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昨日宰相今日JK明日悪役令嬢 恋愛陰謀増々版  作者: 北部九州在住
花嫁候補の奮闘

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48 バニーバニーバニー……ばにー?

 娼館『夜の楽園』は基本的にいつでもいかなる時でも開いている。

 朝というのは城門が閉まって街に入れない連中が群がるので思ったより需要があるのだ。

 とはいえ、この手の仕事は夜がメインであるので基本そこに主力の娼婦を集めてゆく。

 だからこそ、高級娼婦であるアマラは時間が作れる昼間に学園に通うことができるのだ。

 高級娼婦の場合、基本日雇いで契約が行われる。

 普通の娼婦の場合一夜契約(朝、城門が開くまで)だが、高級娼婦だとサロン等のつきそいも使えるので契約からその一日まで使えるようになる。

 普通は朝に客が帰り、残りの時間は客を取らない事で客への仁義をきっている訳だが、客の体力が持つならば、一日中する事も可能な訳で。

 鉱山都市ポトリから帰った後、アマラが姿を見せなかった理由がそれだった。


「ごめんなさいね。

 大口のお客がついちゃって離れられなかったのよ」


 『夜の楽園』の待合室でバニー姿での密談である。

 学校休んで直で娼館に入るって事は、それだけの準備をしないとやばいと当の本人から聞かされていたので、ちょいと激励も兼ねていたりする。

 あと、私を差し置いての大口のお客って誰だろうと興味本位というのもあったり。


「あのさ。エリー。

 学校サボっての激励は感謝しているのだけど、だからってあれ連れて来ることないじゃない!!」


 あれ呼ばわりとは、既に男にこび売りまくりのバニー姉弟子様である。

 早くも優良顧客を開拓したらしく、私の家庭教師と高級娼婦の二足の草鞋を楽しそうに履いているので、私も嬉しいです。

 ええ。


「視線逸らすんじゃねぇ。こら。

 あんた絶対厄介払いしているでしょ。あれ」


 二人してあれ呼ばわりだが、敬意は払っているのだ。私は。

 ただ、台風の中心よろしく本人に被害が行かないだけで私にどれだけの被害をまき散らしたか……やめよう。鬱になってきた。


「で、あんたの友達料を差し置いて仕事をする理由なんだけど、それだけの大物って事は分かっている訳よね?」

「で、守秘義務があるだろうから、こうしてここでアマラの相手を見てやろうと待ち構えている訳でして。

 サイモンじゃないわよね?」


 息抜きと称して、サイモンがアマラを買っていたのは知っていた。

 これについてはシドも思う所があるのだろうが、正規の仕事である以上口をだすつもりはないらしい。

 なお、サイモンとやってアマラが堕ちかかったのは笑い話である。


「サイモンじゃないわよ。

 けど、あの人はやばかったわ。

 普通、がっつく事はしないんだけど、お日様が登り切るまで腰ふっちゃって……」


 高級娼婦教育を終らせているアマラを堕とす為にサイモンが取った手はおよそ推測できる。

 というか、隠しとはいえ攻略キャラなだけに情報は出揃っているのだった。


「魅了の魔法と薬でしょうね。

 この間の舞踏会で魅了耐性のアミュレット渡したから助かったんでしょうね。

 薬に対する耐性はある?」


 アマラが露骨に不機嫌になるが、己の自制できない状態に心当たりがあったらしく何も言ってこない。

 テクニックではなく、この手の小細工で女を堕とすのがサイモンの真骨頂だった。

 ちなみに、この調教で主人公が見事なビッチ街道を突っ走るように作っているのに、世界樹の花嫁になれないあたりが開発陣の悪意を感じずにはいられない。


「最低限は身につけていると思うけど、あれは何?

 普通あんなの使ったら壊れちゃうじゃない!」


「そりゃそうよ。

 壊す為に、あれ使ってるんだから」


「うわぁ……」


 アマラが天を仰ぐ。

 この業界にそれなりにいるのだろうが、そこから先は闇よりも暗いというのを肌で感じているのだろう。


「だからわざわざ激励に来た訳。

 この辺りの情報はアマラ知らなそうだから。

 何ならば、魅了耐性のアイテムもあるけどいる?」


「頂戴。

 相手が狂うならばまだしも、私が狂うなんてごめんよ」


 即答かよ。アマラ。

 このあたりのプロ意識は私も見倣いたい所だが、私はもう娼婦ではないので素直にアマラの手にブレスレット形のアミュレットを渡す。

 銀製品で裸でもつけていて問題ない飾りなのがポイント。


「裏面に魅了耐性の魔法を刻んでいるわ。

 魔力回復は魔法店でできるから忘れないようにね」


「ありがとう。

 これは友達料から引いておいて。

 けど、私でこれだとエリーやあんたの姉弟子様もだめな口?」


 アマラが腕に銀のブレスレットをつけて手をかざす。

 その仕草がまた様になっているのがアマラの格を物語っている。バニー姿だけど。


「私は多分大丈夫。

 アマラできついとなると、姉弟子様だとちょっとやばいかもしれない」


「私が何ですって?

