Sランクギルド員
「特殊な魔法防壁で守られているこの闘技場が砕け散った……だと?」
「恐らくは高濃度に圧縮された魔力によって、魔粒子の結合が崩壊したのでしょう」
「深いなぁ……。穴の大きさや深さから推測するに、彼女の拳から繰り出されたエネルギーの大きさは最大火力魔法――“大隕石術式”級かと」
白衣を着た人たちがザワザワと私の作った大穴の前に集まって、よく分からないことを話している。
この石畳って普通の石で出来ているんじゃなかったの? 魔法防壁とか言ってたけど……。
「ねぇ、エルヴィン。今のって……」
「“大隕石術式”級かぁ! いいねぇ、今の技を大隕石拳撃と名付けよう!」
「吐き気がするほどダサいよ!」
エルヴィンに今のは何だったのか聞こうとしたら、何なんだというくらいダサい必殺技名を付けられる。
いや、名前なんてどうでも良いから理由を教えてくれ。何で魔力の蓋を閉じただけであんなことになったのか……。
「別に大した理屈じゃない。リアナの拳に出口を失った超高濃度の魔力が圧縮されていて、それが全てをぶっ壊す凶器になっているってだけだ。圧縮された魔力を叩きつければ行き場を失ったエネルギーが膨張して大爆発を起こすことは分かっていた。思った以上の威力だったけどな」
「うん。全然分からないや……」
「だと思って説明しなかった。別に威力が出りゃあ理屈を知ってようが知るまいが一緒だし」
「なるほど。私がバカだって見越してたワケだね」
本当に半分も理解できなかったけど、物凄い力がギューッとなってバーンと弾けたことだけは何となく感覚で分かった。
ちょっとだけ魔力の蓋を閉じるだけであんなにも凄い威力になるなんて……。
感慨深いなぁ。今まで魔法とは縁が遠かったから、初めて魔術というものを使って――。
魔術というもの……? んっ? これって魔術なの?
どう考えてもぶん殴っただけなんだけど――。
「えっと、私って精霊魔術士とやらになるんだよね? 精霊魔術士って、魔法使いのカテゴリーに入るって認識でいいのかな?」
「はぁ? 当たり前だろ。魔術士なんだから」
「いや、拳で攻撃って思いきり物理じゃん。それって魔術士としてどうなのかなぁって……」
「バーカ。リアナはどんな魔術士も出来ない精霊の魔力を圧縮して爆発させるという最高峰の魔術を使ったんだ。こりゃあ、レイスが見たら悔しがるぞ」
これが最高峰の魔術なの? 魔術って突き詰めるとぶん殴るに行き着くの?
何か考えてたのと違う……。そんな感情を抱きながら、私はもう一回大きな穴を覗いた。
うーん。やっぱり納得できないな……。
「それで、私は王立ギルドに入れるのかな?」
「合格は間違いなしだよ。俺の紹介だし。今、王宮のお偉いさんがお前のギルドランクを査定してるんだ。ま、俺の見立てじゃ――」
「精霊魔術士・リアナのランク査定が終了しました」
「おっと、もう終わったか。それじゃ、あっちに行くぞ」
ギルド入り自体は間違いないというエルヴィン。
それなら私としては目標達成なのでもうこれ以上は望むことがないんだけど、ランク査定とやらの結果を聞かなくてはならないらしい。
エルヴィンが指差す方へと私も足を向ける。
ギルドランクかぁ。実家のギルドはDランクからAランクの4種類に分けていたけど、エルヴィンの話だとここにはAランクの上にSランクがあるらしい。
Sランクって貴族よりもお金持ちになれるって凄い特別待遇だよね……。エルヴィンが大豪邸に住んでいたから、それも嘘じゃないんだろう。
精霊魔術というのを極めたら私もSランクギルド員になれるのかなぁ。
魔術士なのに、パンチしか技がない私だから、今回はDランクだろうけど――。
「精霊魔術士・リアナのギルドランクはSランクです。これから王立ギルドの主力としての活躍を期待しています」
「へっ……? え、Sランク……? 私が……?」
ええーっと、耳がおかしくなったのかな? 今、この役人風の男の人が私がSランクだと言わなかった?
だって、Sランクって貴族以上の特別待遇ってエルヴィンが――。
「おおーっ! 五年ぶりにSランクスタートが出たか!」
「しかも伝説の精霊魔術士というじゃないですか!」
「これは、王都中で大ニュースになるぞ!」
「魔法防壁で守られた石畳を粉々に砕いた上に、こーんなに大きな穴を開けたんだもんな! 当然だ!」
何かよく分からない所でよく分からない盛り上がり方をしていらっしゃる。
本当に何かの間違いじゃないかな。ギュッとしてバチンと殴っただけだよ? それだけしか出来ないのにSランクの称号を貰っても良いものなのかしら。
「これで俺の面目も保たれたって感じだ。ありがとな、リアナ」
「エルヴィンの面目……?」
「新しい人材をスカウトするのが俺の仕事だからよ。リアナがSランクの査定を受けたことがこのまま評価に繋がるんだ。信じていたが、大したもんだ」
エルヴィンはクシャクシャっと私の頭を乱暴に撫でる。
気安く人の頭を撫でないで欲しい……。
それに、お礼を言うのはどう考えても私の方じゃない。
――ギルドに誘ってくれて、ありがとう。エルヴィン……。
「んっ? 何か、言ったか?」
「ううん。独り言……」
「そっか。それじゃあ、ギルド入りを祝して飯でも食いに行くぞ」
今日が私の精霊魔術士としての人生の一ページ目。
私こと、リアナ・アル・エルロンはエルトナ王国の王立ギルドに入った。
Sランクギルド員としてやっていけるのか思いきり心配だけど、力の限り頑張ろうと思う。
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