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俺の彼女は死刑囚  作者: 氷雨 ユータ
4th AID 幸福と偽りのワライ

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 いの  れる と する 

 比較的平和な回でしたがそもそもラブコメなのでこれは……

 

「お兄、なんか顔赤いよ? どったの」

「い、いや…………」

 服を脱がされなかった事が不幸中の幸いだろうか、否、雫は俺の服を脱がせて全裸でやるつもりだった。そこは最後の抵抗というべきか、逆に彼女の服を脱がせる事で何とか事なきを得た。布団の中には明らかに事後を匂わせた雫が包まっている。一応言っておくが何も無かった。

「何かあったのは親父の方だろ。その手の怪我はどうしたんだよ」

 追及されれば容易にボロが出るのは見え透いていたので可能な限り話題をすり替える。言い方は悪かったが、真面目に父親の左腕の痣が気になってはいたのだ。俺に対する理解が全く無くて、何の配慮もしてくれない親だが、それでも親ではあるから。

「ん、ああこれか。駅の所で誰かに足をつっかけられてな。打った」

「え!?」

 親を心配する気持ちはわかるが、流石に瑠羽のリアクションは大袈裟だ。骨折しているなら全然そんな事はないが、たかが痣。初めて痣を見た人間じゃあるまいし、何を思えばそんなリアクションが出るのだろうか。

「お、お母さんは心配じゃないのッ?」

「え? まあ確かに治安が悪いとは思ったけど、そこまでとは思わないわ」

 非情ではない。向坂聖の反応は至って正常だ。軽傷で騒ぎ立てるなんてどんな温室育ちだろう。この短い人生で俺も瑠羽も怪我を少なからず負ってきた訳だが、その内の一回でも家族が騒ぎ立てたかと言われると微妙だ。

 廃人になっていた時期は心配されていたかもしれないが基本的には放置されていた。それだけ俺の様子が只事ではなかったという証拠だが、それも騒ぎ立てていたかと言うと全く話が違う。そっとしておく事が最適解だったとはいえ、それは『出来る事は何も無いから時薬に任せよう』という判断に過ぎない。

 それでも怪我には違いないが父親は対処として患部を冷やしている。そこで話は終わりだ。騒ぐ部分なんて何処にもない。

 にも拘らず瑠羽は心なしか顔を青ざめさせて、何やら誰にも聞こえないくらいの声で何かを呟いていた。

「おい、どうしたんだよ」

「…………ぃ、いや、何でもないよ。うん。あ、そ、そうだ。お兄、ゲームしよゲーム」

 何かを誤魔化す様に瑠羽がゲームに誘ってくる。流石に家族のいる前で問い詰めるのは分が悪い。自動的に両親は彼女の味方をするだろうし、俺の味方は決して姿を見せてくれない。『殺してくれ』と言えば殺してくれるだろうが、そこまで憎む程何かをされた覚えはない。

 家族は家族だ。

「ねえお兄……今度こそ私、お兄を守るから」

「は? 何言ってんだよ守られんのはお前だろ。ほらボーっとすんな。流石に棒立ちの奴を守れる程ゲーム上手くないぞ」

「あ、ごめん。はいこれ、お礼に上げる」

「ゴミアイテム渡すな。いらんわ」

  














『今日、午前十一時前、水未みずみ市にて女性五人の遺体が発見されました。調べによると遺体は全身を捩じられているとの事で、警察は七凪雫の仕業と見て捜査している―――』


 ―――下らないな。


 だって、私はここに居る。この生活を手放したくないし、彼を手放したくもない。人を殺す? 何の為に? どうして不信を買う真似をしなければいけない?

「はあ…………はぁ……んッ。ふう………あッ……」

 寂しい。

 早く帰ってきてくれないかな。

 寂しくて、寂しくて、寂しいから、寂しいので、寂しい。

 愛しくて、愛した、愛するから、愛しているので、愛しい。

  せ、 さなければ、 さないと、 してほしくて、 す。

「うう……ぐッ! ……あお……エっ……ぐおぉ…………!」


 頭が……痛い…………!


 なんで……?

 いや、違う。違う。違う。違う。違う。違う。これはきっと……きっとアイツの仕業だ! 

 それ以外にどう説明をつけられるだろう。こんな事は今まで無かった。考えられるとすればそれ以外の何もない。

「ホント……変わったねえ……! そんなに私が幸せなのが…………憎いんだ……? 私から全てを奪おうなんて…………無理なのにね」

 君の目的に彼は関係ないと思うけど。何時から人の物を盗りたがる悪癖がついたのかな。




「やれるものなら……やってみなよ…………! 奪わせない…………私の、私の全て」


 

 

 ここで4章は一区切りですが、新章は更新されます。昨日サボり過ぎたから仕方ないね。

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[一言] 純愛やん(棒)
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