 絵梨」


 話題に出たことに気づいてバニー姉弟子様がやってきた。

 なんだろう。

 無駄に醸す色気は、私ともアマラとも違うんだよなぁ。

 後で姉弟子様にもこのブレスレット渡しておこう。


「サイモンの事ですよ。水樹姉様。

 しかし、私ともアマラとも違う色気ですよね。それ」


 私の苦笑交じりのぼやきに、姉弟子様が嬉しそうに笑う。

 この笑みは私やアマラには出せない笑みだ。


「ああ。彼ね。

 抱かれたけど気持よかったわね」



「「ぶっっっっっっ!!!」」



 同時に吹き出す私とアマラ。

 いや、サイモンが私を絡めとるならば、アマラや姉弟子様を堕としてという戦略は間違いではないが。

 魅了耐性のアミュレット持たせたアマラですらやばかったのに、この姉弟子様はどうしてピンピンしているのかとか頭の中でぐるぐる回っていたりするのですが。


「無事ですよね?」


「もちろん。

 私を誰だと思っているの?」


 その一言で、私は考えるのをやめた。

 とはいえ、次も無事とは限らないので姉弟子様にも魅了と薬耐性のアミュレットを用意しておこうと固く決意する。

 こっちがそんな事考えているなんて知らない姉弟子様は、私とアマラを抱きしめて微笑む。


「これで私達は姉妹だからよろしくね。

 私が姉だから、言うことを聞くのよ」


「っ!

 あんたも抱かれたの!?」


 姉弟子様の一言に感づいたアマラが私を見るが、私は苦笑するしか無い。

 私がサイモンに嬲られるのは未来の出来事だからだ。


「華姫時代にね。

 向こうは覚えていないみたいだけど」


「どうりで警戒するわけだ。

 経験者だったとは。

 けど、この人なんで無事なの?

 こっちの人でもないみたいだけど?」


 アマラの質問に姉弟子様があっさりと答える。

 そこには女帝として君臨しているカリスマが見えた。


「そりゃそうよ。

 貴方もアマラも、基本男に寄り添うものでしょ。

 私は違うわ。

 男を選ぶもの」


 なるほど。

 清々しいまでの自分本位だ。

 娼婦ではそれができないからの魅力か。

 アマラや昔の私は男を選べないが、姉弟子様は選べる。

 それがこんな場所だと魅力に見えるだろう。


「……という訳よ」

「なるほど」

「えげつなー」


 アマラと姉弟子様を堕として私を狙うというサイモンの作戦に頷く姉弟子様にアマラはげんなり顔。

 護衛騎士の財力で高級娼婦のアマラを買い続けるのにはどう考えても無理がある。

 という事は、サイモンの後ろに金を出している南部諸侯がいる。

 バニー三匹が適当に色気をまき散らしながら、話していることは政治的にやばいのだからこのアンバランスさがおかしい。

 もちろん、音消しの魔法をかけての雑談である。

 姉弟子様はともかく、ある程度の知識のあるアマラはこの国がこんなにやばくなっている事を察して顔を青ざめていたり。


「で、サイモンってやつの後ろについているのはあの王子様なの?」


「そっちの王子様じゃないです。

 第三王子カルロスでしょうね。

 ちなみに、カルロス王子の母親のロベリア夫人はサイモンの愛人」


「なにそれすごい」


 サイモン視点から見ると、女を堕として立身出世物語というどこのエロゲーかと。

 それで最後は魔族大公にまで成り上がるのだから見事なものである。

 とはいえ、その中に私やアマラや姉弟子様が入っているのだから、これ以上好き勝手にはさせない。

 一番大事なのは、彼の旗印を抑えてしまうことである。


「アリオス王子がいなくならないとカルロス王子には出番が回ってこない。

 ミティアとアリオス王子をくっつける事が狙いかと」


 そうすれば、ゲームではこの二人がいなくなって世界樹の花嫁と王位継承者が同時に消えることになる。

 残る席にカルロス王子と私が座ることになるだろう。

 サイモンの操り人形として。


「むしろ、ミティアとの繋がりを切ろうとするってのはあるんじゃない?

