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いつ来る時の月夜まで  作者: 蒼華零
第一章
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第二十三話 合同合宿!Day3

「本日はよろしくお願いします、月夜殿」


「うん、ああ…よろしくな」


「ところで月夜殿、月夜さんとお呼びしてもよろしいですか?」


「好きに呼んでくれ。まあ俺たちだが、ペアとしては普通に相性はいい。いいが、それは持久戦前提だ」


「どういうことでしょうか?月夜さんなら突っ込んで制圧だって…」


「残念だが俺は支援術師だ。戦闘は得意とするところじゃない。持久戦前提は仕方ないところではある。俺は支援特化だし、風莉さんは空という一種の安全圏から術で攻撃する。するとどうなるか?単純に火力が不足する。あまりにも試合が長いのはよろしくないからな…そこで俺が考えた戦術はーーーー」


月夜の作戦に風莉は若干引く。正直に言えば、正気の沙汰ではないと考えたのだ。


「無理ですって!上手く立ち回れるからといってそれは状況判断能力とは結びつかないんですよ!」


「いや、風莉さんならできるね、間違いなく。翡翠眼は何も相手の霊力を見ることだけが強みじゃない。遠視と広範囲視認ができる時点でそれは非常に強力だからな」


「それが難しいんです!一体いくつのマルチタスクをこなせばできる代物なんですか!」


「敵の予備動作の確認、技の記憶、戦術の分析、敵の位置の確認、自分と味方の位置取り、行使する術の処理、最後に想定外の奇襲への警戒くらいか?」


「多くないですか!?」


「俺の訓練の時はそれが普通だったからな…ただまあ最低限予備動作の確認と敵の位置確認、自分と味方の位置確認はしておくべきだな。空から全体を俯瞰できることは戦いにおいて大きすぎる強みだ。それを活かす方針でいこう」


「うう…わ、わかりましたよ…やればいいんでしょう!やれば!」


「よく言った。さて…行くか!」


月夜・風莉ペア、対するは電・櫂ペア。聞こえてきた声に、月夜と風莉は歩き出した。


**********


「よぉ月夜…簡単には負けねぇから覚悟しろよ?」


「そちらこそ、簡単に負けてくれるなよ?」


「それでは…始め!」


試合が始まったその瞬間、電と櫂は同時に《雷獅子奮迅》を発動し、月夜と風莉に仕掛ける。しかし、月夜は冷静。電と櫂の進行方向を塞ぐようにして正確に障壁を生み出し、行動を制限する。その間に風莉は宙へと舞い上がり、巨大な術陣を展開し、術の構築を開始した。


「俺が落とす!そちらを押さえておけ!」


「チッ、わかってんだよ!」


櫂が月夜に肉薄し、電は風莉に雷撃を放つ。凄まじい速度の制圧力によって勝負が決した…と思われた。


「《月王の守り(ルナ・キング・クロス)》」


月夜と風莉の周囲に術式が展開され、櫂と電の攻撃を易々と防いだのだ。さらには、攻撃が防がれたことによって一瞬動きが止まって隙を見せた櫂の腹部月夜は目掛けて容赦なく拳を放った。櫂はわずかに身体を引くことで衝撃を和らげたが、それでもその場に留まれず吹き飛ばされた。


「くっ…馬鹿力め」


「主に力の使い方の問題だ」


さらに苛烈に攻撃を振るう櫂だが、すべては月夜の掌の上。簡単に防がれ反撃を受ける。櫂はちらりと電の方をみるが、障壁を貫くことはできていない様子だった。


「兄貴!障壁は無理だ!先にこっちをやらねぇと…!」


「黙れ!俺は何も間違わない!いや、間違えない!お前がさっさとそちらを終わらせろ!俺を頼るな!」


「っ!?話を聞…」


「うるせぇ!俺の言うことだけ聞いてりゃいいんだよ!」


「あ…ぅ、…や、やってやるよ…」


櫂は再び月夜に突撃するが、その動きは先ほどよりも精彩を欠いており、月夜はさらに大きくなった隙に大きな一撃を叩き込んだ。


「ガ…ハッ」


吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた櫂は強烈な痛みに悶え、一時的に身体が硬直した。想像以上に早く櫂がやられたせいなのか電が一瞬動揺した。その瞬間を見逃す月夜ではないのだ。


