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プロローグ

本編再開の時間だオラァ!(扉を蹴破る)


投稿が遅れて申し訳ない、こんなに長い間があって書き貯めがないって本当ですか(震え声)

実は一身上の都合による仮病が……

 

 ――――指先で桃色の髪を弄くりながら暇そうに足をぶらつかせるこの女が、自分と同じ魔王だとは思いたくないものだ。


 口にはせずとも、そう思う彼は、そんな雑念を振り払うように剣を振る。


「ねえ、暇なんだけど」

「帰れよ」


 暇そう、ではなく実際に暇だったらしい。

 女の傍若無人な言い分に、彼は僅かに鬱陶しがりながら答える。


 ここは、彼が鍛練をすることを目的として作られた闘技場のような空間。魔王城の地下に位置するそれは、基本的に彼以外の人物が足を踏み入れることはない。剣を振る彼の気迫に恐れ戦き、特に彼がいるときにはその空間に近付かないようにするという暗黙の了解が存在するからである。

 だから、もし彼以外の誰かがいたとしたら、それはその事実を一切知らない者か、極端に空気の読めない者かの二択だ。


 そして彼は、この女が後者に属することを知っている。


 剣を振る手は止めていないが、少しばかり剣筋が乱れているようだ。

 自らに集中を言い聞かせ、剣に没頭する。


「帰れって言ったってさ、今日はあなたと結構話し込むつもりだったのに、一方的に要点だけ話して終わりだなんて酷くない? 今日、部下に帰り遅くなるって言っちゃったんだけど」

「知るか。というか仮にも要人が1人で来たのか……?」

「うちはね、魔王の中でも少数精鋭なあなたのところよりも更に少数精鋭でやってるの。だからこっちに人員割いてられないのよ――――ねえ、時にボードゲームは得意?」

「マジで帰れよ」


 このままでは鍛練にならないと、彼は剣を鞘に収め、場所を移動することに決める。

 それを察したのか、女が彼を呼び止める。


「あっ、ちょっと。どこ行くのよ」

「場所を変える」

「待ちなさいってば!」


 煩わしげに――――というか現に煩わしく思いながら彼が振り返ると、女はインベントリからボードゲームを取り出していた。

 しかし、その表情は真剣そのもの。そしてどこか、彼の心情を見透かしているような雰囲気も含んでいた。


「あなたの人間性は、ここ数日で分かってきたわよ。他人に興味がない訳じゃないけど、それよりも優先事項が高い何か以外に気を振り撒いている余裕がない。そんなところじゃない?」


 彼は、柄にもなく苛立っていた。女が知る由もないが、自分を見透かすような目をする人物には、彼の記憶に引っ掛かるものがある。


「あなたの性格を矯正しようだなんて思わないけど、張り詰めっぱなしじゃどこかで倒れちゃうわよ。気分転換でもしてみたら?」

「……作戦までは、あと3日しかないんだが?」

「3日もあるって考えなさいよ。サティスちゃんも、あなたの部下も、みんな心配してたわよ? 特に……えっと、ソフィちゃんにアンリちゃんだっけ? 可愛いわよねえ」


 痛いところを突かれた彼は、乱暴に頭を掻く。

 彼は元より非情な人物とはいえない。部下の名前を出されると、正直折れざるを得ない部分はある。


 幸運など全て逃げていくようなため息をついて、脱力するように女の傍らに座った。


「……何すりゃいいんだよ」

「『ティチッカ』。ルールは分かる?」

「大体はな」


 一対一専用のボードゲーム。盤上に互いに5つのメインピースと、十数個のサブピースを並べていく。

 互いにピースを取り合って、先にメインピースを全て失った方が負けという、シンプルなボードゲームだ。駒を魔力操作でのみ動かすという点を除けば。


 彼が普段娯楽に触れないということを差し引いても、このボードゲームは特に指した経験が少ない。それは何より、奇しくも勝敗がこの世界のシステムと酷似している点において、彼はこのボードゲームがあまり好きではなかったからである。この世界は、一般人(サブピース)だろうが全て取らなければいけない世界だという違いはあるが。


「あなたはさ、何で魔王になったの?」


 ゲームが始まり、女はサブピースを魔力で動かしながら彼に尋ねる。


 魔王は5人存在し、全員が魔神から人間を滅ぼすという使命を与えられている。しかし、それでも彼らは一枚岩ではない。

 魔王が立候補した魔族・魔物の中から選ばれるという性質上、魔王になるにあたって、それぞれ掲げた想いに少々違いがあってもおかしくない。

 そして彼は、他の魔王とは少々違う野望を掲げていた。


「……俺の目的は勇者だ。他の人間には興味がない」


 魔力で駒を動かし、心中の本音を伝える。


 人間の殲滅など、彼は別に望んじゃいない。勇者と言う存在に出会う確率を高めるために、魔王になっただけのこと。

 彼が今生において目指してきたことなど、それだけだ。


「お前はどうなんだよ」

「私? …………そうねえ」


 彼に聞いておきながら、自分のことはまるで考えていなかった女は、少し考えてから答える。


()()()から?」


 それは、彼よりももっと単純な理由。自分に魔王になれるだけの素質があったから、なっただけのこと。

 そう適当に言う割に、魔王の中でもそこそこ人類殲滅に積極的に動こうとしている方なのだから、この女も大抵理解できない生き物だ。


「まあ何が言いたいかって、そんな適当な理由で魔王になってる奴もいるってことよ」


 そう言いながら、女は自身を指差す。同時に自身の可愛らしさをアピールしているのはなんとなく伝わったが、面倒なので無視した。

 彼に無視されるのも織り込み済みだったのか、女は特に傷つく様子もなく続ける。


「為そうとしていることがどれだけ大きなことだとしても、その動機が重くなきゃいけない理由なんてないの。世界はあなたが思っている以上に、その場の感情で動いているわよ」


