スキルホルダー
「む、無傷!? アリシアとレイスの同時攻撃を受けても無傷なんてあり得るの!?」
目の前の光景は到底信じられないものだった。
王宮ギルドの第2位と第3位の実力者が至近距離から最大級の火力で攻撃を放った。
以前に戦った討伐難易度★★★★★クラスの最高危険指定生物でさえ、あれを受けて無事でいられるはずがない。
それなのにも関わらず、無傷。ピカピカに輝く翼を携えて仁王立ちするアムルスターのクローンは自らを神だと言っていたが、確かにその力を示していた。
「弱者どもよ跪け。その程度の力で余に傷を与えようなどとおこがましい」
「「――っ!?」」
アリシアとレイスに向かって光の翼が伸びる。
二人は咄嗟に瞬間移動をして距離を取るが、それも衝撃的だと言わざるを得ない。
プライドの高いあの二人が逃げの手を打つなど私には想像ができなかったからだ。
やはり大技が通じなくて、二人とも戦意を喪失――。
「あー! 頭にくるわね! 人間のくせにあたしを見下してんじゃないわよ!」
「気に食わないが、ああいう得意満面の顔を歪めるのも悪くない」
「あれ? 二人とも全然元気なんだね。攻撃が効かなかったのに怖くないの?」
てっきり敵のあまりの凄さに尻込みするものかと思ってきたけど、アリシアもレイスもムッとした顔を向けているだけだった。
いやいや、あいつめっちゃ化物じゃん!
普通はもっとヤバいってリアクションするでしょう。
「アリシア、君は怖いものってあるか?」
「はぁ? そんなものあるわけないでしょ? 攻撃を“防がれた”くらいでいちいち怖がっていたら戦いなんてやってられないわよ」
「へぇ~、すごいなー。てか、今の攻撃って、“効かなかった”んじゃなくて“防がれた”の?」
「ほう……」
明らかに直撃したようにしか見えなかったけどな。
なんせあのクローンは腕組みして仁王立ちしていただけだし。
防ぐ動作なんて見えなかった。
「“スキルホルダー”――エルヴィンの“神眼”やシオンの“万物切断”。この世の摂理に反したスキルを持つ者たち。僕の見立てではあの男はなにかしらの固有スキルを持っている」
「そういえば、ルーシー様と戦われたリオン様という方も“神の見えざる手”という未来改変のスキルでことごとく攻撃を回避していましたわ」
「そういうこと。たまにいるのよね。人間のくせに生意気な能力を持っているちょっとだけ面倒くさい連中が」
話に完全に置いていかれている。
こういうとき、バカって損していると思うんだよね。
でも、なんとなーくわかってきたぞ。
あのエルヴィンはすべてを見通す力で躱すのが上手いし、シオンはなんでも切り裂いて回避する。それにリオンに至っては攻撃のほうが避けてしまう。
クローンの人もそんな力を持っていて、至近距離からの二人の攻撃を防いだって考えているのか。
「ふははははっ! 神に等しき存在である余をそこらのスキルホルダーと同一視するとは笑止!」
「えっ!? 違うの!?」
「余に攻撃が通じない以上は貴様らは逃げ惑うしか手はない。踊り狂うがよい!」
またピカっとクローンの目が光る。
すると今度は黄金の翼から無数の羽根がこちらに向かって飛んできた。
「お姉様、下がってくださいまし! 聖光の防壁!」
「あっ!?」
ティナが私の前に出て一瞬で光の壁を使って黄金の羽根から身を守ろうとする。
あの羽根が危険だと判断したのだろう。
――次々と光の防壁に突き刺さる黄金の羽根。
よかった。マナバーストを使っているから平気だと思っていたけど得体の知れないものには触れないほうがいいもんな……。
アリシアやレイスも上手く躱していて、そこら中の瓦礫や地面に羽根はむなしく突き刺さるのみ。私たちは無傷で済んだ。
「無駄だ! 爆ぜろ!」
「「――っ!?」」
気付けば私たちは吹き飛ばされていた。
地面が、光の防壁が、瓦礫が大爆発を起こしたのである。
こんなの反則じゃん。攻撃が当たらない理由もわからないのに、これじゃ近付けない。
あの羽根が刺さらなくてよかった。爆風はマナバーストでなんとか防げたけど、直接だったら腕や足が粉々になっても不思議じゃない。
んっ? マナバーストでなんとか防げた?
「そうだ! ティナ!?」
度重なる爆発や破壊により、周りはぐちゃぐちゃ。
立派な古城がそびえ立っていたのに、もうこの辺り一帯が更地になっている。
これだけの爆発。光の防壁の近くにいたティナはただでは済まないにちがいない。
「ふっ……、余としたことが少し熱くなったか。原型を残した者が一人いたのは甚だ遺憾だが」
「よくもティナをーーーっ!!」
嘘だ! ティナもレイスもアリシアも、全員死んでしまっただなんて。
信じられない。でも、でも、この更地になった大地には誰も見当たらない。
「無駄だ。余の“神盾”はすべてのダメージを消し去る無敵の――。ぐはっ!?」
「あれ?」
痛いっ! つい、頭にきてエルヴィンに動かすなって言われた右手を使ってしまった。
クローンは苦悶の表情を浮かべて腹を押さえている。
でも、アリシアやレイスの攻撃は効かなかったはずなのに、私の拳は効いているようにみえるんだけど。どういうこと?
「なんだ、やっぱりスキルホルダーじゃない」
「無敵の盾、“神盾”。それが君の固有スキルかい?」
「お姉様! さすがですわ!」
「――っ!? み、みんな!? 無事だったの!?」
遠くからこちらに駆け寄ってくるティナたち。
爆発のせいで死んでしまったかと思ったけど生きているし、埃まみれになっているが怪我は大したことなさそうだ。
「お姉様、すみません。リアナお姉様ならあの程度の爆発なら大丈夫だと判断して、とっさにテレポートを使って距離をとったのです」
「ああ、私以外のみんなテレポート使えるんだったね……」
今気付いたけど、テレポートってずるいよね。
一瞬で危険回避できるし間合いを詰められるし、強すぎる。
「く、なぜ余の無敵の盾が……」
「無敵の盾ねぇ。あんた、他のスキルホルダー馬鹿にしていたけど多分そのスキル弱いほうよ」
「あれなら、あの忌々しい男の“神眼”のほうがまだ厄介だな」
「な、なんだとぉぉぉ! 神に等しき存在たる余を愚弄するな!」
あれ? また展開に置いていかれている?
なんかアリシアたちがあいつのスキル分かったみたいな顔しているけど……。
とにかくクローンは無敵の神ではなかった。それなら何とかなるかもしれない。
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