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読んでいただいてありがとうございます。ブクマとポイントがどんどん増えていっています。皆様、本当にありがとうございます。オルフェとリディアーヌの恋にもう少しお付き合いください。

 ふぅ、と息を吐いて、オルフェは書類を纏めた。

 本日の仕事はこれで終わりだ。


「あぁ、やっと終わった。オルフェも終わったか?」

「はい。さすがに疲れました」


 ノアが首を軽く回しながら、オルフェに声をかけた。

 夕方の太陽が眩しい。


「これを陛下に提出すれば、後はフレストール王国の女王陛下が来るのを待つだけだ。オルフェはフレストール王国に知り合いはいるのか?」

「領地の特産品である織物の取引きをしている商人ならいますが、他はいないですね」

「そうか。じゃあ、今度、俺の知り合いを紹介するよ。伯爵なんだが、貿易を主な生業にしている人なんだ。異国の珍しい品物も扱っているから、リディアーヌ嬢へ贈り物でもしたらどうだ?」


 ノアがドロシーに贈ったネックレスは、彼から購入した品物だ。

 女王と一緒に帝国を訪れるので見せたい品物をたくさん持って行く、と書かれた手紙が来ていたので、リディアーヌに似合う装飾品もきっとあるだろう。


「そうですね。ありきたりですが、ネックレスを贈りたいですね。仕事中も身に着けていられる物ですから」

「まぁ、だいたい皇宮で仕事をしている恋人にはネックレスを贈るのが定番だな。邪魔にならないし、首元が華やかになるから、女性たちも喜んでくれる」

「えぇ、迷うのはリディの瞳と同じ青系の宝石にするか翡翠にするか、ですね」

「翡翠一択でいいんじゃないか?」


 翡翠はオルフェの瞳の色。

 恋人の瞳の色の宝石を身に着けるのは、定番中の定番だ。

 ドロシーはノアの瞳の色である青色の宝石が付いたネックレスを身に着けている。


「リディアーヌ嬢が翡翠のネックレスを身に着け始めたら、例の幼馴染くんが騒ぎ出すかも知れないな」

「ただの幼馴染には何の権利もありませんよ。リディと将来を誓い合った恋人は僕です」

「小耳に挟んだ話だが、幼馴染の騎士とやらは同僚にリディアーヌ嬢との結婚は決定している前提の話をしているそうだ」

「流れでそうなっていた可能性はあるそうですが、リディにもうその気はありませんよ。万が一、えぇ、万が一、ですが、僕と別れても彼と結婚することはないそうです」


 リディアーヌと別れる気なんて一切ないが、何となくそういう話になった時、リディアーヌはモーリスと結婚するつもりはないと真剣な顔で言っていた。

 短い期間だがリディアーヌの人柄に触れるにつれて、オルフェは絶対に彼女を手放したくないという気持ちが強くなった。

 リディアーヌの笑顔はオルフェの心を癒してくれるし、一緒にいるととても楽しい。


「ノア様に紹介されたからとかではなくて、僕自身が彼女とずっと一緒にいたいんです。彼女の傍にいられることが当たり前になるように、努力を惜しむ気はありません」

「そうか。まぁ、がんばれ。リディアーヌ嬢の気持ちを冷めさせないようにな」

「はい」


 一通りの準備は出来たので修羅場は終了した。明日からは通常業務に戻る。

 当然、リディアーヌが昼食を持ってきてくれていたのも終わった。

 お互いの仕事があるので昼食を食堂で一緒に食べるのは難しいが、休みを合わせて一緒にいることは出来る。

 

「ノア様、デートってどこに行っていますか?」

「ん?そうだなぁ……ドロシーがあまり家から外に出たことがないと言っていたから、帝都内を適当に歩いてることが多いな。大通りの店を覗いたり、港で船を見たりしているよ。案外、帝都内でも行ったことのない場所が多くて面白いぞ」

「へぇー、僕たちも歩いてみようかな」

「あまり変な店には行くなよ。何か、お前たちは間違われそうだし」


 具体的には大人と思われずに、学生と思われて適当に扱われそうだ。

 童顔二人を並べてみたのはノアだが、確実に酒場などでは子供扱いされそうだ。

 

「いい歳した大人なんですが……」

「残念ながら、初対面の人間は外見で年齢を判断するんだよ」

「身に覚えがありますねぇ」


 余計なトラブルに巻き込まれないためにも、学生のようなデートでもしようかな、とオルフェは思ったのだった。





「リディは今日も可愛いね」

「ありがとうございます。オルフェ様もカッコイイです」


 休みの日に初めて二人で外出することにしたのだが、いつもは侍女の制服を着ているリディアーヌの私服姿をオルフェは素直に賞賛した。

 私服を見るのは二度目だが、今日のリディアーヌは無理に大人びた服を着るのではなくて、少し可愛らしい系の服を着ていた。

 ふわりとした優しい雰囲気を持つリディアーヌが着ると、何だか目を引く。

 通りすがりの男たちがチラチラとリディアーヌを見ているのが分かる。

 いくら見てもだめだ。彼女はオルフェの恋人なのだから。


「リディは帝都の観光ってしたことある?」

「いいえ。言われてみれば、こうして住んでいるのに、帝都の観光スポットってあまり行ったことがないですね」

「住んでいるせいか、あまり観光しないよね。でもせっかく帝都に住んでいるんだから、定番の場所くらい行ってみようよ。ノア様が港の方の景色の良い場所と美味しいお店を教えてくれたんだ。どうかな?」

「いいですね。港の方は行ったことがないので、嬉しいです」


 帝都でも港から離れた場所で育ったリディアーヌは、港方面に行くというだけでワクワクした気持ちになった。

 今まで買い物などは、皇宮近くの一番賑わった大通りで済んでいたので、わざわざ港の方に行くことはなかった。

 一人では危ないということもあったのだが、モーリスがあまり出かけない人間だったので、リディアーヌも出かけることが少なかった。


「僕も今までは出かけることが少なかったから、港の方に行ったことは一度だけかな。でも、リディと一緒なら楽しそうだし、一緒に色々な景色を見て体験をしてみたい」

「私もオルフェ様と一緒なら、今までと違った景色を見られそうです」

「じゃあ、やってみたいことや行きたい場所をたくさん教えて。二人で順番にいこう」

「はい」


 楽しそうに歩く二人は、誰がどう見ても幸せそうな恋人たちの姿だった。

 まさしく二人っきりの世界に入っていたので、その姿をたまたま巡回中だったモーリスの同僚が見て驚いた顔をしていたことに、全く気が付くことはなかった。

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― 新着の感想 ―
完結してから読もうと思っていましたが、我慢できず拝読いたしました。 ふふふ、今後の傲慢な間抜けがどんな醜態をさらしていくのか。 そして、さすがノアの補佐役、なかなかに良い腹黒系で素敵です。 ドロシーの…
何故、両親に報告、連絡、相談していないのか?
ようやくのザマァ
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