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第五話 ユズと、恋の冷戦ついでに鎧

投稿が遅れた理由としては、ひみつ道具博物館と月面探査記を見ていたからです。


…………いや、ほんとごめん。投稿頻度上げます。

 

 ラゼの固有スキル、『転移(マジックウォーク)』。ざっくり言ってしまえば瞬間移動と呼べなくもないスキル。

 だが、そもそもラゼの強さの源は、圧倒的な魔力の才覚。そんな勇者の固有スキルは、サポートとしてとんでもない汎用性を誇る。


 そもそも、瞬間移動という認識をしている者が多いが、実は分類としては『アイテム生成スキル』なのだ。

 転移用の魔方陣のようなもの――――通称『印』をアイテムとして生成し、設置する。そして、任意の印の座標に、いつでもどこでも何度でも瞬間移動できる、というカラクリなわけだ。


 更に、印は二種類存在する。

 1つは、不可視の印。ラゼ本人にしか認識できず、本人にしか使用できないが、印の設置は転移先の座標だけで発動できる。

 偽ゴーレムの攻撃を避けたときに使ったのは、コレらしい。その時は俺も俺で忙しくて見てなかったんだけど。


 そして、もう1つは目視可能な印。これは、ラゼ以外も使用することが出来るが、転移先と現在地、両方にこの印が必要だ。

 リルティアが作成した風を装って、俺を牢獄迷宮に転移させたあの魔方陣っぽいものがそれだ。

 因みにラゼもしくは転移する本人いずれかの意思で転移できる。


 ――――まあ長々と語ってはいるが、結局何が言いたいかというと、そんな偉大なるラゼの固有スキルをもってすれば、僻地にある工房へと一瞬で赴くことも可能なわけだ。


「大城、タスク、いるかー?」


 この工房に来るのは、牢獄迷宮脱出後に一度ラゼに一通りの施設を案内された時以来だ。


 今日はメカニック担当大城、防具担当タスクに呼び出され、以前少し話題になった俺の全身鎧を受け取ることになった。ゴーレムらしいので意志疎通も可能なのだろうか……妙な感覚だ。