「《捻渦水貫撃》」


何度か見せている月夜の術。敢えて殺傷性をなくす代わりに着弾した時の面積を広げることで衝撃を大きくし、電を離れた場所に吹き飛ばす。それと同時に風莉が叫ぶ。


「月夜さん!いつでも行けます!」


「ああ!こっちも大丈夫だ!」


「わかりました!では…《暴風(テンペスト)…」


風莉が術式を完成させ、術を放とうとしたその瞬間。月夜は悪寒を感じ、直感で叫んだ。


「術を止めて飛行解除!今すぐだ!」


「!?は、はい!」


風莉が術式を消し、飛行の効果も途切れる。咄嗟のことで何も考えていなかったため風莉は落下中に慌てふためくが、月夜がしっかりと受け止めた。その直後風莉がいたところを一筋の稲妻が通った。しかし、それは雷轟家の誰かが行ったものではなかった。その何かは地面に降り立つと、凄まじい声量の遠吠えを行った。


「フォォォォォォン!」


その姿に、雷轟家当主である元は絶句する。


「嘘だろ…?雷獣だって…?まだ、封印されているはず…超級だぞ…終わりだ、おしまいだ…」


雷獣。1600年ほど前に封印された妖で、位は超級。圧倒的なまでの速度と攻撃力、さらには雷を自由自在に操るという厄介極まりない能力を持っている。そんな雷獣の視線は、月夜…の後ろにいる風莉に向いていた。何故か敵意を向けられており、如何にも殺す気満々といったところだろう。風莉は雷獣の姿に怯えるが、月夜は冷静。注意深く雷獣を観察する。


「げ、月夜さん…」


「大丈夫だ、安心してくれ」


一瞬、ほんの一瞬、月夜の意識が雷獣から逸れたように見えた瞬間、雷獣ははあり目掛け突撃してきた。しかし、その動きを読み切っていた月夜は風莉引き寄せてそのまま回避させると、式神の召喚を行った。


「来い、ルーナ!とりあえず逃げるぞ!」


『急に呼び出したと思ったらそれですかー。わかりましたよ、状況は走りながら聞くとしますかー』


月夜は風莉を抱えてルーナの背に跨ると、ルーナは雷獣も舌を巻くような速度で飛び出し、誰もいないであろう山を目指して走り出した。


**********


「あうぅ…は、速いですよー!」


「これより遅くしたら追いつかれる。だからできる限り……いや、マジかよ。ルーナ!ギリギリまで引きつけろ!」


『了…解っと!』


月夜達の進む正面。そこには、雷獣とは別に緑色の体毛をした狼がいた。纏う雰囲気は超級そのもの。それを確認した月夜は2体ともギリギリまで引きつけてからの回避を選択した。雷獣と緑の狼…仮称・風狼が月夜達に接触する寸前、ルーナが進行方向を変え、2匹の攻撃をすり抜けようとする。が、不運なことに、風狼の爪が月夜の背中にしがみついていた風莉の服に引っかかってしまったのだ。それに引っ張られ、風莉がルーナの背から引き摺り下ろされてしまう。それを確認した月夜は即座にルーナから飛び降りると、風莉が地面に叩きつけられる前に受け止め、霊力を纏わせた手刀で爪の引っ掛かっている部分を切って風莉を脱出させる。


「ひゃっ」


「ルーナ!雷獣は任せた!」


『りょーかいー』


月夜が素早く指示を出すと、ルーナは雷獣に飛びかかり、無理矢理その場から引き剥がす。攻撃されたことにより、雷獣はルーナに意識を向け、風莉から意識を外した。しかし、風狼はその間も意識を逸らさず、ジッと風莉を見つめている。不安そうに月夜と風狼を交互に見る風莉を落ち着かせるよう、月夜は頭をポンポン、と撫でてやる。


「さて、と。今から俺がやることは他言無用だ。いいね?」


「は、はい…」


優しい声色で月夜がそう言うと、風莉は反射的に頷いた。


「さて…始めようか。《月夜之幕》」


その瞬間、月夜と風狼の戦いの火蓋が切って落とされたのだった。

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