表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オカルトちゃんねるショート  作者: lpp


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/23

禁足地

203:名無しの怖がりさん:20XX/09/06 22:06 ID:r23LOPg1a

 30年前の話だ。

 俺の住む田舎には、禁足地って言われている場所があった。

 山の中とかお社みたいなところじゃなく、

 田んぼのど真ん中。

 トラクターが通るあぜ道にポカンとそこだけ

 足を踏み入れてはいけない場所がある。

 草木の生い茂る、丘とも言えない小さな土の盛り上がりと、

 石でできた鳥居が立っていた。

 ここは限られた家の限られた人物しか入ってはいけない、

 カミサマの土地だから、決して粗相のないように。

 そう言われて育ってきた。


 で、ここにイタズラ坊主どもが登場する。

 俺と、ツトムと、アツシ。

 当時は小学校の3年だったかな。

 幼稚園から同じクラスメイトで、

 といっても一学年2クラスしかないから普通なんだが、

 俺たち3人は特に仲が良くて、

 また悪ガキとして田舎で名を馳せていた。悪い意味で。


 俺たちは夏休み、田んぼでカブトエビやユウレイを取ってた。

 当時、子どもの間でそう呼んでいたんだが、

 ユウレイってホウネンエビのことな。

 バケツ一杯にカブトエビを取って、翌日には全滅させてた。

 庭にバケツのまま置いておくので、

 暑いのと餌がないの、何よりバケツにぎっちり詰め込まれているので

 水中の酸素がなくなってしまうんだろう。

 今は全滅させた理由が分かるが、

 でも子どものころは何も考えていなかった。

 大きなヤゴやタガメなんか見つけた日にゃ大騒ぎだ。

 ヒルが泳いでいたりしたが、昔はジャンボタニシなんかいなかった。

 あのどピンクの卵なんてあった日にはどうなっていたことか。

 思い返しても本当にバカなガキどもだった。


 ある日、俺たちは例の田んぼの真ん中にある禁足地に入った。

 今までも何回か入ったことがあったし、

 アツシの兄貴とか上の学年はそこに入ったことを自慢にしてたりで

 なんというか、子どもたちには肝試しみたいな扱いだったんだ。

 その小さな丘に足を踏み入れて鳥居をくぐると、

 なんか涼しい。

 俺とツトムとアツシは喜んだ。

 日陰のひとつもない炎天下の田んぼで虫をかき集めてたんだから。

 俺たち3人は木陰でバケツの中を見せ合ったり、

 水筒の麦茶を飲んだりしながら、

 いつの間にか3人ともすっかり寝入ってしまった。

 俺たちが目を覚ましたのは、

 かなり強い風がブゥンと吹き抜けていったからだ。

 そこには俺とツトムがいて、お互いに突然の突風に驚いていた。

 ちょっと寝ぼけていたんだな。

 でもそこに、アツシがいなかったんだ。

 俺たちは寝こけてる俺たちを放って先に帰ったと思ってた。

 俺たちも、その日はそのままお開きにした。

 もう日も暮れかけてたし。



204:名無しの怖がりさん:20XX/09/06 22:09 ID:GFTRwqK69

 禁足地かぁ

 オカルトスレにはロマンだな



205:名無しの怖がりさん:20XX/09/06 22:11 ID:+r7IJuujF

 いや…やるよね…子どものころは虫を×したりしてたよ…

 発達の中途段階だとしても、その節は悪いことをしたわ…



206:203:20XX/09/06 22:12 ID:r23LOPg1a

 俺たちは翌日もアツシの家に行った。

 もちろんまた一緒に遊ぶためだ。

 そうしたら、アツシのお母さんが妙なことを言うんだ。

 アツシなんて子はウチにはいない、知らないって。

 冗談だろって思っておばさんに食い下がったよ。

 でもおかしいなと思うことがたくさんあった。

 アツシが乗っていた自転車がない。庭に放っていたボールも。

 アツシがふざけてつけてしまった家の壁の傷も。

 ブロック塀に石をガリガリして書いたバカな放送禁止用語も。


 俺の夢や勘違いなんかじゃないぞ。

 ツトムもいっしょだったから。

 俺たちはそれからクラスメイトや、担任にまで電話で確認したが、

 やはり誰もがアツシを知らないと言った。

 学校が始まっても、アツシは戻ってこなかった。

 下駄箱も、机も、出席簿にも、アツシの名前はなかった。

 ここは、アツシがもとから存在すらしていない世界になってた。

 ふたりだったから、おかしいことを相談し合うこともできて、

 お互いに自分がおかしくなったんじゃないってことが確認できた。

 ツトムがいてくれて本当に良かった。

 高校のときに進路は分かれてしまったが、

 ツトムとの仲は、いまだに続いている。



207:名無しの怖がりさん:20XX/09/06 22:14 ID:rHHJAueb+

 あ、アツシぃ……!



208:名無しの怖がりさん:20XX/09/06 22:17 ID:3751LKOpX

 禁足地って・・・こわ・・・

 今までもし行方不明になった人がいても

 誰ひとり気が付かないってことじゃん・・・

 下手すりゃ何十人、何百人って可能性も・・・



209:203:20XX/09/06 22:19 ID:r23LOPg1a

 ツトムと俺は仲が良いって言ったよな。

 なんだかな、俺たちずっとこの世界に違和感があるんだ。

 俺たちは何とか仕事をしながら生きているが、

 日々、ほんの些細なことに頻繁に引っ掛かりを覚える。

 家族の発する言葉、スーパーの品ぞろえ、

 友達の名前や、テレビ番組のタレントの何気ない一言に、

 かあちゃんの料理の味付けに、

 そんなことあったっけ? こんなだったけ?

 そういう違和感が積もりに積もっていく。

 この違和感のためなのか何なのか、

 他人となかなか親しくなることができなくなった。

 友人や恋人、仕事先の同僚だけじゃない、家族とすらも。

 俺も、そしてツトムも、なんとなく家族とすら疎遠になっていた。


 俺たちは30年かけてやっと悟った。

 たぶん、俺たちの世界からアツシが消えたんじゃない。

 俺たちが“アツシのいない世界”に飛ばされたんだってな。

 この世界にとって異物の俺たちは、

 この世界にどうやっても馴染めない。

 ツトムは会社の健康診断で要再検査だと。

 俺に関しては、もう手の施しようがないほど癌が進行してる。

 ×ぬ前にもう一回、俺のかあちゃんに会いたい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
神隠しが起こる事に気付いた人達が禁足地にしたんかな……
異世界通信掲示板…いやこっちの掲示板か。 何でアツシだけが飛ばされなかったか、アツシは二人の記憶があるかどうか・・・
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