 すると、俺の前に1人の変人が、両腕を広げて妙なポーズを取りながら躍り出る。


「お、ようこそ我が城へ。歓迎しよう!」

「城じゃねえだろ」

「例えだっての。それもまたロマンだ」


 俺を出迎えたのは大城とタスクのどちらでもなく、確か武器の製造を担当しているはずの室内(むろうち)孝太(こうた)。通称インドア。

 彼について簡単に説明すれば、ロマン星人だ。以上。


 武器担当である以上、工房にいることに特に違和感はないが、まさか一番に出迎えてくれるとは。しかも、


「まあ来な。ロマン極振りのスペシャルアーマー、出来てるぜ」


 俺の鎧にも携わっていたらしい。

 ロマン星人がロマン極振りと断言するとは……妙な細工をされてなきゃいいが。


 ともかく、インドアに連れられて工房の奥へと進む。

 そして、そこにいたのは俺を呼び出した例の二人。


「おいーす、ユズ」

「よく来た」


 機械バカの大城と、口数少ない仕事人のタスクが、こちらに気付いて挨拶する。


 そして、二人の後ろに鎮座するは、漆黒の全身鎧。派手すぎないが意匠はきちんと凝らしているその鎧は、何者が相手であろうと使用者を守護せんとする威風を感じさせる。


「これが?」

「ユズ専用の鎧型改造ゴーレム、『アマハ』だ」

「アマハ……」


 牢獄迷宮でラゼから、ゴーレムは魔物に分類されるとは聞いたことがある。世にも珍しい人造魔物であると。

 初めて見たが、確かに魔物扱いされているようで、その鎧の頭上に目を凝らすと、【アマハ Lv.40】の表示が浮かび上がる。


「そうか、魔物ならレベルもあるか……高くね?」

「そもそも防具が魔物になるって前例がないから、高いのか低いのかも分からんのだけどねえ」


 そうは言うが、このゴーレムにもレベルがあるのなら、当然レベルアップの概念もある。()()()()()()という時点で、その価値は計り知れないものだろう。

 俺より少し低いくらいの初期レベルから始めたら、一気に一線級へと上り詰める可能性だって秘めている。


 しかし、どうにも気になることを聞いてみる。


「ゴーレムって、動いたりしないのか?」


 先程から漆黒の鎧は堂々と存在感を示すばかりで、動く気配はない。

 ラゼから聞いた感じだと、独りでに動き出すものだと思っていたんだが。


「ここから主をユズだって認識させる作業が要るらしいからな。まだ動かさないでおいてんの」

「へえ、何すりゃいいんだ?」

「複雑なことは不要だ。インベントリに入れておけばいい」

「お手軽ぅ」


 聞けば、魔物でありながら防具であるという存在があやふやなアマハは、恐らく世界で唯一の、インベントリの収納が可能な魔物。

 このアマハは目覚めるまでの間、インベントリの中で主の戦闘スタイルなどを解析し、十分にデータが取れた段階で動き出すらしい。さすが大城が開発に関わっているだけあって、メカらしいことをしてくるな。


「要するに、ユズだけのオンリーワンの防具、そしてオンリーワンの相棒が出来上がるってわけだ。ロマンだな!」

「好きだねえ」


 相変わらずのインドアに苦笑しながらも、そんなロマン星人から生まれてきた相棒に目を向ける。

 この鎧が動き出すのか。妙な感覚だ。


「ま、宜しく頼むぞ、アマハ」


 俺はそう語りかけ、アマハをインベントリに仕舞う。

 しかし、大城やインドアはまだ語り尽くしていないようだ。


「他にもアマハにはロマンたっぷりの仕様があってだな……」

「特に両腕のメカニックがね……」


 そう続けようとする二人だが、俺はそうもしていられない事情がある。

 アマハの回収も済んだし、とっとと向かってしまいたいところだ。


「悪り。俺、行くところあるから、それはまた今度聞かせてくれ」

「ちょっとユズ!? まだ『ウーラノス』についてすらも語ってねえのに!」

「ロマンを放っておいてどこに行くってんだ!?」

「え、ラゼん所」


 俺の目的地を告げると、あれほどまで熱量を持って引き留めていた二人は、そっと声を落とす。


「あっ……うん、いってらっしゃい」

「お前の中の一番のロマンを出されちゃな……」


 なんかひどく納得されたような感じがして、どことなく複雑だ。俺ってそんなに分かりやすいか?


 ●


 俺の固有スキルがあれば、神殿の屋根の上に登ることなんて楽々だ。

 すっかり日が落ちて辺りが暗くなっているため、気を張って屋根の斜面を踏みしめ、辺りを見回す。


 そこに座るのは、暗いはずなのに目映い1人の少女。無論比喩だが、まるで暗闇の中の光のように、その美しさは俺の目を引く。


「や、ユズ君」

「悪い、ちょっと遅れた」

「待ち合わせの10分前なんだけど……」


 そう言いつつも、ラゼは自分の隣を手で何度か叩き、俺に隣に座るよう促してくる。ヤバい、幸せってこういうことだったんだな。


 ゆっくり隣に腰掛け、この世界を覆っているであろう夜空を見上げる。やはり星というものは、人々の心情をドラマチックにしてくれる。


「星、好きなの?」

「いや? ただ、こうも綺麗な星空は、頻繁に見られるものじゃなかったからな」


 ……。


「でも、あれだな。こうして二人でいる時間は、牢獄迷宮以来だな」

「そうだね。地上に出てからは、ユズ君も私も忙しかったから」


 …………。


「まあ俺は忙しいっていっても、他の奴らと暴れてるだけだし、ラゼほどでもねえよ」

「他の皆とは、馴染めてる?」

「……うん、馴染めてる」

「そう……よかった」


 ………………。


 ゥあ゛ああああああああああァ――――ッ! 俺についての話題をすると百発百中でラゼが曇るってどういうことだよぉ!?


