初めてのパーティー
「は、初めまして。リアナ・アル・エルロンです。よ、よろしくお願いお願いします」
エルヴィンの所で精霊魔術の基礎を学び、遂に王立ギルド運営から私の初仕事が振られた。
依頼内容は“黒龍の覇者の血を手に入れろ”とのことだ。
エルヴィンから手紙を受け取った私は依頼内容を二度見する。
はて、ドラゴン? ドラゴンっていうのは討伐難易度★★★の危険指定生物じゃない。
討伐難易度というのは大雑把だけど、★~★★★★★の五段階評価で示される。
特に★★★以上の魔物や悪魔などは危険指定生物と呼ばれており、下位ランクのギルド員は単独で立ち向かうことは許されない。
つまり、めちゃめちゃ強いってこと。いきなり胃もたれしそうな依頼だよ……。
『いきなり★★★の“危険指定生物”かぁ。生きて帰れるか不安だなぁ』
『何言ってやがる。アブソリュートドラゴンの討伐難易度は★★★★。“超危険指定生物”だぞ。人里に現れたら間違いなく国家レベルで対処が必要になる』
『へっ……?』
というのが昨日のエルヴィンと私のやり取り。
彼の言うとおり“超危険指定生物”は町や村が壊滅する危険性のあるレベルのヤバい魔物たち。
そんなのの相手なんて無理って言ったら「“精霊魔術”を信じろ」って言われた。
バカな私はその言葉を鵜呑みにしてここまで来たんだけど、冷静になるとやっぱり怖い。
目の前にいるのは私とパーティーを組んでくれる三人のギルド員。男性が二人で女性が一人か……。
「おおっ! 五年ぶりにSランクスタートを切った、噂のリアナさんと仕事だぁ! 僕、クラフトっていいます! Bランクの魔法士です!」
「クラフト、うるさい……。メリッサ・ウエスロット、Bランク、魔法士……、眠い……」
「ふん。女のSランクと聞いてどんなものかと見てみれば。覇気もないし、まるで知性を感じない。査定員は何をしているだ? 俺はお前をリーダーとして認めんからな」
「またまた、カインさんったら。ツンデレですねぇ! この人はAランクの剣士です。老け顔ですが、二十代ですよ!」
「クラフト、次に老け顔と言ったら殺す……!」
魔法士のクラフトとメリッサ。そして剣士のカイン。この三人が私とパーティーを組む仲間として集められた。
私を含めて魔法使いが四人中三人。随分と頭でっかちなパーティーだなぁ。
多分、私の精霊魔術が魔法士を強化するっていう情報に基づいてなんだろうけど。
えっと、エルヴィンがパーティーに魔法士がいたら最初にやれと言ってたことがあったな。
「あの、クラフトとメリッサは魔法士なんだよね? ちょっと手のひらを出してもらっても良いかな?」
「手のひら? こうですか?」
「これでいい……?」
二人に手のひらを差し出すようにお願いするとクラフトとメリッサは言われたとおりにする。
私は二人の手のひらに触れて息を吸い込む。そして――
「魔力増幅術……!」
「「――っ!?」」
私が術を使った瞬間に二人の身体は淡い青色の光に包まれた。
これが精霊魔術の基礎の一つである魔力増幅術である。
魔法士の魔力の量と出力を一時的に増幅することが出来るという優れものらしい。
私が無意識にパワースポットになっていたのは、私が余りある魔力を垂れ流し魔法士たちが吸収していたからなんだけど、この魔術はそれを意図的により強化に特化して行うことが出来る。
強化できる倍率は本人の素養によって変化するが、大体二倍くらいまで上がるらしい。
「す、凄いです! 魔力が、魔力が溢れる! 力が充実してきます!」
「んっ……!? 目が覚める……」
クラフトもメリッサも自分の身体に起きた変化に気付いたらしい。
私の実家のギルドにいた魔法士の人たちは知らない間にこうやって強化されていたのか。
パワースポットと認知されるくらい魔力を垂れ流してたことに気付かなかったって……私って途轍もない鈍感だったんだね。
「流石、伝説の精霊魔術士です! 魔力の強化を簡単にしてしまうなんて。僕、感動しちゃったなぁ!」
「ちっ! そんな大層な魔術は終盤まで取っておけ! 見たところジリ貧になってからこそ役に立つ性質のものだろ? ちょっとは出し惜しみしろ!」
「あはは、そうだよね。ごめん、私は常に魔力が余ってるみたいで、この魔法も何回でも使うことが出来るから良いかなぁって」
「な、何回でも!?」
カインがいざという時の為に安易に魔法を使うなと注意をしてくれたので、私は何回でも無制限に魔法を使えることを話す。
悪魔の刻印がずっと精霊の魔力、つまり“マナ”を吸収し続けているおかげで私の魔力は底をつかない。つまり無制限に使うことが出来る。
だから、クラフトとメリッサに使った魔法の効果が切れそうになっても、すぐに魔力を強化し直すことは可能なのだ。
「そ、そんな……、魔力が無限にあるとでも言うのか? 信じられん。人間の力を超えている……」
「だからSランクなんじゃないですか? カインさん」
「ぐぬっ……。むぅ……、そうだな。思ってたより出来るらしい」
出来ることは少しだけ増えたけど、一番不安なのはリーダーをやらなきゃならないってことだ。
指示を出すって難しいよね。どうしたら良いんだろう。
ああ、考えるだけで鬱になるなぁ……。
「だが、ギルドランクは上かもしれんが、俺は10年以上もの間、このギルドで自らの腕を研磨してきたベテランだ! 新人のお前などがリーダー面をするなど我慢ならん!」
「えっ? カインって、リーダーやりたいの? じゃあお願いしてもいい?」
「はぁ? お前がリーダーをするんじゃ……」
「いやー、私も新人っていうか初心者だからさ。カインみたいな先輩がしてくれた方が絶対に良いと思うんだよね」
「ふ、ふむ。そ、そうか。うーむ、中々見どころのある奴だな。色々と悪口を言ってすまなかった」
やった。カインがリーダーをやってくれるそうだ。
別に絶対にSランクがリーダーじゃないとならないってルールは無いみたいだし、経験豊かな人がやった方がいいよね? 絶対に。
こうして、顔合わせが済んだ私たちは“超危険指定生物”である黒龍の覇者の血を手に入れるために動き出したのだった――。
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