表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
創作家のためのアクセスアップ入門  作者: 有沢翔治
ワナビのための読書入門
24/27

第十回 「ゆるどく」をしよう!

 さて、本を継続的に読むにはまず、本を楽しまなくてはいけません。学校の勉強とは違って趣味なのですから、どんな本を読もうが自由です。もちろん漫画、ライトノベル、アニメ、ロールプレイングゲーム……すべての物語は創作の参考になります。

 実際、僕も名探偵コナンからシャーロック・ホームズを読み始めました。しかし、小説を書くのなら小説を読まなければ優れた作品は書けません。漫画家になりたいのなら漫画を読み、作曲家になりたいのなら音楽を聴かなければ優れた作品は生み出せないのと同じこと。スナック菓子やファストフードばかりを食べていたら、料理人にはなれませんよね。

 そして素質として求められる唯一絶対の条件。才能でも何でもありません。物語が好きであることです。漫画嫌いの人が漫画家には向いていないように、音楽が嫌いな人が作曲家に向いていないように、料理が嫌いな人が料理人に向いていないように、物語が嫌いな人はまたワナビに向いていないのです。


 しかし、本とどう向き合うかで好きにも嫌いにもなるでしょう。典型的なのが強制されて読む本。しかも感想文まで書かなければいけないとなると苦痛で仕方ありません。誰かに評価されるとなるとなおのこと。

 大前提として、退屈な読書は罪です。大事なのでもう一度、声を大にして叫びたい。退屈な読書は罪だ!!

 そこで僕は「ゆるどく」を勧めます。ゆるい読書。略して「ゆるどく」。そしてこの「ゆるどく」でも最終的には脳科学の専門書も読むことができます。視点を変えるだけのことですので。


一)作者を殺そう

 もちろん実際に殺したら殺人罪になります。僕が言いたいのは、読書中に作者を殺さなければいけないということ。具体的には「作者の言いたいことは何か」という問題は考えなくてもいいのです。

 例えば安部公房はNHKのインタビューで「書きたいことがあればすでに文字にしている」答えています。

 事実、文芸評論でも作家の主張を考えるよりは、自由な解釈を許容しています。ちなみに前者を作品論、後者をテクスト論と呼びます。

 そして「ゆるどく」ではテクスト論を勧めています。読書を継続的に行なうには自分の評価で楽しむことが大事です。

 例えばドストエフスキー『罪と罰』は純文学として名作と呼ばれていますが、推理小説の要素も含んでいます。特にポルフィーリィ検事とラスコーリニコフとの対決。僕は逆転裁判のBGMが頭から離れませんでした。

 これはドストエフスキーの思想的、神学的な立場はともかく、僕が素直に推理小説として面白いと思ったからにすぎません。実際、乱歩の心理試験は「罪と罰」の影響を受けています。


二)全部読まなくてもいい。

 つまらなかったら飛ばし読みもしても構いません。例えば『レ・ミゼラブル』は事細かに水道管を描写しています。しかし、不要だと思えば読み飛ばしても構いません。

 また評論は結論、解説などから先に読むのも一つの手です。


三)難しければ読まなくてもいい。

 名作は読まなければいけないという強迫観念に駆られそうですが、自分の嗜好に合っているとは限りません。名作でもつまらないと思える作品もあります。例えば、大江健三郎の『万延元年のフットボール』は文体が好きになれません。

 また無名でもどうして評価されていないのか不思議な作品はたくさんあります。例えば山本義隆は物理の解説書を解りやすく書いています。イチオシは『原子・原子核・原子力』。原子力といえばどうしても政治と結びつきがちですが、その論点をできるだけ排除して書かれています。


四)興味を持ったら読もう!

 一部の本はでどうしても悪印象を与えてしまいます。例えばアドルフ・ヒトラー『わが闘争』、マルクス『資本論』、小林多喜二『蟹工船』、三島由紀夫『豊饒の海』。恐れることはありません。どんどん読んでください。

 それにどのような意図で読んでいるかなどは解るはずもありません。

 また思想と作品は別のものです。作家が悪いのであって、作品には罪はありません。例えば連続殺人犯の永山則夫は『無知の涙』という手記を獄中で執筆、出版までしています。しかし『無知の涙』を読んだからといって殺人犯になるとは限りません。もしそのようなことがあれば、日本中が殺人犯だらけになってしまいます。 


五)読書は漫画やライトノベルでもOK!

 漫画でも構いませんし、漫画でも素晴らしい作品もあります。例えば

・『あさきゆめみし』

・『ちはやふる』

 この二つは古典文学の入り口として最適です。

 また医療福祉の漫画も最近では多く出ています。ぜひ、これらの漫画とともに医療や福祉に興味を持っていただければ幸いです。

・『光とともに』……自閉症患者の家族を扱っています。

・『ブラックジャックによろしく』……医療現場の実態を描いています。特に勧めたいのが『精神科編』、『ガン病棟編』。

・『日々コウジ中』……高次脳機能障害という症例を扱っています。くも膜下出血、交通事故などの後遺症で脳が損傷。その結果、記憶力などに影響が出るのですが、ユーモラスな語り口とともにこの症例の認知度が広まって欲しいと考え、ここに紹介します。