 元の世界の話をするとラゼが曇る、牢獄迷宮の話をするとラゼが曇る、クラスメイトとの話をするとラゼが曇る。しっかり詰んでんじゃねえかフザけんな!


 落ち着けユズ。お前はラゼの手助けがしたいのであって、ラゼの曇らせ要因になりたいわけじゃねえだろう。

 どうにか生み出せ! ラゼを曇らせることなく、楽しませるような話題を!


 ――――魔法くらいしか思い付かん。

 しかも知識が乏しすぎて、俺から魔法について話題振れないし。


「終わった……」

「ユズ君?」


 そっと塞ぎ込む俺に、ラゼは僅かに怪訝そうな表情を浮かべる。

 何よりも、俺はラゼのことを全然知らないということに気付いてしまったことがショックだ。


「なあ、ラゼは何が好き?」

「え、どういう……」


 あまりにも直接的な質問に、流石のラゼも言葉を詰まらせるが、なんとか答えようとする。


「えっと、魔法と、あとは……」

「……」

「……考えたこともなかった」


 ですってよ奥さん。この子本当に神殺しに尽くしてきたんでしょうねえ。闇が深すぎる。

 奇妙な沈黙が俺とラゼの間を支配するが、ラゼは気を取り直して俺に聞き返す。


「ユズ君は、何が好きなの?」

「ラゼ……………………何でもない」

「え」


 ふと冷静になると、なんだかとんでもない口の滑らせ方をした気がする。


「今のなし」

「えっと、ユズ君」

「今のなし」

「――――――――う、ん、分かった」


 なんとか飲み込んだラゼ。


 俺はラゼの望みである神殺しを手伝うって決めているんだ。そのために必要なのは忠実な部下。断じてそういう関係性の人物ではない。

 そういうことを望むのは、一切合切が終わってからでいい。


「まあ、なんだ。俺は結構この世界を楽しんでんだよ。神殿と牢獄迷宮以外は録にしらない俺が言うのもなんだけどさ」


 ラゼが言葉を飲み込んだ隙に、慌てて咳払いして話題を方向転換させる。


「なんだかんだ皆とワイワイやれてるし、ラゼや師匠、アネモネさんにシハロにレトさんにソウさん、あとついでにリルティアもいる」

「扱いが……」

「皆と一緒にいれて、俺は楽しいよ」


 それは紛れもない本心。牢獄迷宮にて殺し合いに目覚めていようがいまいが、ラゼに惚れていようがいまいが、それは変わらなかったと思う。

 そして、生きる意味を見つけた今は尚更だ。


「『自分を責めるな』っつーのは難しいかもしれないけどさ、俺としてはそれを越えるくらいに胸張っててほしいんだよ。俺に宝物ばっかり与えてくれたんだからさ、リーダー」

「ユズ君……」


 ラゼは珍しく目を見開くと、薄く微笑んだ。はい絶世。人よ崇めろ。


「――――ふふ」

「ラゼ?」

「アネモネが言ってた。ユズ君はきっとすごい馬鹿なんだなって」

「あー、そういや言ってたな」

「ちょっと気持ちが分かった気がする」

「…………!? 、っ!?」


 今まで縁がなかった『惚れた人から馬鹿と思われる』という項目を突如達成したお陰で謎の感覚が沸き上がり、まともに言葉が出てこない。ぶっちゃけラゼからなら何を言われようが思われようが祝福でしかないんだけど。

