

「アリシアっ!」


 からかうような口調の私に笑いながら怒ってくるジル。


 よかった……。

 学園にいたときみたいに普通に話せてる。


 これからもジルとは、こうして馬車で移動して何ヶ所かの砦を回ることになっている。

 その間ずっと気まずいのは嫌だものね。


 ふと、こんな旅がいつまでも続けばいいと思う。

 こうしてジルと一緒に笑い合って馬車に乗り、あちこちを旅して回る。

 魔物を退治して、困っている人を助けて……それって私が憧れていた聖女そのものじゃないか。


 エルテシア王国の正統な聖女のような、派手な名声や煌びやかな宮廷生活はないけれど、むしろそのほうが私の性に合っている。


 そんなことを考えていたら思わず笑みを浮かべていたらしい。

 ジルが不思議そうな顔で言ってくる。


「どうかしたか?」

「んーん、なんでもないっ」




 馬車が前庭に到着し、私とジルは屋敷の玄関前に立つ。


「変だな。出迎えがあるはずなんだが」


 ジルが首を傾げる。


 砦の最高指揮官であるジルが今日到着することは事前に手紙で知らせてあるらしい。

 前の砦でガリアードさんが出迎えてくれたように、この屋敷の責任者が出てくるはずだった。


「手違いでもあったか? とりあえず入ろう」

「待って」


 玄関扉へ向かおうとするジルを私は止める。

 精霊のルーが言ってきたのだ。


『中になにかいるよ』

「なにか……ってなに?」

『わからないけど、強い魔力を感じる』


 魔力?

 屋敷の中に?

 一体なにが……。


『危ない!』

「っ! ジル!」


 声を上げながら私は玄関前から横へ飛び退いていた。

 危険を察知したのだろう。ジルも同じように動いていた。


 次の瞬間。

 燃え盛る炎の渦が屋敷の扉を突き破って現れ、馬車を吹き飛ばした。


 ええええ!?

 何事!?

今日は夜にもう一回更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