 意外と奥が深いのは

・『クッキングパパ』

 何の変哲もない家庭の一風景に思えるかもしれません。しかし『クッキングパパ』では男性が料理を行ない、女性が働いているのです。1985年当時、まだまだ料理は女性の仕事だという風潮があったのでしょう。

 漫画版では主人公、荒岩一味が料理をしていることを同僚に隠して、先に退社しています。つまりジェンダーの問題に挑んでいるとも解釈できるのです。

この他にもアニメと小説の違いについて、『大字・字・ばさら駐在所』などとの違い、『美味しんぼ』、『中華一番』などとの他の料理漫画との違いを考えるのも面白いでしょう。またうえやまとちの個人史について調べる方法もあります。

 また、漫画には料理のレシピが付いていますが、再現して実食もできます。つまりはクッキングパパという一つの作品で多角的な楽しみができると言えましょう。そして楽しむ視点が多ければ多いほど、楽しければ楽しいほど読書の醍醐味を知っている、つまり読書力があるのではないでしょうか。

 そして、読書をすればするほど創作の幅は広がります。例えば料理と異世界転生を組み合わせると『異世界駅舎の喫茶店』になります。

 

 この他、ライトノベルにも名作があります。

・深沢美潮『フォーチュン・クエスト 忘れられた村の忘れられたスープ』、

・時雨沢恵一『キノの旅』

・秋田禎信『魔術士オーフェン』

・上遠野浩平『ブギーポップは笑わない』

・水野良『ロードス島戦記』

 などが一押しです。特に時雨沢恵一『キノの旅』は、僕が大学時代に後輩の女の子から貸してもらった思い出は別としても児童文学史、いな、日本文学史に名を轟かすほどの名作と言っても否定されないのではないでしょうか。

 ボクっ娘の原点であるばかりでなく、自分が見栄を張ろうと子供に勉強させる親、本音と建前など青年期に悩む問題、それでいてライトな文体。漫画的な文体を目指した新井素子と、テーマ性を多く含む児童文学が融合したと評しても過言ではないでしょう。

 キノの旅こそ世界に誇るべき日本文学のあるべき姿だと僕は信じて止みません。このように一つの作品を熱く語ることができたら「ゆるどく」は大成功です。作家の人間関係でも構いませんし、漫画の画風でも、ゲームの演出・システム面でも構いません。ここでいう「読書力」とは読書量でも、速読法でも、哲学書についての教養でもありません。本の魅力をどれだけ引き出して、熱く語れるかです。

 「ゆるどく」に必要なのは作品への愛だと言えるのです。


六)読書中に他の本を読んでも構わない。

 読書に飽きてくる場合があるでしょう。例えば純文学を立て続けに読むよりは、赤川次郎や星新一の軽めの小説を読んでからのほうが僕は疲れません。


七)図書館へ行こう

 本は買わなくても図書館に行けばあります。もちろん書き込みや延滞は厳禁ですが、絶版本も置いてあり、見ているだけでも興奮します。また図書館には漫画(一般的には726の棚)にもあり、多彩な本を取り揃えています。

 またこんなこと知りたいんだけど……といえば、親身になって本を探してくれますし、所蔵していなければ、提携図書館からも取り寄せてくれます。

 最近ではインターネットで予約もでき、便利になっています。


八)読書量は気にするな

 たまに一年で300冊などの冊数を自慢げに語っている人がいますが、無視して構いません。また「速読」もナンセンス。

 理由は何を、どう読んだか語られていないまま話が進んでいるからです。冊数を稼ぐには児童文学、絵本を中心に読めばいいですし、同じ分野の新書を読んでいけば、自然と内容も重複ます。

 もちろん読み方は人それぞれ。楽しんで読んでいれば構いません。しかし、急き立てられるように読んで、楽しみがなくなったら本末転倒です。

 


九)記憶しようとするな

 本を読んで記憶しようとするのは高校までの勉強だけで充分。さも記憶力が知識の象徴のように扱われていますが、ノートや参考書を見れば書いてあることは覚えなくても構いません。何を記憶して、何を記憶しないかという切り分けができるのも賢さの一つだと僕は思います。

 それに記憶しようとしたら苦痛でしょう。そして苦痛な読書は本末転倒。

 大事なのはどう独自の物語を新たに生みだしていくかです。


十)読書ノートを取りましょう。

 読んだ本のタイトルと一言だけでもいいので、読書ノートを取ることをお勧めします。その時は、殴り書きでも、誤字脱字があっても構いません。字を丁寧に書いている暇があったら、どんどん思いついたことを書きましょう。また一見飛躍していたら「?」を打つなどしても構いません。

 どうして紙のノートを勧めるかは、図や数式、フランス語、ドイツ語などはパソコンに打っていたら、アイディアが零れ落ちてしまうからです。またイラストの創作講座を読むと下手とは知りながらも試したくなるでしょう。

 検索の必要があれば、パソコンに打ち直せばいいだけ。もちろん、人それぞれですので、自分にあった方法を見つけてください。


十一)好きな時間に、好きなだけ、好きな本を

 退屈・苦痛だと思ったら読書をやめましょう! 今すぐには参考になりませんが、本を読んでいくと確実に創作のストックが増えていくのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