 まあ、でもラゼは良い意味で言ってくれているみたいだし、その感想は本当のようだ。素直にありがたく受け取ろう。


「そっか、俺は馬鹿かあ!」


 自分でも笑顔になれているのが分かる。

 ラゼも楽しんでくれているみたいで良かった。


 ラゼは幼い頃に勇者に選ばれ、それからずっと神殺しだけを望んで生きてきたというのを、リルティアから聞いたことがある。

 まともに笑うことも少なかった彼女が、僅かながらも笑うようになったのは大きな変化なのだと。

 その変化に携われたというのなら、俺としてもこの上ない誇りになる。


「そうだラゼ、俺は相変わらず遠距離攻撃がさあ――――」

「なら、ユズ君――――」


 永遠に続けば良いとさえ思うこの時間。

 眼下を照らす月だけが、俺たち二人を見守っていた。


 ●


 ――――人魔山脈。

 それが、人間と魔族の領地を別つ、(そび)え立つ山脈の名である。


 その中の一層高い1つの山、その頂上こそ、人間領も魔族領さえも臨み、見下ろすものは、この世界に夜空のみである。

 人を寄せ付けぬ頂上に、一匹の魔物が佇んでいた。


【カイン Lv.50】


 もしここに、ユズたち異世界人がいたとするならば、彼らはその魔物を恐らく『孔雀』と言っただろう。

 しかし、頭上に表れる文字列(アイコン)は、紛れもなくそれが魔物である証だった。


 沈黙を保ったまま、じっと人間領を見つめていた魔物――――カインは、ふと何かに気付き虚空を見上げる。


 そして数秒後、その視線の先の虚空が()()()


「うぃー、お待たせ」


 その裂け目から舞い降りたのは、浴衣を着た赤髪の少年。

 この世界にしては奇妙な風貌であるということを除けば、外見自体は普通の少年だが、風属性魔法も使わずカインの前で宙に浮く少年を、普通と断定するのは些か無理がある。


 それほどまでに少年は異質だった。それこそ、()()()()()()()()()かのような。


「君とミューの要望、通ってよかったねえ。知っているとは思うけど、明日、ビューティー様とクール様から神託が下って、一部の魔物に固有スキルが与えられる。勿論、君もね」


 それは、普通の人々が知る由もない未来。少年は宙に浮く裂け目に手をかざして閉じながら、まるで確定事項あるかのように未来をカインに告げた。


「そういうわけで、魔物内外で相関図は変わっていくわけだけど、君はどう動くのかな? ()()()鹿()が人間領で好き放題してくれているお陰で、魔族と魔物に時間を割けなくてね。僕の理想としては、君が完璧に管理してくれるとありがたいんだけど」


 カインは黙ったまま、しかして目の前の、明らかに誰かを思い出して不機嫌になっている少年に思念を送る。


「…………」

「え? ボスモンスター? あんなの後回しで良いよ。あの暴れ馬たちの手綱なんて、僕たちであっても握るのが難しい」


 カインの思念を読み取ったかのようなタイミングで返事をする少年は、困ったように額に手を当てて空を見上げた。


「ロガルとレヴェラロストとグランビディアは人間に従い、ティザプターとシークルとナイティールは倒され、ゴアとエルヴァルーツァは面倒な動きをし出した。もう勢力図は無茶苦茶だよ。それこそ君の望みだった『魔物の固有スキル追加』が何故通ったのか分からないくらいにはね」


 やけに深い造詣をもって、少年は今の世界の混沌を嘆く。


「…………」

「あー、なるほどね。魔王同盟の襲撃作戦で様子見るんだ。あれ、参考になるかな……まあいいや」


 カインの当面の方向性を聞き遂げると、少年は指を鳴らして再度宙に裂け目を作り、そこに手をかける。


「ま、とりあえず承知したよ。ボスモンスターについては、大事件でもなければ放っておいていいから。何か動きがあったら、もしくは()()()()()、その都度報告頼むよ」


 そう言い残し、少年は再び裂け目の奥へと消えた。


 ――――()()()()()()()()の会合は、こうして人知れず始まり、終わった。


 ●


 ――――魔王シュカ、魔王ヴィランの襲来まで、残り1日。


 ――――大型アップデート、一部魔物への固有スキル追加まで、残り数時間。


インドア(室内孝太):ヤバい奴。ロマン。



ボスモンスターの名前は、今全部覚える必要はないです。第一ユズ君もほとんど覚えていません。

後々出てきたときに「あー、そんなんいたっけな……いたかも……」の程度で大丈夫です。





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『さっさと続きを更新しろやブン殴るぞ』


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