 何だかんだで貴方とミティア仲いいし」


 アマラの指摘にそっちの線もあるなと考える。

 現状は乙女ゲーというよりも育成ゲーみたいになっている。

 私と王子でミティアを育てているという形だ。

 私の動きが封じられて、表向きゲームマスターとして直接的介入ができないアリオス王子だけだとサイモンあたりが絡む余地ができる。


「もう一個可能性があるのよね。

 私が動けなくなって困るネタで、大賢者モーフィアスが出してくる世界樹の花嫁がらみの報告書」


 ヘインワーズ候の引退に合わせてモーフィアスが失脚する予定なのだけど、その前にこの世界樹の花嫁の報告書を王室に提出するはずなのだ。

 花嫁が処女では世界樹の加護に悪影響が出るという調査報告書は、世界樹の花嫁の存在そのものに大激震を食らわせる事態になるので、その時に私が動けないとこの報告書が闇に葬り去られる可能性がある。

 ここが解決するだけでも世界樹の加護が回復して不作傾向から脱却できる最重要ターニングポイントで、同時にどんな敵が出てくるかわからないパンドラの箱でもある。

 ん?

 よじ登ってきたぽちがほっぺたをつんつん。

 ぽちが見る方に場違いな主人公が驚愕の顔をこっちに向けている。



「ああああああっ!!!

 エリーさんにアマラさんにミズキさん!!

 なんて所でなんて格好しているんですかぁぁぁぁっ!!!!」


 音消しの魔法で聞こえないはずだけど、指差して何か叫んでいるので、解除するとミティアの叫び声が響く。

 あ。後ろで頭抱えているシドとキルディス卿発見。


「何であんたここにいるのよ?」


「というかエリーさまがどうしてこんな所にいるんですかっ!!!

 侯爵令嬢のお嬢様なのにっ!!!」


 大声で叫ばないで。煩いから。

 というか、キルディス卿止めろよ。護衛騎士やってるんだからよぉ。


「お嬢。

 あんたが心で思っている言葉、鏡を見ながら言ってみろや。おい」


 心を読まれたらしくシドのツッコミに何も言い返せない私。

 後で聞いた話だが、アマラの欠席に心配になったミティアがお見舞いを企画。

 で、背景を知っているシドとキルディスが必死に止めるがそれで止まる主人公ではなく、入ってみたらバニー三匹が発見されて現在に至ると。


「ふっふっふ。

 ばれちゃあ仕方がないわ!

 ミティアよ。

 あなたもバニーになるのです!!」


 あ、のりのりの悪役口調で姉弟子様がバニー服を取り出してきたが何処に用意していたんだ。それ。

 というか、ミティアも受け取るなよ。というかキルディス卿赤くなってないか?むっつりめ。

 こんな騒動の中で、私たちに近づく騎士が一人。


「おや、うさぎが三匹も居ますな。

 どのうさぎも魅力的だ」


 そんなキザな台詞を吐きながらアマラに手を差し出すその騎士の顔を私は舞踏会で見たことがあった。

 たしかに、彼が相手ならば私の友達料では勝てないだろう。


「こんな所で会えるなんて奇遇ですね。

 セドリック殿下」


「今は、ただの近衛騎士セドリックさ。

 だからこうして遊んでいられる」


 考えろ。

 考えろ。相良絵梨。エリー・ヘインワーズ。

 この場所で、セドリック王子が出てくる理由を。

 彼がアマラに手をつける事にどんな理由がある?

 アマラに手をつけられた事でシドにどんな影響が出る?


「よろしければ、この妹を選んだことをお教えくださいませんか?

 参考にしますので」


 すっと会話に入る姉弟子様の笑顔にセドリック王子も同じ笑顔で返す。

 ここは嘘で塗り固められた快楽の館。

 全部が嘘であるがゆえに、真実が曝け出される。


「美しいものに手を出したまでですよ。

 私は、飾り花より、野に咲く花の方が美しいと思うたちでね」


 セドリック王子がアマラの手をとって奥に消え、姉弟子様の口車に乗せられたミティアがバニースーツを受け取った所で馬鹿騒ぎはお開きとなった。

 もちろん、娼館の主人に私が頭を下げまくったのは言うまでもない。

11/23 華姫の説明でかぶっている所を削除。

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