最強は幻想を堪能する④
倉庫に辿り着いた私は、倉庫内のゼル残高を見てガックリと項垂れた。
倉庫の中には、800Mしか入っていなかった。どうして? そう考えるまでもなく、思い出される先日のドラゴンレイド。
「あぁ、貸したんだった……」
800Mじゃ、魔法書715Mかかるし買っただけで終わる! それは嫌だ。他にも欲しい物がある。例えば、以前代行で諦めたスクロール転写の羊皮紙100枚用で黒3枚とか、白紙のスクロール×10で赤5枚とか……。
最低でも、転写の羊皮紙千枚と白紙のスクロールは万枚は欲しい!
が、現実問題ゼルが足りない。
どうにか手に入れられないか必死に思考し、ある事を思いつく。ただし、それにはクラメン全員の許可が必要だ。
[[ティタ] ん~。暇だよね~w]
[[黒龍] お~! いい感じになってきたw]
[[大和] 遠距離組が頑張ってるからねw]
[[ren] 相談がある]
[[大次郎先生] 飛ばしてるなぁ~w]
[[宮様] どうしたの?]
[[さゆたん] どうしたでしゅか?]
[[ren] クラン資金、貸して!]
[[風牙] どった~?]
[[大次郎先生] は?]
[[ren] クラン資金。1G貸して欲しい!]
[[宗乃助] 貸してって、借金って意味でござるか?]
[[宮様] ん~。相応の理由が必要よ?]
そう言った宮ネェの言葉に、借金の理由を話す。
スサノオの剣は諦めるとしても、出来る限り魔法書やスクロール関係は全て買いたい事。
返済は、すぐに出来る事を……。
既に個人露店で販売しているメテオの魔法書が売れていれば、残り2冊売り払えばいい。
[[†元親†] ん~。俺は良いよ?]
[[大次郎先生] 私もいいよ。
資金不足は、クラメンが理由だろうしw]
[[村雨] 俺も構わんw]
[[白聖] ま、借りてるからなw いいぞw]
全員が、いいぞと言ってくれたのでありがたくクラン資金から1Gを借りた。心優しいクラメン達に感謝を覚えつつ、残りのゼルを取り出しカジノに戻る。
自動ドアを抜けさっそく、カウンターに辿り着く。
近くに佇んでいたNPCに話しかけ、1Gと832M全てを黒チップに変えた。
そして、まずは魔法書を購入していく。
全部で、715枚の黒チップがアイテムボックスから消える。
代わりに、19個の魔法書がアイテムボックスに並んだ。
よし! 次は、白紙のスクロールと転写用の羊皮紙だ。買えるだけ買おう。
黒チップの残り1127枚を使って消耗品が掲載れた一覧を漁る。
まずは、本命の白紙のスクロールだ。
これは10枚で500kなので、1500個交換する。
次に、スクロール転写用の羊皮紙。これは1枚で100回できる。
ディティクション用15個、ゲッターサークルは買った方が安いので今回は購入しない。
後は白紙のスクロールが街で手に入った時用に3個ほど予備が欲しい。
全部で18個交換するとして、黒チップ三枚……3Mだから69M。
とりあえず、交換して残りを見よう。
NPCとの交換が終わり、アイテムボックス内を見れば黒チップ308枚が残った。
他に欲しい物は……そう考えながら、開いたままの一覧を再びスクロールして確認する。
ページ中央辺りで、刀のスキル書の欄が見え指を止めた。
が、スキル書はいずれ手に入りそうな気がするのでスルー。
できることなら、ここでしか手に入らないものが欲しい。
ま、なかったらこれは現金に戻してクラン倉庫に突っ込んでおこう。
[[鉄男] つか、借金してまで魔法書買うってことは
もしかして、全部買う気か?w]
[[聖劉] だろうね?w]
[[ミツルギ] 全部かえるんっすか?w]
[[ティタ] あぁ、もう一生勝てる気しないんだけどw]
[[黒龍] 未だに、renカウンターから動いてないぞww]
[[キヨシ] すげー真剣な顔して悩んでるぜw]
[[大次郎先生] 貸したの間違い?w]
[[さゆたん] ドラゴン連発でしゅw]
[[ヒガキ] どんなものが売ってたんですか?]
[[白聖] さゆ、それ怖いw]
[[†元親†] ん~。景品見たけど色々あったぞーw]
[[宗乃助] 後で見てみるでござるよw]
悩んでいる間に、クラチャではこんな感じの会話がされていた。
全部買った! そう言いたいが……身内だろうがスキル系は、出来る限り内緒にしておきたいので言わない。
その後一時間かけ思考を続け、結局残った黒チップ308枚を8枚残しで全てあるアイテムに交換し使い果たしてしまった。
さっそく魔法を覚えたいところだが、オリンポス・幻想峡には教官がいない。そのためここでは、魔法を覚える事ができない。
カジノでやるべき事と言うか……爆買いしただけだが、買いものを全て終え狩り場に戻る。
ホクホク顔で戻った私を見たクラメン達は、何故か一様に視線を逸らす。
そんな凶悪な顔して笑っていただろうか?
