勝負の行方
「ギャハハハハハハ……! 消えて無くなった~~! 殺したら負けだったっけ~~!? どーでもいいよ~~! そんなこと~~!」
闘技場には誰も居なかった。
ジルノーガが両手をバンザイさせて、勝ち誇ったような声を出している。
そ、そんな……、まさか、あんなやつにティナが――。
ゆ、許せない。あいつだけは、私は許さない……!
「マナブース――」
「お待ちなさい。まだ、ティナちゃんの戦いは終わっていないわよ」
「えっ……?」
私が飛び出してジルノーガをぶん殴りに行こうとしたら、シオンが腕を掴んでそれを止める。
その瞬間、聞き慣れた声が聞こえた――。
「甘いですわね……!」
「ぐぎゃああああああああっ――!!」
バンザイしていてスキだらけだったのか、ジルノーガは今までにないくらい大きな叫び声を上げて吹き飛ばされる。
よかった、ティナは生きていたんだ。
「リアナちゃん、ティナちゃんが空間移動術式が使えること忘れたの?」
「あっ!? そういえば! でも、ティナの姿は今も見えないし……」
シオンはティナが空間移動術式を使ったとか言ってるけど、それなら姿が見えないのは変だ。
透明人間になったということ? 何が起こっているのかな……?
「最速の術式発動……、それは何も攻撃魔法に限定される訳じゃない。ティナちゃんは、目にも止まらぬスピードで空間移動術式を連発しているの。だから、姿が見えなくなっているってわけ」
シオンによるとティナは絶え間なく空間移動を繰り返しているみたいだ。
だから、姿が見えない。ジルノーガもこれには焦っている。
「な、な、何がどうなっている~~!? 姿を現せ~~! ひ、卑怯だぞ~~!! ぐふぅっ、がはっ、げぎゃっ――!」
「これで終わりですわ――! 聖光の流星群ッッッ!!」
「ぶひょおおおおおおおおおおおおっ~~!!」
ジルノーガの身体が場外に落ちる。
それと同時にティナはようやく姿を見せた。
どうやら、彼女は至近距離から魔法の連打をお見舞いしたらしい。
これには流石のジルノーガも耐えられなかったみたいだね……。
『ジルノーガ選手! 場外に落下! ティナ選手の勝利です!』
「はぁ、はぁ……、連続して空間移動は二回戦を考えると温存しておきたかったのですが……。致し方ありませんわね」
ティナは息を切らせている。
別に魔力なんて私が回復させてあげるのに……。
そういえば、さっきティナは魔力増幅術を使うのを拒否していた。それってこの先もっていうことなのかな。
「あーあ。負けちゃったな~~。ま、しょうがないか~~。殺し合いじゃなきゃ、燃えないしね~~。ブルクハルト様に無理やり出ろって言うから~~」
ゆっくりと立ち上がり、ジルノーガは言い訳をしながら闘技場から出ていった。
あいつ、自爆とかしても平気だったし、実際に面倒な奴なんだろうけど……。
それにしても、ティナは凄い。すっごく強くなっていた……。
「次はリアナちゃんね。頑張って」
「あー、そうだった。そうだった。忘れてたよ」
「あらあら、そそっかしい子ね~」
ということで、一回戦の第二試合は私の出番だったので、急いで控室に向かって準備した――。
◆ ◆ ◆
『それでは、神捧聖戦の儀、一回戦第二試合! エルトナ王立ギルド所属! リアナ・アル・エルロンVSリヴァリタ宮廷ギルド所属! スペラッタ・ブルコッタの試合を開始します!』
「ゲシシシシ、切り刻んで血の雨を降らせてやるぜぇ」
「リヴァリタ宮廷ギルドってヤバい人しか居ないのかな……?」
両手に半月刀を構えた、顔に大きな傷のある男が私の対戦相手みたいだ。
変な笑い方しているし、そんなルールでもあるのかな……。
「言っとくがオレはジルノーガみたく甘くないぜぇ! ゲシシシシシ! どっからでもかかって来な!」
「真・精霊強化術! うらぁっ!」
「見切った……!」
最初から全開で真っ直ぐ殴りかかったら、スペラッタはドンピシャのタイミングで私の拳を斬りつけようと半月刀を振り下ろす。
「ぐげはっ――!」
「あ、あれ……?」
半月刀は拳に当たったけど刀身が砕け散ってしまう。
そのまま拳はスペラッタの腹に突き刺さり――。
『スペラッタ選手、10カウント経過しても起き上がりません! よってリアナ選手の勝利です!』
そのまま勝ってしまった……。
いや、腕切られると思って焦っちゃったよ――、
次回は一回戦のダイジェストって感じです。
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