精霊魔術士、復帰する
「はぁ、はぁ、まさか討伐難易度★★★★の超危険指定生物、オカメインコザウルスがこんなに大量発生していたとは――」
「も、もう駄目です! 諦めましょう!」
「通信魔法で王立ギルドに救援要請を出した。あと、一時間もすれば――!」
「うらぁっ――!」
「「――っ!?」」
あー、やっと復帰できたよ。なんか鳥なのかトカゲなのか分からない生き物をぶん殴ったけど大丈夫かな……?
うわっ……、思ったよりもいっぱい居るじゃん。トリトカゲ……。
とりあえず、全部殴っちゃえばオッケーなのかな? よーし、行くぞー!
「 真・精霊強化術ッッッ!!」
「お、おい! あの女の子、たった一人であの超危険指定生物の群れに突撃するつもりか!?」
「せ、先輩、あの子のこと知らないんですか!? 有名人じゃないですか!」
全部で十体か。右手に魔力を集中して――。
一気にぶっ飛ばしてやるからね。
あの戦いの後、エルヴィン曰く私の身体に蓄積出来る魔力の許容量が結構増えたらしいから――。
拳に宿る威力も上がってるんだってさ。
「うらららららららららら―――ッッッ!! うらぁ!!」
「「ぐぼぁっ――」」
十体のトリトカゲは身体に大きな穴を開けて絶命する。
うん。絶好調だね。最近は寝ながらマナブーストを使えるくらいまで慣れたし、マナバーストの体への負担も随分と減ったみたいだ。
「オカメインコザウルスが一瞬で死滅した……。信じられん……」
「リアナ・アル・エルロン――王立ギルドのSランク。エルトナ王国の誇る英雄の一人です……! カッコいい……」
依頼内容はこいつらの殲滅だったよね。
気合を入れて出てきたけど、何か忘れていないか不安だよ……。
「お姉様〜! リアナお姉様……!」
「あ、ティナ。ねぇねぇ、依頼内容ってさ。あのトリトカゲを倒すだけだっけ?」
「お姉様ったら、何も聞いていないではありませんか。倒すのが主目的ではありません。あちらの方々を救うことが目的ですの」
あー、そうだった。そうだった。
王立ギルドに救援要請があったから、私たちが出ることになったんだった。
やっぱり、私だけじゃまだダメダメだなぁ……。
「久しぶりの依頼ご苦労さん。随分と派手に暴れたらしいじゃないか」
「そ、そうかな? いつもよりも力が出たから手加減が難しかったのかも」
「そっか、そっか。言っとくが精霊憑依はなるべく使うなよ。お前の魔力許容量が上がったとはいえ、まだまだ負担が大きい技だからな」
エルヴィンは私にエレメンタルコネクトはあまり使わないようにと忠告する。
まー、あのあとオーバーヒートしてしまったし、もしかしたら死んじゃうかもしれなかったからなー。
注意は必要だよね。うん……。
「お姉様とエルヴィン様にお手紙が届いていましたよ。エルトナ王室からみたいですが――」
「エルトナ王室……?」
「てことは、緊急招集ってことか。俺とリアナの二人に……」
帰ってきて早々に陛下からの緊急招集。
なんだろう。今までの緊急招集は全部最高危険指定生物と戦う感じのやつだったけど……。
と、いうことで、翌日の朝――私とエルヴィンはエルトナ王宮に向かった――。
◆ ◆ ◆
「ええーっと、レイスにゼノンにアリシア……そしてシオンまで」
「見事にSランカーが全員集合してんのな。こんなことは滅多にないんだけどなぁ」
王立ギルドのSランクギルド員が全員、会議室に集合していた。
エルヴィン曰く、Sランカーが勢揃いすることは滅多にないらしい。
確かに、これだけのメンバーを集めて何をさせようっていうのだろう。
これまでも危険なことだらけだったけど、もっと危ないことなのかな?
「まったく、陛下もあたしたち全員を揃えるなんて何を考えてるのかしら」
「あら、アリシアちゃん。プリプリ怒らなくても良いじゃない。こういうのって同窓会みたいで楽しくないかしらぁ?」
アリシアは不満げな顔をして、シオンは楽しそうにそんな彼女を眺めている。
ていうか、大抵のことってこの二人が揃えば解決しちゃうんじゃ……。
「こりゃ、強い魔物を倒せって依頼じゃあ無さそうだな」
「お主の言うとおり、その類の依頼にシオン殿とアリシア殿に加えてワシらを呼び出しはしないだろうからのう」
「頭数がいる依頼なんだろうね。しかも手練が必要な……」
あー、そういうことか。
人数がどうしてもいるから、私らも集められたってことか。
うーん。ますます分からないよ――。
「国王陛下がいらっしゃった。わかっていると思うが粗相のないようにな」
何だろう……って考えていたら、国王陛下――オウルストラ三世が私たちの前に現れた――。
ここから第三章が開始します。
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