獣化騎士《ティーアリッター》
獣人って初めて見た。というか、本当にいたんだ。
獣人である、とかしたり顔して言っちゃったけど絵本でしか見たことがなかったし。
「獣化騎士ね。リヴァリタ王室の研究室が創り出したという。神に成れなかった可哀想な人たち。……リアナちゃん、あの子たち、元々はアタシたちと同じ人間よ」
リヴァリタは私の故郷なんだけどなー。例によって全然分からないや。あの人たちが私たちと同じ人間? どういうこと?
エルヴィンやティナがいたら、補足で解説とかしてくれるんだけど、何か先に帰っちゃったみたいだし。
私に出来ることと言ったら知っている顔をするだけだろう。
知っている、知っている、獣化騎士ね。うん、あの人たち狼の顔してる騎士だもん。そのまんまの名前だよね。
「さすがに我らのことは知っているか。自らを神に等しい存在と昇華させようとするリヴァリタ王国第一王子、アマルスター殿下の私兵たち。それこそ、人を超えた存在と成った我ら獣化騎士なのだ!」
説明されて全く分からんなんてことある? 私の頭が悪いのかな?
とにかく、アマルスター殿下が作った私兵集団がこいつらってこと。
もしかして、私の故国って、まともな王子様が居ないのかな? エルロンガーデンにほぼ閉じ込められた生活していたから全然知らなかったよ。
第三王子のブルクハルトも宮廷ギルド作ってこっちに喧嘩売ったり、和解したとおもったらギルド対抗戦を仕掛けてきたり、トラブルしか起こさないし。
そ、そうだ。ブルクハルトと言えば……。
「そこのジルノーガって、あれだよね? ブルクハルトの護衛じゃなかったっけ? なんで、アマルスターの私兵に殺させているの?」
「アマルスター殿下と言わんかーーーっ! この不敬者がっ!」
「ひいっ……!」
眼帯をした狼男が大声を上げて私に向かって叫ぶ。
怖いよ、呼び捨てにしたの悪かったけど、怖いって。
というか、アマルスターのことしか敬称略してなかったな。ブルクハルトのことはどうでもいいってこと?
だって、ブルクハルトも王子じゃん。第三王子ではあるけど。
「ブルクハルトはクーデターを企んでいるのよ。宮廷ギルドに戦力を集中させてね。王宮ギルドを凌ぐ力を持っていると周辺諸国に知らしめるという目的で始められたこの大会もその一環。力を見せつける目的よ」
ええっと、そうだったのか。これも知らなかったよ。
シオンは何でも知ってるな。まるで、エルヴィンやティナみたいだ。
私が凄い物知らずっていう説もあるけど、一般的だと信じたい。ルーシーとかは知らないはず、多分。
「ほう、エルトナ王宮ギルドはやはり知っていて愚かなブルクハルトの野望に加担していたのか。許しがたい」
眼帯をしていない方の狼男がブルクハルトの野望云々って言っている。
じゃあ、本当にそうなんだ。だから、クーデターを阻止するためにジルノーガを殺して、ブルクハルトも始末しに来たと。
私たち、関係ないじゃん。なんで、サーベル構えているんだよ。
「アマルスター殿下は神となり、リヴァリタの王となり、天下を獲るために動く! 我ら獣化騎士はその障害を全て排除する!」
「王宮ギルドの主力や各国の要人が集まったこの大会は我らにとっても好機だったのよ!」
眼帯している狼男としてない狼男は代わる代わるセリフを言い放つ。
いや、そんなことしたら周辺諸国全部に喧嘩売ることになると思うんだけどさ。
そこのところ、どうなの? 神になるって、ブルクハルトよりもやばい奴じゃん、アマルスター。
「お優しいわね。わざわざ、殺す理由を教えてくれるなんて。アタシ、優しい男子は斬れないんだけどな」
「いや、そんなこと言ってる場合?」
「そうねー、リアナちゃんが正論よ。でも、女っていうのは理屈よりも感情を優先したいときもあるのよ」
呑気に斬りたくないとか言っているシオン。まー、長々と説明してくれたな、というのは同意だけど。
ずっとサーベル出しっぱなしで話をしていたもんね。こっちも緊張感なくなっちゃったよ。
「アマルスター殿下の崇高な理念を聞かぬ前に死ねば、貴様らもこの世に憂いが残ろう!」
「リヴァリタこそ、最強! アマルスター殿下こそ神なのだ! 王宮ギルド滅ぶべし!」
「「――っ!?」」
ああっ! 攻めてきた!
獣人だからなのか、すごい跳躍している。危険指定生物の魔物たちもびっくりなくらいだ。
私には眼帯している方の狼男が飛びかかってきた。
参ったな。ティナと戦ったときに精霊憑依使って、その反動のせいで、まともに腕を動かせなくなっているし。
「精霊強化術ッ!」
「精霊魔術士! 貴様は殴るしか能のない取るに足らぬ相手だと諜報部から報告が来ている! 死ね!」
「いやー、殴れないんだよね。だから――」
蹴るッ!
思いきり蹴る!
腹を蹴る! 何度だって蹴りまくる!
「がふあっ! ば、バカな……!」
「うらららららららら! うらぁ! うらららららららららららッッ! うらぁ! うらぁ!!」
タイミングを合わせた飛び蹴りが眼帯している方の狼男に突き刺さる。
普段、神眼を持っているエルヴィンと修行しているから、動きを読むのは得意なんだよね。
相手は蹴られると思っていなかったのか、びっくりして怯んでいる。
この隙に私は何度も、何度も蹴りまくって、眼帯している狼男を吹き飛ばしてやった。
「あ、兄者!?」
「あらぁ、アタシを相手にしてよそ見はイケてないかな」
「ぐはっ……!」
「イケメン以外は斬って良しって自分ルールがあるの。やっぱアタシだけを一途に見てくれないと嫉妬しちゃうでしょ。ゴメンネ♡」
なんか、シオンの方も決着がつい――。
「「油断したな!」」
「「――っ!?」」
倒したと思ったのに、起き上がって剣を突き刺そうとしてきたぞ。
咄嗟に身をよじらせて躱したけど、服が少し破れちゃった。あっぶなー。
えっと、シオンは……?
「へぇ、やるわね。アタシに斬られて起き上がってきた男は久しぶりよ」
「「我ら、アマルスター殿下の精鋭部隊。獣化騎士。この命尽きるまで、永遠に動き続けることが出来るのだ!」」
何だかすんごくタフで面倒な連中みたい。
でも、魔物じゃなくて人なんでしょう? 出来れば、殺すのは嫌なんだけど、どうしたものかな……。
エルヴィンやティナもこんな奴らに襲われてなきゃ良いけど。
お久しぶりです。
原稿と向かい合う日々で中々WEB更新出来ないで申し訳ありません。
早く、書籍についても色々と報告したいのに……!
リアナ、めっちゃ可愛いイラスト出来上がっています!
また、ご報告しますので、お待ちください!
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