 ()()()()()その女は、そう世界を評した。

 だが、彼がそのことを知るわけもなく、女の遠回しな表現に首をかしげる。だが、一応自身に励ましの言葉を送ったのだろうと考えた彼は、その言葉を脳内で反芻した。


「まあ、気には留めておく」

「あ、これ明日には忘れてるやつね」


 女はやれやれと首を振りながら駒を動かし、彼のメインピースを1つ取る。

 これで戦況は大きく女に傾いた。


「む」

「ひょっとしてあなた、ティチッカ苦手?」

「別に。得意じゃないだけだ」


 そう苦し紛れに彼が言うと、女は心底楽しそうに笑った。しかし、その満面の笑顔には『煽ってやろう』という感情がありありと見てとれる。


「なーんだ、結構可愛いとこあるじゃない」

「こンのぉ……」


 彼は、守りに配置していたサブピースを動かし、女のメインピースを取らんと進軍させる。


「あ、結構いい手打つわね。やっぱりあなた、攻めの姿勢の方が合ってるわよ」

「そりゃどうも……!」


 ゲームが白熱していくにつれ、双方駒を動かす速度にも磨きがかかる。それは、魔王という実力者であるからこそ辿り着ける、至高の試合。


 そしてゲームは、


「はい、勝った!」

「あークソ……」


 メインピースを3つ残した状態で、女に軍配が上がった。

 その悔しがり方から、正直適当に終わらせるはずだったゲームに思ったより熱中していたことを自覚し、彼は自身の感情に驚く。


 しかしその感情も、女が再び盤に駒を並べようとしているのを見て吹き飛んだ。


「なに勝手に並べてんだ、もうやらねえよ」

「えぇ!? まだ全然時間経ってないんだけど!」

「知るか……あー、そうだな。アンリとかリールあたりに相手してもらえ」


 彼は、自身の部下の顔を浮かべ、その中でもボードゲームに興味がありそうな名前を挙げる。彼からすれば厄介な人物のスケープゴートに使われたわけであり、一抹の申し訳なさこそ感じるものの、波長が合う合わないは人それぞれだから仕方ないと、心の中で言い訳する。

 しかしこれらは、女なりの彼へのフォローという側面もあったのだろうということを加味して、言葉を続ける。


「まあ、あれだ。いい気分転換になった」

「……そう!」


 少しの間ぽかんとしていた女は、その言葉に笑顔を取り戻す。

 女は立ち上がって伸びをすると、一階への階段に向かって歩き始めた。


「それじゃ、適当にあなたの部下たちと遊んで帰るわ」

「本当に適当だな」


 仮にも要人なのだから、勝手に帰るなどということは控えてほしいものだが、まあ本人が決めたことなら気にしなくて良いのだろう。

 女の後ろ姿から目を逸らし、また鍛練へと戻ろうとした、その時。


「そうね」


 ふと、女が振り返った。


 その表情は、少なくとも先程のような杜撰さは感じない、笑顔を絶やさずとも真剣さが伺えるものだった。


「今回の作戦、私たちと、例の()()()()()()()()()()がやることはあくまで便乗。作戦の要はあなたたちよ。あなたにとって最良の結果が掴めることを祈ってるから、しくじらないでよね?」

「……ああ、勿論だ」


 双方の利のために結託した二人の魔王は、よく理解している。


 彼も――――魔王ヴィランも。


 女も――――魔王シュカも。


 今のようにボードゲームに興じられるほど、弛緩した時間がいつまでも続くことはないことを知っている。


 ヴィランは、勇者と戦うために。

 シュカは、魔族を導くために。


 それぞれが内に秘める野望の実現のために、誰しもが命を賭さなければならない。


 ――――ラゼ・カルミアの拠点襲撃まで、残り3日。


数分で分かる! 『クル戦』第1章のプロローグ以降に何があったのか!


世界最高峰AI、Cool(クール)が人類殲滅を計画。同じく優秀なAIの仲間を集める。

同じく世界最高峰AI、Beauty(ビューティー)と結合、互いの目的が正反対だったため、ビューティーの土俵であるゲームで決着をつけることに。

クールビューティーの世界始動、生命の思考メカニズムを完全に再現したいと要望が入った(・・・・・・)ため、現実の人間が必要となる。

サンプル採取用ロボット生産、サンプル第一号(・・・)の思考を取り込む。NPCがほぼ生命と遜色なくなる。

サンプル第二号、第三号の思考を取り込む。

ラゼが勇者となり、世界の真実を知る。

サンプル第四号群として、ユズたちが転移。ラゼに引き取られる。

ユズのみクソ弱いことが判明し、牢獄迷宮でのスパルタ訓練を計画。


ざっくりこんな感じで、牢獄迷宮編へと続きます。

サンプル第◯号なんて知らない? き、気のせいでは……?



『面白かった!』


『続きが気になる!』


『さっさと続きを更新しろやブン殴るぞ』


とお思いいただけましたら、【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして、応援していただけると幸いです。


あと、感想とかブックマークとか頂けると、作者が嬉し泣きしながら踊ります。

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