神に捧げる聖戦の儀式
「Sランカー、諸君。よくぞ集まってくれた。早速、本題に入らせてもらう」
オウルストラ三世は挨拶もそこそこに今回……私たちが集められた意味を説明するらしい。
うーん。何かすごい緊迫感みたいなのを出しているけど、こういうのって苦手だなぁ。
「先日、リヴァリタ王国の宮廷ギルドとひと悶着あったのは知っているな? エルヴィン、リアナ、そして、シオンとアリシアは当事者だから当然として」
あー、あの戦いのことか。
父であるバルバトス・エルロンが仮面の男と関所の近くで大暴れした――。
あれが今回の話に繋がるってこと? そういえば、リヴァリタとの国交ってどうなったんだっけ。
「リヴァリタ王国はあの一件を重く受け止め、慰謝料として50億ラルドを支払い、正式に謝罪した」
へぇ、謝ったんだ。
なんか色々と企んでる風だったのに。意外だなぁ。
それなら、こっちの国で暴れなきゃ良かったのに。大体、あんな薬持ってるなら私たちなんて要らないじゃん。
「だが、問題はその謝罪の後だ。リヴァリタ王国はエルトナ王国との親睦を深めるために『神捧聖戦の儀』を両国でしないかと誘ってきおった」
「し、しんぽう、せーせん?」
「神に捧げる聖戦の儀式――国力などを競うのに戦争の代わりに神聖な闘技場で両国の腕利き共を戦わせるのさ。トーナメント戦をやってな」
何だその、野蛮な儀式。
戦争よりはそりゃあ、平和的なんだろうけど、リヴァリタ王国はそんなのをして何がしたいんだ?
意味がわからないよ……。
「リヴァリタは近隣諸国に牽制がしたいのだろうな。エルトナ王立ギルドを凌ぐ力を持つ宮廷ギルドを設立したということを大陸全土にアピールしたいのだ!」
「神捧聖戦の儀は各国のVIPも招待して見世物にするのが通例だったか」
「何よそれ!? あたしたちをダシに使おうっての!?」
「リヴァリタにイケメンが居ればアタシは構わないけどぉ」
我が故郷ながらリヴァリタ王国は図々しい。
なんでエルトナ王国がそんなのに付き合わなきゃいけないんだ。
私たちだって暇じゃないし。そんなのをするメリットがないじゃないか。
「だが断ったら、俺らが逃げたことになる」
「「――っ!?」」
エルヴィンが逃げたとかいう言葉を口にすると周囲の空気が凍りつく。
別に逃げたっていいじゃん。そもそも、戦うメリットがないんだし。
「リヴァリタもそれを狙っての挑発だろう。先日の事件でリヴァリタ王国の宮廷ギルドの強さを知ったエルトナは勝負から逃げたというストーリーを喧伝する準備が出来とると言うわけだ。50億払ったのも、失敗前提でバルバトスを踊らせたのも、全ては計算の内――」
うわぁ……。そんなことを宣伝するために、あんなことやったの?
踊ってしまったバルバトスは馬鹿だけど、やらせた側はもっと馬鹿じゃないか。
そんなに強さをアピールすることって大事なんだ……。
「面子を守りたかったら、勝負に応じろとな……。ふうむ。老体には堪えるが、仕方あるまいのう」
「ゼノン爺さん、無理すんなや。久しぶりに全力で暴れたいと思ってたところだ。俺に任せな」
「トーナメント戦ってことは……君らともぶつかるってことだろ? 新魔法の実験台には丁度いい」
「あら、あたしと戦ったら一瞬で終わっちゃうから披露できないかもしれないわよ。骨は拾ってあげるけど」
ゼノン、エルヴィン、レイス、アリシア……割とやる気なの?
よく考えてみれば、この人たち自分の強さに絶対的な自信を持ってる人だった。
「リアナちゃんはどーなの? エルヴィンちゃんとかと戦いたいって思わないの?」
「んっ? 全然思わないよ」
「あらー、残念ねぇ。面白そうだと思ったのに」
エルヴィンと私が戦う?
そんなこと考えたこともなかった。
だったら、尚更出たくないんだけど……。
「神捧聖戦の儀はリヴァリタ宮廷ギルドとの総力戦になる。Sランカーは全員参加。両国共に16人ずつであるからして、近日中にAランク以下の有望株にも声をかける」
「じゃあティナとか……」
「まー、間違いなく選ばれるだろうな。最速の魔法士と呼ばれた程の術式発動速度は俺らも認めてるし」
あー、やっぱりティナも出そうなんだ。
魔物とかと戦うのはいいんだけど、何の恨みもない人と戦うのはなぁ。
バルバトスは別として、本気で戦えるのかイマイチ不安だよ。
でも、私がだらしなくてエルトナ王国に迷惑がかかるのは嫌だから――頑張らなきゃ……。
どうしても、トーナメント戦を書いてみたくて、ここに入れちゃいました!
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