集結する精鋭たち
いよいよエルトナ王国とリヴァリタ王国のギルド精鋭たちが武を競う――神棒聖戦の儀が開始される。
開催場所は両国の国境沿いに急ピッチで建設された闘技場。
魔法による防御結界も何重にも張られて観覧席、特にゲスト席への配慮は万全とのことらしい。
「ティナはまだ来ていないみたいだね」
「まー、そのうち来るだろう。寝坊ばかりしてるリアナとは違うからな」
「そーだね。ティナはしっかりしてるし」
普段から時間厳守でルールはきっちりと守っているし、遅れることはないだろう。
修行をすると言って以来、一度も帰って来てないから心配だけどね……。
「よう、リアナ。久しぶりだな。お前は優勝を目指してるのだろうが、オレもあれから腕を上げた。簡単に勝てると思わないことだ」
「あ、カインだ。カインも代表選手に選ばれたんだね」
「これでも、Aランクのベテランなんでな。殺すことが反則ってルールならオレだって上手く立ち回る自信はある」
何度か仕事で一緒になったカインに話しかけられて、彼も選手になっていたことを知る私。
ちなみに私は優勝とか目指してないんだけど、誰からの情報なんだろう……。
「リアナさん、カインさん、やっと見つけました。ボク、知り合いが見つからなくてずっと緊張しっぱなしで……」
カインと雑談しているとルーシーが話しかけられた。
ルーシーは人見知りだから知り合いが居なくて緊張していたらしい。
「ルーシーじゃないか。聞いたぞ、最近一気にAランクに昇格したらしいじゃないか」
「そうそう。私も聞いたよ。おめでとう! 今度、シオンのお店でお祝いしようよ」
「お二人とも耳が早いですね。聖戦の儀の選手になったということで、Aランク相当だと力を認めてもらったんです」
昨日、エルヴィンから聞いたんだけど、ルーシーがAランクに昇格した。
精霊召喚を自らの力だけで可能になったことと、エルトナ王国代表の16人に選ばれたことがDランクからAランクに異例の昇進をした理由である。
「シオンさんといえば、あの人の姿もまだ見えてないな」
「そーいえば、そうだね。まさか、来ないとかはないよね?」
長身で金髪のシオンはよく目立つ。
彼女はエルトナで文句無しの最強だし、絶対に国王陛下から出るように言われてるだろうから、それはないか。
「あら、シオンはまだ来ていないの? ていうか、どうせ、あたしかあいつのどちらかが優勝なんだからトーナメント戦なんてまどろっこしい事せずにバトルロイヤル形式にすれば良いのに」
「アリシア・マーセルシュタインか。確かにお前は優勝候補だろう。だが、リヴァリタにも強い奴はいるだろうし、オレたちだってトーナメント戦の巡り合わせによってはお前に勝つ可能性はある。油断はしないことだ」
「あんた誰だっけ? 油断したくらいで負けられる相手が一人でも居てほしいものね。退屈しのぎにはなるだろうし」
相変わらずな態度だけど、実際に馬鹿みたいに強いアリシアは自信満々だ。
この人やシオンよりも強い人ってリヴァリタにいるのかイマイチ想像できない。
エルロン・ガーデンには居なかったけど、三大ギルドと呼ばれているところのトップの人たちは国の英雄って言われていたから、もしかしたら負けないくらい凄い人が居たのかもしれない。
「ギャハハハハ、エルロン家のお嬢さんじゃないか~~。そして王立ギルドの二番手さん、お久しぶりだね~~」
「「――っ!?」」
嫌な笑い声が後ろからしたので、私は咄嗟に声の方角に振り向いた。
そ、そんな。なんで、こいつがまだ生きているんだよ……。
「この前……自爆した変な仮面の男じゃない。へぇ、双子だったとは知らなかったわ」
「あー、なんだ。双子か」
そりゃそうだ。自爆魔術をつかって生き延びられるはずがないもんね。
私の顔、なんで知っていたのか分からないけど。
「双子か〜〜。まー、命を何個か持っているだけなんだけど、その表現でも殆ど間違ってないからいいよ〜〜。ギャハハハハ」
「命を何個も……?」
「不快な笑い声ね。棄権したくなかったら口を閉じなさい」
「まぁまぁ、そう言わないでくれよ〜〜。さっき、各国のVIPたちが見守る中で行われた公正な抽選で組み合わせが決まったんだ〜〜。どうやら僕とリアナくんが二回戦でぶつかる事になったからね〜〜。その挨拶に来たまでさ〜〜」
あー、組み合わせ決まったんだ。
それで、この人と私が二回戦でぶつかるのか……。
てか、この仮面の男って一回戦は必ず勝てる気でいるんだな。
私はそんな自信なんてないのに――。
「ムカつく男ね。いいこと、リアナ。あんな奴に負けるのだけは許さないからね」
「う、うん。頑張って――」
「お待ちください……!!」
「「――っ!?」」
アリシアに負けるなと念を押されたと思ったら、私と似てるけど凛々しくて真面目そうな声が響く。
良かった。特訓のしすぎで倒れたとかじゃなくて……。
「仮面の男、いえ……ジルノーガ・オルコット! あなたが二回戦に進出することはありません! 何故なら一回戦でわたくしに負けるからです!」
ティナが帰ってきた。
その目には今までにない程の自信を漲らせ――。
どこか凄みが増したようなオーラを纏いながら。
まもなく、神棒聖戦の儀が始まる。対戦カードは既に決まっているみたいだ――。
組み合わせが決まって、ティナは仮面の男――ジルノーガと戦うことになりました。
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