大魔法士バルバトス
「聖女に精霊魔術士……随分と偉くなったもんだわい。だが、お前たちがワシに勝つことは不可能だ! 痛い目に遭うのが嫌なら、ワシと共にリヴァリタに戻ることだな!」
何かいつになく自信満々なバルバトス。
いや、確かにこの人は名のある魔法士だったけどレイスやアリシアとかの方が数段強いしなー。
正直言って、精霊魔術士になって、修行を積んだ今の私ならそんなに怖くないと思ってる。
「くっくっくっ、この薬を飲めばワシは――」
「飲ませなきゃいいんでしょ? うらぁっ!」
「ぐふっ……! 痛あああああああっ……!!」
何か強くなる薬みたいなのを見せびらかしてきたので、飲む前にバルバトスの腹をぶん殴ってやる。
それさえ、飲まなきゃ強くならないってことだもんね。
バルバトスは殴られた腹を押さえながら蹲った。よし、今のうちにこの人を拘束して……。
「流石、リアナお姉様。お約束なんてなんのそのですわ! ……わたくしも負けてられません。聖光の刃ッ!」
「ひぃぃぃぃぃぃ~~! 実の父親に刃物を飛ばすなぁぁぁぁ! 危ないだろうがぁぁぁぁ!」
ティナは割と容赦なく光の刃を投げつけて、バルバトスはのたうち回りながらそれを何とか躱していた。
確かに凄いかも。私が殴ったときも後ろにジャンプして衝撃を殺していたし、何やかんや言って生き延びる力が強い。
こっちが殺す気が無いことも知ってるんだろうな……。
「リアナお姉様! 今ですわ!」
「うん! わかった!」
ティナが関所の外に出ていったバルバトスの逃げ道を聖光の大剣で塞いで、私が追い詰める。
悪いけど、今度は後ろに逃さないからね――!
「ひぃぃぃぃぃぃ! 来るなぁぁぁぁ!!」
「うらぁぁぁぁっ!」
逃げ道が塞がれて涙目になっているバルバトスに私は拳を振るう。
バルバトスは手を前に出して防御姿勢をとった。
「な~んちゃって! 光宝玉術!!」
「――っ!?」
まるで太陽が目の前で光り輝くように……光の玉がバルバトスの手元から出現して私の目を眩ませる。
ま、眩しい……。この人、何て狡い手を使うんだ……。
「今だ! ガリッ……! ううううっ! あううううううッッッッッッ! キタキタキタキターーーーーッッッ! キターーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!」
「――うっ!?」
バルバトスから噴出された凄まじい突風により私は数メートル吹き飛ばされる。
な、何が起きたの? 多分、怪しい薬ってのを飲んだんだろうけど……明らかにさっきまでとプレッシャーが違う。
あれは、本当にバルバトス・エルロンなの!?
「くっくっく、ふははははははっ! これぞ、ワシの真の力! そう、今のワシは新しいバルバトス! 人呼んで、大魔法士バルバトス!!」
「すーぱーバルバトス!? 死ぬほどダサいよ!」
鬱陶しい長髪が逆立って、高笑いするバルバトス。
何がスーパーバルバトスだよ。なんか、生鮮食品とか色んなもん売ってそうな店の名前かよ。
「うるさいっ! 小娘! ぐらぁああああッッッ!!」
「えっ……? がふっ――!!」
う、うそでしょ? 精霊強化術を使ってるのに、バルバトスの蹴りを腹に受けて私は防御を貫かれて吹き飛ばされた。
な、なんで、この人……まるでマナブーストを使ってるみたいに身体強化されているの?
「おー、よく飛んだ、飛んだ」
「お、お姉様! 聖光の刃ッ!」
私が吹き飛ばされて倒れているのを見て、ティナは激怒して光の刃を幾重にも出現して放つ。
いや、バルバトス死んじゃいそうだけど……。
「ヌルいわぁああああッ! 大火球連弾術ッ!!」
巨大な火球が空から降り注ぎ、ティナの刃を全て消し去る。
そして、更にこの周辺一帯を火の海に変えた。
や、やばい。この人、本当にめちゃくちゃ強くなってる……。
「真・精霊強化術ッ! うらぁぁぁぁっ!!」
「ぬぐっ! ぐはっ……!」
リスクもあるけど、マナバーストで更に身体能力を高めた私はバルバトスをぶん殴る。
しょうがない。大怪我させちゃうかもだけど、圧倒的な火力で押し切るしかない。
「あぐぅぅぅぅっ……! ごふっ……、やはりこの程度」
「まだ喋れるの……?」
最高危険指定生物すら怯ませる私のマナバースト。
バルバトスはダメージはあるみたいだけど、意識を保ってニヤリと笑った。
「リアナよ! お前はまだまだ子供だ! それがお前の弱点なのだ! お前では今の大魔法士バルバトスには絶対に勝てん!」
スーパーバルバトスのネーミングセンスにはうんざりしてるけど、こいつ本当に不気味なくらい強い。
わ、私の弱点……? 思い当たる節が多すぎるよ――。
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