過去話(10)
いや…ね?友達の人生相談聞いてたんです、変なところで切れても…ねぇ。許してください、お願いします!
「陛下!ご意見よろしいでしょうか!」
そのように声を高らかに挙げたのは如何にも権力を持ってそうな金銀財宝を身につけた家族だった。
「ガルマンか…なんだ、申してみよ」
「これはよろしくない思考であると重々承知しておりますが、我々はまだゲツヤ殿の真の実力を知りませぬ。可能であれば、そのお力を見せていただけないかと。ゲツヤ殿はまだ傷が癒えていないと聞き及んでおります。可能であれば、で良いのです。ゲツヤ殿、お願いできないでしょうか」
ガルマンと呼ばれた貴族は、月夜に対して真摯な視線を向ける。しかし、その背後にいる貴族達は月夜に対していい感情を持っていなさそうだ。月夜は知らないが、ガルマン本人は伯爵であり、背後にいる公爵に月夜の力を公開させるようけしかけさせられたのだ。
「形式にもよりますね…場合によっては拒否させていただきます。傷が完治していないのは事実ですし、あまり激しい運動は避けたいですね」
「なるほど…ね。ゲツヤ殿、模擬戦は如何だろうか。無論、降参と言えば即中断、人を殺すような攻撃は禁止だ」
ガルマンを押し退けて月夜に話しかけたのは、壮年の男性だった。パッと見ただけでは正直強いとは思えないだろう。だが月夜は感じ取っていた。それなりに強い人間であり、間違いなく自分よりは弱いが、霊装がなければ勝負はわからない程度には強い相手だと。
「ラグザ公爵よ、我は其方の発言を許した覚えはないぞ」
「失礼いたしました、陛下。この場にはゲツヤ殿に納得していない貴族も多いと考え、行動に移させていただきました」
「…今回は見逃してやろう。次はないぞ。して、ゲツヤ殿よ、どうする?我としては流しても構わん」
「そうですね…」
(この模擬戦は形式以上の意味を持つ、か。俺の実力を測るつもりなんだろうな。あとは俺の精神性…ここで拒否すれば引き気味の精神性を持つ人間に勇者一行の一員は相応しくないとか言われるだろうし、もしも模擬戦で降参、もしくは敗北すれば勇者一行に見合わない強さだと糾弾するつもりなんだろうな。受けるしか選択肢はない、か…)
「受けましょう。ですが、先ほども言った通り怪我が完治していませんので、配慮のほどお願い致します」
「感謝致します。すでに会場は設定済みですので、すぐにでも始めましょう。それに…戦闘服なら着替えの必要もないでしょうし」
(はぁ…なるほど、最初からこうするつもりだったか。皇帝陛下も不快そうな表情をしてるし、独断なんだろうな。でも、それより…)
他の勇者一行メンバーをどうやって説得しよう。
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「それでは、ヒョウガゲツヤ殿と、サクザ公爵次期当主、テルマ・ラグザの試合を始めます!公平に試合を行うため、付与されたすべての魔法術式を解除します!」
「ッ!?待ちなさい!それはダメーーーー」
「始め!」
地面に術式が展開され、起動した直後。月夜が腹部を抑えて膝をつく。腹部の傷が開き、大量の血が流れ出したのだ。リタが月夜にかけていた治癒の術は《継続万能治癒》。傷口に術式を付与し、継続的に傷を治療する術だ。聖女専用の治癒術を使えば腹に穴が開こうが一瞬で治せるが、聖女の力は神聖国家が魔の神に占領されたことで補給が不可能になったため、リタは緊急時に備えて通常の術しか使用しておらず、月夜に対しても聖女の力を利用した術は使っていなかった。そのため月夜の傷は完治していないし、月夜もまたそれに納得していた。しかし、今回のようなことは完全に想定外である。《継続万能治癒》は一度の使用で長期的に傷を癒やすため、患者の体力を消費しない数少ない治癒術なのだが、デメリットとして治癒が終わってない段階で術式が解除されるとその怪我が治療前と同じになるデメリットを抱えているのだ。
「本ッ当に信じられない!今すぐ模擬戦を止めさせてくる!」
「リタ、待って」
リタは即座に模擬戦を中止させようと行動するが、それをルミナリアが止まる。
「ルミナリア!?それどころじゃない、ゲツヤの命に関わることよ!」
「ちゃんと見て」
ルミナリアの視線の先では、呼吸を整え、立ち上がる月夜の姿があった。対戦相手のテルマは月夜のその行動にに驚くが、それをすぐに抑えると視線を観覧席のラグザ公爵に向ける。その目は怒りと敵意に満ちていた。
「おい、クソ親父…俺は聞いていないぞ!怪我人と戦うことを承認した覚えはねぇ!」
「知らん、どうでもいい。試合を早く終わらせよ」
「なんだと…!もういい、俺が降参するぞ!」
「ねぇ、まだ、終わるつもりはないよ…!」
「は?あんた、何言って…」
テルマは絶句した。先程までそこになかったはずの紙が光を放ち、月夜の傷を癒やしているように見えたのだ。
「アドリブでやってみたけど…悪くないね。でも、長続きしなさそうだ。テルマさん…だっけ?一撃だ。一撃で勝負を終わらせよう」
「本当に何を言ってるんだ!君は重傷だ、戦っていい状態ではない!」
「陰陽八家…俺の家、雹牙家ではな、外部との模擬戦には誇りを用いる」
「きゅ、急になんの話だ」
「俺の生まれた家の話だ。模擬戦は誇りが用いられると言ったな…鍛錬のためや身内との模擬戦ではなく、公開されている外部との模擬戦。陰陽師達はこれに家の誇りを賭けるんだ。模擬戦をやるとなったからには勝者が決まるまではやるんだよ…家の誇りを賭けてな。受けてくれないだろうか?」
「…いいだろう。だが後悔はするなよ。我がラグザ公爵家の威信をかけた一撃を見せてやろう」
「感謝する」
「牙狼練啓、昇条」
「雹牙流…"極氷絶寒"」
2人はお互い言葉もなく同じ行動を開始する。
「"銀狼"」
「合わされ、《氷爆星》、《氷花》」
言葉が尽きた時、剣が振るわれる時は完全に同じだった。
「"屠牙"!」
「"氷蓮絶寒"」
両者の最大の一撃は、そこで激突した。
文字数少ないですけど許してほしいです




