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隣の席になった美少女が惚れさせようとからかってくるがいつの間にか返り討ちにしていた  作者: 荒三水
四章

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隣の席キラーバトル

 放課後。

 最後の授業が終わっても、唯李は席についたまま何事か考え事をしてるようだった。

 萌絵が隣の席キラー宣言をかました昼休みからこのかた、ずっとこんな調子だ。


「ていうかどう考えてもウソでしょ? 隣の席キラーかぶるとかそんなことある?」


 悠己が帰りの支度をしていると、突然口を開いた唯李がそんなことを言い出した。

 やはり考えていたのは萌絵のことらしいが、それを悠己に向かって若干キレ気味にしてくるのはどうかと。


「萌絵も隣の席キラーだったなんてびっくりだよね」

「いやびっくりですむかい。びっくりですんだらビックリマンチョコなんて売れんわ」


 突然の隣の席キラー宣言からのVS。

 そもそもの発案は小夜らしいが、どこかで同じように隣の席キラーというワードを作り出した人がいないとも限らない。

 ただ萌絵の言う隣の席キラーと、唯李の隣の席キラーは字面こそ一緒だが中身が少し違うようだ。

 萌絵は惚れさせちゃうぞ~としか言わないあたり、かなりふわふわとしている感はある。

 その口ぶりからするに、唯李が惚れさせゲームをしている、というところまで聞いてはおらず、漠然と隣の席の男子を惚れさせてしまう、ぐらいの認識なのかもしれない。

 それでも残念ながら萌絵のほうがよっぽど本物感ある。これだと唯李のほうがかぶっているとも取れる。

  

「しかし萌絵は隣の席キラーか……ヤバイかも」

「いやそこは隣の席キラー(笑)って鼻で笑いなよいつもどおり」

「それで偽物の人はどうするの? ギブアップ? コンティニュー? 9、8、7……」

「カウントダウンやめろゲームオーバー後の選択肢か。ていうかどう見ても向こうが偽物でしょ、ニセ隣の席キラーでしょ」

「本物のわりに余裕がないね。さっきもずっと押され気味だったし」

「誰がパクリの席キラーだよ。ニセモノの劣化コピーだよ」


 別にそこまでは言ってない。

 半分冗談のつもりだったが自分でそういう自覚があるのか。


「そうは言うけどね、ふっ……偽物が本物にかなわない、なんて道理はないんだよ」

「え? 偽物認めるわけ?」

「違うわ言いたかっただけだよ」


 言ってるうちにすぐどこかからパクってくる。

 言いたいだけで変なネタを挟むのは紛らわしいのでやめていただきたい。


「だいたい偽物登場とか戦隊モノによくあるお約束みたいなのいらないのよ。いやそれ二秒で気づくだろっていうの延々引っ張ったりしないから現実は」

「じゃあもう終わりにする? さっさと偽物暴いて」

「へ? お、終わり? ってことは……? いやだからこっちが偽物じゃねえっつうの」

「ていうか俺に言われてもね……直接萌絵に言ってきたら? どういうつもりなのか」

「そ、それはちょっと……」

 

 急に声が小さくなる唯李。

 やはり本物のくせに腰が引けている。というかビビっている。


「やつの狙いはいったい何なのか……」

「単純に唯李と仲良くなりたいだけなんじゃないの? 再会してこの方反応がよくないし」

「は、はい? いや別に、あたしがビビって避けてるとか、そ、そういうわけじゃないですけど?」

「唯李のほうもちょっと違うよね、他の人と態度が」


 萌絵があんな調子だからやりづらいのはわからないでもないが、唯李は唯李で必要以上に警戒しすぎているようにも見える。やはり過去の因縁が関係しているのか。


「きっと昔と違ってあたしがイケイケなのが気に入らないのかも……」

「え? イケイケ?」

「前提を崩すな」


 そんな話をしていると、席と席の間を遮るように影が通りすぎる。

 女子生徒はぴたっと立ち止まると、くるりとターンするなり、びしっと唯李の顔を指差した。


「さぁ唯李ちゃん、勝負の続きだよ!」


 そう言い放つ眼鏡をかけた女子生徒……は間違いなく萌絵だ。

 ややレンズの大きめの少しシャレたふうな眼鏡で、だいぶ見た目の印象が変わる。

 一瞬別人かと思い眼鏡に目がいっていると、萌絵は悠己の視線に気づいたのか、「あ、眼鏡かけたままだった」と言って外してみせる。


「席後ろでちょっと見づらいから、授業中だけメガネかけることにしたの」

「へえ、なんか頭よさそうに見えるね」

「んふふ、そう~?」


 萌絵はご機嫌そうに笑うと、一度眼鏡をかけ直して、軽く首をかしげてポーズをとってみせる。

 

