9、悪魔のペルソナ
☆佐藤満里奈サイド☆
私達の家から詩織が出て行った。
ただひたすらに私は呆然とするしかなかった。
私は母親にぶん殴られてしまった。
「あの男と同じ過ちをするなんて」と言われた。
「...」
自室で私は1人で考え込む。
それから私は痛む頬を触っていた。
そしてまた考える。
床にあるカーペットを見ながら...私はただ俯いていた。
私は...父親から幼い頃に性的暴行を一回だけだが受けた。
その後はネグレクト。
幼い頃にやれば良いとあの男は思ったらしい。
それで心に傷が出来てしまい...というかこの話は詩織も母親も知らない。
私が心の奥の闇に秘めた事柄だ。
話が出来ない。
「はぁ」
そんな溜息を吐きながら私は窓から太陽を見る。
それから体操座りをする。
絶望しかない。
私は...浮気相手に...というか。
趣味が2つあっても問題は無いだろうと自分を甘やかした。
相手の男はセフレだ。
だから...というかそれ自体まずいよな。
「...はぁ...」
まさか因果がここに巡って来るとは思わなかった。
私は全ての過ち...を犯しこれから先どうしよう。
詩織にも嫌われた。
母親との関係も曖昧且つ曖昧だ。
「...」
私はゆっくり立ち上がる。
それから外に出て行こうとした時。
スマホが鳴った。
そしてそこにメッセージが入っていた。
それは...有紀からだった。
(お前はどうして浮気をした)
その一文だけが書かれていた。
私は(...あまり、話したくない)と返事をする。
すると有紀は(お前な)と書いてきた。
私は(私が話しても良いの?怒らない?)と書く。
(どっちにせよ怒るに決まってんだろ。ふざけんなよお前)
(私にはセフレが居る)
(...は?)
(貴方は本当の彼氏だった。...だけど快楽を求めすぎた)
(...お前マジにふざけているな)
(私は吐き出したかったから)
私の言葉に沈黙。
返事が消えた。
それから数秒後に(先に俺が告白した通り。俺は真面目にお前を愛していた)と書き込む。
そして(それがお前...まさかのセフレだと。セフレとかじゃないだろ。なにかと勘違いしているのかお前は)と怒りの文章が来る。
私は(ごめんなさい)とメッセージを打つ。
(お前話したのかそれは。詩織に)
(話してない。私は...)
(...そのきっかけになったものは何だ)
(私は...性的暴行を父親に受けた)
その言葉に(は?一度もそんなもん聞いた事がないぞ)と返事を書いてきた。
私は(私は性的暴行は受けたけど。...だけど私は過ちを犯した。だからあくまでやっている事は同じなのもある)と書いてから送信する。
すると(...家族に話したのか)と有紀が聞いてきた。
私は(話せなかった)と書きながら部屋から出る。
(これは今から12年前の話だしというか証拠がまず無いから。1回だけ性的暴行を受けただけで...)
(父親がいかに屑って話だな。だけど申し訳ないけど...俺はお前のやった事がデカすぎる。お前のやったのは傷を消す為にやったんだろ)
私は(まあそうだね)と書いてから送信する。
そして私は部屋から出る。
家を出てから私は歩いてからコンビニに向かう。
すると。
「お姉ちゃん」
そう声がした。
私はビクッとしながら背後を見る。
そこに...何故か詩織と有紀が立っていた。
複雑な顔をしている。
そんな馬鹿な。
どこかに行くって言ったのに。
「お前...どこに行くんだ」
「私がどこに行こうとも勝手でしょう」
「お姉ちゃん。話がある」
「...何」
「...お姉ちゃんってあの人から何をされたの?」
その言葉に「...私が受けたのは性的被害。まあ...挿入は無かったけど暴行を受けた」と話してから「で?それを聞いてどうするの?」と2人を見る。
詩織は「そんな事をね。...私達はお姉ちゃんの心情を考えて一先ず話し合いたいんだけど」と話す。
私は「何も」と答えてから歩き出した。
「待て」
「何?」
「...お前、セフレとは何回会った」
「結構な回数だね」
「...俺と別れてからすりゃ良かったのにな。それを」
「貴方は本当の彼氏。...だけど裏では別の彼氏。つまり...使い分けていた」
「...意味が分からない」
有紀は溜息を盛大に吐く。
それから私はその姿を見てから詩織を見る。
詩織は私を静かに見据えていた。
そしてこう言う。
「どうしてそんな非道な真似が出来るの?私達を裏切る様な」
「...私の甘えだろうね」
「いや甘えって...そんなので逃げないで」
「逃げているんじゃなくて本当の事だけどね」
そして私は「...もう良い?コンビニ行くから」とその場を立ち去る。
すると背後からすすり泣く声がした。
それから「そんなので有紀さんを裏切ったのが...キツイ」と言ってくる。
私は「...仕方がなかった」と言ってからその場を改めて立ち去る。
☆空田有紀サイド☆
アイツは自らのはけ口の為にセフレを作ったらしい。
俺は額に手を添えてから「...はぁ」と溜息を吐いた。
そしてハンカチを取り出して詩織の涙を拭いた。
詩織は顔を覆ってから泣いていた。
「詩織。大丈夫か」
「...こんなの気持ちが悪い...」
「だろうな」
「...お姉ちゃんじゃないです。あんな人」
それから詩織はハンカチで涙を拭ってから出口まで歩いて行く。
そして唇を噛んだ。
俺はその姿を見ながら「...」と沈黙する。
そうしてから「詩織。行こうか」と言ってから詩織を見る。
詩織は「ですね。楽しく考えないとやってられないです」と言いながら落ち込む。
その姿に俺は詩織の頭を撫でた。




