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【7/24】穢れた血だと追放された魔力無限の精霊魔術士【コミックス第4巻発売】  作者: 冬月光輝
第2章『精霊魔術士の伝説再び』

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精霊憑依《エレメンタルコネクト》

(あぢ)っ! 熱ぃぃぃぃぃぃっ!! ば、バカなぁ! 超圧縮した魔法士百人分の魔力で防御したワシの身体がァァァァ! がふっ……!!」


 全身が火だるまになりながら、全力疾走するバルバトス。

 精霊憑依(エレメンタルコネクト)はマナバースト状態で一定以上の水準の量の魔力を体内に凝縮したときのみ使える術だ。

 自らの魔力に精霊自体の力を加えて属性攻撃をするという伝説の精霊魔術士のみが扱えたという高等技術。

 

 私はそもそも一番難しい多大な魔力の吸収という点は悪魔の刻印によってクリアしていた。

 だけど、バルバトスの言うとおり私の身体の中に溜めることが出来る魔力量そのものが足りなくて使うことが出来なかった。


 ――自らの魔力によって寿命を縮める覚悟が無かったら。


「そう、私には覚悟が足らなかったんだ……」


「覚悟だとぉ!? 落ちこぼれが棚ぼたで力に目覚めただけのクセにいっちょ前の口を利くなァァァァ!! 最上級獄炎魔術(エクストリームフレア)ッッッッ!!」


 バルバトスは吐血しながらも両手をバチンと合わせて魔力を凝縮して全てを灰に帰すような強力な火炎魔法を放つ。

 さっき私とティナに放った奴よりも数段威力は上のように見えるけど――


精霊憑依(エレメンタルコネクト)岩巨人の拳(タイプ・ノーム)


 地面を隆起させて自分の両腕にドンドンそれをくっつけて巨大な岩の腕を作る。

 ゴーレムと呼ばれる岩の巨人のような剛腕を私は自在に操りバルバトスの火炎魔法を掴んで握り潰した。


「そ、そ、しょんなバナナァァァァァ!!」


 余程、自分の魔法に自信があったのか……バルバトスは鼻水を流しながら、口をあんぐり開けてヘナヘナと尻もちをついて絶叫する。

 全身が痛すぎて、もう感覚が無くなってきてるけどようやく追い詰めることが出来たぞ。


「はぁ、はぁ……、バルバトス! 降参しろ! 私の勝ちだ!!」


 私はバルバトスに降参を促す。

 見たところ、あいつにはもう打つ手が残ってないだろう。

 じゃないと、あんな全てが終わったようなリアクション取らないし。


「ワシに降参しろ……だと? もう、破滅しか残っとらんワシに降参だと? 負けたら全てを失うのだ! こんなところで負けとれん!」


 バルバトスは何を思ったのか、先程の丸薬をもう一つ取り出した。

 あ、あいつ……何を考えているんだ……?


「こ、これさえ飲めばワシに魔法士200人分の力が宿る。そうなれば、もう怖い者はおらん! さ、最強に成れる! そ、そう最強に……!」


 嘘でしょ? あの薬の2個目を飲むつもりなの!?

 確かに今までの2倍の火力を出されたら精霊憑依(エレメンタルコネクト)でも勝てないかもしれない。


「やめなさい! それを飲んだら自分がどうなるのか理解してますの!? 確実に魔力に耐えられずに死にますわよ」


「ふはははははっ! ゲホッ、ゲホッ! 甘いことを言う! お前は昔っから甘いことをいう娘だったな! 確実な破滅と天秤にかけて、座して死すなど――このバルバトス・エルロンは考えたこともないわァァァァ!! ガリッ!!」

 

 バルバトスは躊躇いなく2つ目の丸薬を飲み込む。

 ま、マジでこの人……自分が死ぬことも厭わないのか。

 私も寿命を賭けて力を出してるから人のことは言えないけど。

 何か腹立つなぁ。初めて父娘で一致した結論が命懸けで勝ちを取りに行くことなんて――。


「ぐぎゃあああああああっ! がああああああっ!!」


 丸薬を飲んで直ぐに絶叫しながら全身から血を吹き出した。

 やっぱり負荷は私の身体の比じゃないみたいだ。

 どう考えても変だもん。あの状態――。


「いいよ。バルバトス……全部終わらせよう。私たちの歪み合いとか、全部ぶっ壊して終わらせよう」


「な、生意気を言いよるわい! 二十億など最早どうでも良い! 気に入らん! お前の存在が! お前がヘラヘラ笑っている世界がワシは気に入らん!」


 私とバルバトスは両腕に魔力を溜める。

 ノームのおかげで大きくなったこの両腕には今まで以上に多くの魔力を凝縮することが出来た。


超精霊魔力砲(マナブラスト)ッッッ!」

大魔力圧縮砲(ギガブラスト)ッッッ!」


 私とバルバトスはお互いに自分のありったけの魔力を込めて最後の勝負に挑む。

 魔力の塊同士がぶつかり合うと周囲の空間が歪み、轟音が鳴り響き、大陸中が揺れているんじゃないかって錯覚するくらいの激震が走った。

 

 ――それは意地の張り合いなのかもしれない。

 私とバルバトスの大技は拮抗して押し合いになっている。

 うぐぐ……、若干バルバトスの魔力の方が上なのか私ってば押されてない?


 腕に……、全然力が入らなくなってきた。

 もう、地面に倒れてしまいたい。


 あれ……? どうして、私……こんなにも頑張ってるんだっけ?


 分からなくなってきた。

 身体が冷たいのか熱いのかそういうのも全部まとめて……。


「リアナぁぁぁぁ! 負けんじゃないぞ!」

「え、エルヴィン……?」


 ああ、そうだった。

 私が頑張るとエルヴィンが喜ぶんだ。

 まったく、変な人だよね。私よりも喜ぶんだもん。


 自分の手柄みたいにさ――


「うらぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!! 私は絶対に負けないんだからァァァァァァ!!!」


 腕が引き千切れても良いってくらい私は全身の力を腕に集中する。

 目が見えなくなってきた。

 音も聞こえなくなってきた。

 

 だけど、絶対に負けないって意地だけはある。


「うらぁぁぁぁぁぁぁぁ!! いっけぇぇぇぇぇ!!!」

「ば、ば、バカなァァァァァァァァ!!」


 辛うじて、バルバトスが何か叫んでるっていうのだけ認識した私はその場に倒れた――。


前回のあとがきで次回でバルバトス戦は決着って書いたけど書ききれませんでした。すみません。

とはいえ、ほぼ決着というかこういう引きの方が良いかなって勝手に思っただけなのでご容赦を。


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