「それとこの眼鏡ねぇ……」

「いやおかしいでしょ」


 萌絵がなにか言いかけた矢先、突然横から唯李が遮ってきた。

 悠己は思わず唯李の顔を見て聞き返す。

 

「……何がおかしいの?」

「なにを普通の会話してるのって話よ。なにが眼鏡かけて頭よさそうだよ小学生か」

「あれ? そんなふうなこと唯李もやってなかったっけ?」

「はい? まったくもって記憶にございませんが?」


 ちょいちょい記憶喪失になる。

 早くも黒歴史として記憶から葬ったのかもしれない。


「じゃあ唯李ちゃんもかけてみる~?」


 萌絵が眼鏡のはしを両手で持って、唯李の顔の前に持っていき、無理やり耳にかけさせる。

 そして正面から唯李を見て「ぶふっ」と小さく吹き出すと、「ハイ終わり~」と言って眼鏡を没収した。


「え? なに今の? 笑われただけなんですけど?」

「唯李ちゃんあんまりこういう眼鏡似合わないね」

「い、いやそれあなたの感想ですよね? 誰が眼鏡かけてもアホ面だよ」

「うふふっ、誰がアホ面だよっ!」

「……その言い方、人の真似しないでくれます?」

「誰が猿真似だよぉっ」

「だ・か・ら!」

「くすくす、だって唯李ちゃんの言い方面白いんだもん。かわいい」


 ぽんぽんと優しく唯李の頭に手を乗せる萌絵。

 かたや唯李は笑われてキーっと猿のように顔を赤くしている。こちらはまさに猿真似。

 

(これが本物の隣の席キラー……)


やはり本物の前には型なしだ。からかい力が段違い。

 仮に隣の席キラーが萌絵の嘘だとしても、よほどこちらが本物っぽいのがまた混乱を招く。

 萌絵は微笑を浮かべながら軽く腰をかがめ、唯李の顔を覗き込んでいく。


「じゃあなにしよっか? 隣の席キラーバトル」

「と、隣の席キラーバトルって……だからなによそれ」

「それはなんか……二人で勝負的なことするの! 本物の隣の席キラーを決めるために!」


 バトルバトルと言うが具体的になにも考えてないらしく、このふわふわ感はいかんともしがたい。

 早くも逃げ腰になりつつあった唯李は、突然ガタっと席を立つと、


「ええっと、あたし今日ちょっと用事あるから帰る……」

「え? 何の用事? どこか行くの?」

「あ、いややっぱなんでもないです」


萌絵から「じゃあわたしも帰るあわよくば一緒に行く」オーラを感じ取ったのか、唯李はすぐさま前言撤回。逆にこれは間違いなく用事はなさそうだ。

 

「あ~、もしかして唯李ちゃん逃げる気~? じゃあいいよ、唯李ちゃんの得意なもので勝負していいから」

「いや、そもそも勝負って……」

「いいから唯李ちゃんの得意なものってなに? 好きなものでもいいから!」


 反論する間もなくゴリ押され、唯李は気圧されつつも答える。

 

「と、得意なものって言ったらそれはもちろん……」


わちゃわちゃ動く猿の人形思い出した

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― 新着の感想 ―
[一言] もえちゃん前の学校で嫌な目にあってたんだろうなあ うざいもんなあ そんなところも健気でかわいいぞ
[一言] うーん萌絵さん唯李の事、実は嫌いなんじゃなかろうか。 嫌いとは言わずとも良くない方向のライバル意識ありそうだなぁ。とまぁ読んだ印象でしかないけども。
[一言] あーダメですダメです 唯李ちゃんあなたそれは得意なんじゃないから 勝ち目ないからー …いや、萌絵もアレで(ぐだぐだな方向で)いい勝負したり?
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