まぁ、いい。良い買い物が出来たので、今日は何があってもスルーだ。そう思考を切り替え、帰れまテンに再び参加した。
一通り経験値稼ぎ以外の全員がカジノで遊び倒した頃、ゼンさんたちの動きが散漫になり始める。
そこで視界内にあるリアル時間を表示する時計で、時刻を見れば午前三時九分。
かれこれ、十時間ずっと狩りしてる状況に、眠くもなるのも理解できた。ここは、気分転換に一度交換に行くことを提案しよう。
[[村雨] たっはー! 眠い!]
[[ren] ゼンさん、ヒガキさん、ミツルギさん。
一度、クエ清算にいこう!]
[[宗乃助] 手元がヤバいでござるw]
[[黒龍] あ、わりぃヘイトずれたw]
[[ゼン] はい]
[[ヒガキ] はい]
[[ミツルギ] うっす!]
[[宮様] そうね~。一度清算して来て。
眠気覚ましもしたいし、その間に私顔洗ってくるわw]
眠そうに欠伸をする宮ネェやさゆたん達が寝袋に入り現実へ戻る中、三人を連れてクエストNPCを再び訪れた。
早速交換しようとする三人に、自分の手持ちのゼルを確認するよう注意を促し交換を開始してもらった。
楽しみだ。そう顔に書いてあるようなキヨシが、どうだ? すげーだろ? 等と言いながら三人を急かし、黙って見てられないのか? そう言いたげな表情の黒が呆れて笑う。
[[ミツルギ] おぉ! 529.7%アップっす!]
[[ヒガキ] 1059%ぐらい上がりました!]
[[ゼン] 僕もです!]
と言う事は、ざっと計算して一人頭105,940個はドロップしていたことになる。
かなり素晴らしい数字だ。ゼルに換算すると95Mぐらい稼いでいる。
これをこのまま続ければ……借金が返せるかもしれない。
残りの個数がどれぐらいか各々に聞く。
するとヒガキさんは三次まで、残り六万個、ゼンさんは三万個。ミツルギさんは、カンストまで二十五万個。
と、ここで狩り場に戻りながら、キヨシがある事に気付く。
[[大次郎先生] 結構上がったね]
[[キヨシ] なぁ。ここで三次転職ってできたっけ?]
[[白聖] おぉ! やっぱいいなぁ。ここw]
[[ren] あ……]
[[黒龍] あぁ……できねーなw]
[[村雨] 戻りw]
[[大和] どうしよう?w]
そう。ここでは転職ができない! 神殿はあるが……それはみてくれだけで、機能していない。そして教官もいないのだ。
やらかした感が半端ない。
[[さゆたん] 戻ったでしゅw]
[[宮様] 戻ったわ~w]
[[鉄男] ん~。経験値スクロール使えば?]
[[†元親†] なんかあるといいけど思いつかね~w]
[[ティタ] それだー!]
[[鉄男] まぁ、スク1枚しかないけどww]
鉄男の声に、その手があった! そう言いかけた……がしかし、1枚じゃ何もできないのと同じだった。
落胆するクラメンたち。そんな中私は一人ほくそ笑む。
そう。つい先ほど借金してまで買ったスクロール転写用羊皮紙と白紙のスクロールを使えば経験値スクロールが作れる!
まずは、作れるかどうかを試す必要があるけど……。
[[ゼン] 経験値スクロールですか? 聞いた事無いです]
[[ミツルギ] 自分も無いっすね……]
[[鉄男] これ、確かオープン? の時にイベントで大量に配られた]
[[黒龍] 課金アイテムでもねーのに使えね―だろw]
経験値スクロールと言うものは、この病ゲーがクローズからオープンβになった祭のイベントでモブからドロップする形で配られたスクロールだ。
効果としては、スクロールを使用すると”収納”と言う二時間のバフが付く。
その間に獲得した経験値をスクロール内に貯めておく事ができる。
定かではないが、1枚当たり100%までだったはずだ。
そして、使いたくなったら収納済み経験値のスクロールを使用して”開放”すれば、経験値が自分に戻る。
ココからは注意点と言うか、運営の罠なのだが……。
使用した本人の職が二次の場合は二次職の100%で、三次職で使うと悲しい事になってしまう。
三次の場合は三次職の100%なので、二人には此方の方を使って貰う方がいいだろう。
二次と三次では取得経験値の数値が違う事からそう言う設定なのだろうけど、初めて使った時のあの切なさと言ったらなかった……。
現状ゼンさんとヒガキさんは二次。
このまま、経験値スクロールを使わせるのは勿体ないし、ぶっちゃけスクロールの枚数にも限度があるので三次職の誰かに使わせるのが良い。
眠気で、鈍る頭をフル回転させ必死に思考した結果の答えがこれだ。
我ながら中々に素晴らしい案だと思う。
[[白聖] ん~。なんかないか?]
[[村雨] ん゛~!]
[[ren] 鉄男。そのスク貸して]
[[宮様] 思いつかないわw]
[[鉄男] おうw]
[[ティタ] 凄くいい顔してるw]
[[さゆたん] 黒いでしゅw]
[[ren] 量産できなかったら諦めて? 狩りしてて!]
[[宗乃助] おぉ! 何かやるでござるか?w]
鉄男から経験値のスクロールを受け取り、クッションとテーブルを取り出した。何やかんや言いながら、狩りを始めたクラメンたちに一度だけ視線を向けスクロールの転写を開始した。
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少し本文が長くなりました、申し訳ありません。
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