敵を騙すには、まず味方から
私は事情聴取と言われて拘束され、王宮の地下牢に入れられることとなった。
とほほ、まさか牢屋に入れられてしまうとは……我ながら情けないよ。
でも、父が悪いことをしてる様子が目撃されたんじゃ疑われても仕方ないよね。
あーあ、私だけじゃなくてティナまで捕まるなんて、責任感じちゃうなー。
「あら、お姉様。遅かったですわね。やはり、超難関依頼は大変だったみたいですね。紅茶、飲みます……?」
「えっ? めっちゃ、くつろいでる?」
地下牢の中に大きなベッドが置かれており、しかも牢屋に鍵はかかっていなかった。
いやいやいやいや、これどんな状況? ティナは美味そうにアフターヌーンティーを楽しんでるんだけど……。
「あれ? リアナお姉様、もしや何も聞いておりませんの? わたくしたちは敢えて敵の目を欺くために地下牢に閉じ込められてるってことを」
「ええーーーっ! そ、そんなの全然聞いてないよー!」
ティナは私たちが捕まったのは悪い人たちの目を欺くためとか言ってきた。
何でティナにだけ言って私には全然言ってくれなかったんだろう。
うーん。納得いかなーい……!
「よっ! リアナ! どうして、自分には牢獄に閉じ込められるお芝居を黙っていたのかって顔してんな!」
「エルヴィン!」
ティナと会話していたら、エルヴィンが地下に下りてきて、私に話しかけてきた。
もしかして、このお芝居みたいなのってエルヴィンが一枚噛んでるのかな……。
私はエルヴィンの目をジィーっと眺める。
「あのさ、ティナには事情を話させて私には話さないようにしたのって、エルヴィンの指示?」
「ピンポーン、大正解! リアナに演技なんて出来るはずないからなー。絶対に不自然な感じになるだろうし」
「ううっ……、そんなことないもん。出来るもん。多分……」
やっぱりエルヴィンが私には黙っとくようにって言ったんじゃないか。
私が演技が下手そうって偏見じゃん。異議を申し立てたいんだけど。
もしかしたら、女優の才能があるかもだし。
まぁ、日頃の私を見ていてそう判断されても仕方ないんだけどさ。
「リアナと妹ちゃんが捕まって、強制送還にでもなったら絶対にリヴァリタ宮廷ギルドが動くと思うんだ。恐らく主犯の連中――お前たちの父親であるバルバトスたちは無理矢理でも関所を突破しようとする」
「なるほど、そこを狙い撃つということですわね」
「正解~~! さっすが、妹ちゃんだ。鋭いな」
何かいつものことだけど、エルヴィンとティナが私を置いて行って話をしてる。
えーーっと、私たちが強制送還されるっていう嘘を流して、あの人――バルバトス・エルロンを誘い出すってことで合ってるかな?
そんな成り行きで私とティナはしばらくの間……のんびりとした監獄ライフを過ごすこととなった。
◆ ◆ ◆
「父さん、いやバルバトス・エルロン! やっぱり現れたな!」
「あなたとリヴァリタ宮廷ギルドの下手な工作もここまでですわ!」
「ひぃぃぃぃぃ!! どーしてぇ!?」
エルヴィンの作戦が大当たりで、バルバトスとシルクハットを被った仮面の男が関所を襲おうとしていた。
バルバトスは動揺しまくっていて、仮面の男は不気味な感じで佇んでいる。
とにかく、この二人をとっ捕まえれば良いんでしょ。
「精霊強化術ッ!」
「へぇ〜〜。そいつが噂のマナブーストか〜〜。いいねぇ。身体能力と防御力を同時に引き上げることが出来る近距離戦の万能魔法〜〜。惚れ惚れするね〜〜。是非とも宮廷ギルドに欲しい人材だ〜〜」
「ヒエッ……! い、いつの間に……!?」
目の前に仮面の男の顔が出てきて私はビックリして、つい後ろに引き下がってしまった。
な、何か手を出したら嫌な予感がしたから。
この人、只者じゃない。エルヴィンやアリシアとも違う不気味な感じがする。
「あれれ〜〜? 思った以上に勘が良いじゃない〜〜。ギャハハハハ、攻撃してきたら此れをお見舞いしてあげたのにな〜〜」
「ゆ、床がいつの間に――!?」
気が付くと仮面の男の周りの床がドロドロに溶けていた。
いや、それだけじゃない。天井も穴が空いて溶けてこぼれ落ちている。
「精霊魔術とはちょっと違うけど〜〜。僕もね、似たようなのが使えるんだよね〜〜」
「悪魔との契約……! 禁術と呼ばれている外法を使ったな。自分の魂を売って、悪魔から魔力を借り受ける荒業だ」
「さっすが、エルトナの誇る“神眼使い”〜〜。何でもお見通しなんだね〜〜。僕の外道強化術は両手の届く範囲内を全て破壊する〜〜」
何それ、マナブーストを禍々しくした感じのネーミングのやつ。
悪魔との契約……? この仮面の男……本当に怖いよ。
「リアナ……! このヘラヘラした男はオレに任せな。お前たちは父親と決着をつけろ! そのために来たんだろ?」
「ふーん。“神眼使い”くんが僕の相手か〜〜。まぁ良いけど〜〜。なら、バルバトスくん。悪いけど、その薬をさっさと飲んでくれるかな?」
エルヴィンは仮面の男と戦うと言い出して、仮面の男はバルバトスによく分からないけど何かの薬を飲むように促す。
エルヴィンがあっちと戦うなら、助かるよ。
「バルバトス! ここで、お前との決着をつけてやる! この国に迷惑をかけたことは許さないぞ!」
「リアナお姉様に同じく……ですわ!」
「このバカ娘共! 躾が必要みたいだな! この薬さえあればワシは無敵だ!!」
父は何か変な薬を見せびらかしながら、私たちに殺意を向けた。
私はこれから、自分の人生に決着をつける為に本気で父と戦う――!
◆重大発表◆
なんと、拙作――「穢れた血だと追放された魔力無限の精霊魔術士」がこの度!!
【書籍化】することが決定しましたーーーー!!
やったー! 嬉しい〜〜(≧▽≦)
これも全部、応援してくれた読者様のおかげだと思っています!
レーベルなど詳しいことはまだ言えませんが、お許しが出た際には活動報告などで発表が出来ればと思います。
もちろん、このままでは売り物になるクオリティとは程遠いと思いますので、ブラッシュアップして書籍版は更に楽しめる作品にしていく所存です。
と、いうことで、第二章もクライマックスが近づいておりますが、【書籍化おめでとう】と思って下さった方は
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