始まりの街ポラン
女神のお姉さんは上から優しく微笑んでいた……
上から?
上からなの?
少し見上げる位置にお姉さんの顔がある。
飛んでる?
お姉さん、飛んでるの?
足元を見るとそんな事はないのが分かる。
あれ、僕182センチだよね?お姉さん何センチあるの?
もしかして2メートル越え?
確かβテストの時は160センチ位だった筈。
そこまで考えてふと街の様子を見る。
なんか既視感が有る。
どこかで見た様な……と言うかどこかで見た視点が……。
あっこれ、いつも見てる視点だ。
僕は少し移動して道の側にある建物の窓ガラスに自分の顔を映してみる。
すると、そこにあるのは作成したアバターでは無く現実世界のままの自分の姿だった。
驚いて二度見した後、変顔をしてみるけどそれも再現される。
凄い再現率だなと感心する……じゃない!
そう言えば僕素体選んだ後まだ設定残っているのにやってない。
スキルとか魔法とか……はポイントが無いから選べないけど、出身地とか加護の種類とか、スタート地点も選べた筈。
何より相棒AIの名前を決めてないんだけど。
僕はお姉さんを見つめるとニコッと微笑んだ。
いや、多分システムを確認すれば分かるんだろうけど……。
僕は意を決してお姉さんに尋ねる。
「お姉さん、名前は?」
女神のお姉さんは少し首を捻ってからまた笑顔になって
「私の名前はマリヤ、マリヤ・モイライです。よろしくお願いします。ヒイロウ様。」」
と頭を下げた。
AIの対応は色々設定することができる。
敬語で話すとか、タメ語で話すか大まかなところからお姉ちゃんの様に話すとか妹の様に話すとか、ツンデレとか女王様の様にと色々なパターンから選べる。
でも僕設定してないよね、後から出来るんだっけ?
いや今もっと重要な部分が有ったよ……
今本名で呼ばれたよね、流石に僕でもキャラ名に本名つける勇気はないよ。
「えっ、なんで本名?それに様付けはしなくて良いよ。」
僕が嗜めるとマリヤさんはニコって笑って。
「では、ヒイロウちゃんとお呼びします。私のことはマリヤお姉ちゃんで良いですよ。」
「いきなり砕けた!でもちゃんはやめて。お姉ちゃんと呼ぶのは良いけど……」
「冗談です。ヒイロウさんって呼びますね。」
ニコって笑う笑顔が可愛いね。
なんかマリヤさんが笑顔を見せるとどうも許しちゃうな。
なんかどうでも良い気がして来た。
と、ほんわかしている時に突然轟音がする。
爆発音と共に近くにあったバンクの扉が吹き飛ぶ。
そして中から武装した集団が出て来た。
あ、これは覚えてる。
初期のイベントだ。
銀行に盗賊団が強盗に入って街を荒らしていくんだ。
この時AIの相棒が人質になってそれを取り戻すために盗賊団のアジトに侵入するんだけど、スキルも装備もお金も無いのに出来るかな?
あっ、こっちに来てマリヤさんの手を引っ張ろうとして……投げ飛ばされた……
あれ、抵抗できずに捕まるんじゃなかったっけ?
武器で切り掛かった盗賊も投げ飛ばした。
盗賊が銃を出したよ。マリヤさん、危ない!
あっバリアがあるのね。
手からビームを出したよ……
盗賊団が薙ぎ倒されていく……
このクエスト成立するのかな?
そう考えていた僕がいきなり羽交締めにされる。
「こいつの命が欲しかったら戦闘をやめろ!」
「くっ卑怯な!」
マリヤさんは悔しそうに叫ぶ。
「撤退だ!」
盗賊のお頭らしき男が叫ぶと、盗賊達が街の外に逃げる。
僕を連れて。
えっ、攫われるの僕?
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とにー




