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【7/24】穢れた血だと追放された魔力無限の精霊魔術士【コミックス第4巻発売】  作者: 冬月光輝
第2章『精霊魔術士の伝説再び』

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魔剣士アリシア

 王立ギルドからの引き抜きとか、依頼を行っているギルド員への妨害工作とか、そんなことが話題になってから一週間くらい経った。

 

 国王陛下は外からのリヴァリタ方向からの移民の制限を一時的に開始する。

 妨害工作や引き抜きを行っている連中がリヴァリタからやって来ていることは明白だからだ。

 しかし、引き抜きはともかく……妨害工作をしてる連中は一向に尻尾を見せない。


 エルトナ王国も調査員を増やして調べているのだが――痕跡を一切残さないのだ……。


「こういう時だからな。注意してくれよ。リヴァリタ宮廷ギルドがお前らの勧誘を諦めたとは思えないからな」


「承知しました。まぁ、わたくしの仕事の妨害工作などしようものなら、逆に返り討ちにして差し上げますが……。――それよりもお姉様の依頼が心配です」


 ということで、エルヴィンは新たな依頼に向かう私たちに注意喚起を促す。

 ティナは自信満々という表情で妨害などには屈しないとしながら、心配そうな目で私を見る。

 いや、そうなんだよね。まさか、こんな短期間にまた……。


「あはは、また緊急招集……。ってことは――」


「超高難度依頼ってことだ。オレは別件で仕事があるし、妹ちゃんも先客がいるからな。まぁ、十分に気を付けてくれ」


 国王陛下にまた呼ばれてしまった。

 ってことはS級が複数人関わってくる案件。

 まぁ、シオンだけは別格らしく一人で動くことが多いらしいけど……。


 今回は誰だろうな? またレイスって可能性もあるけど……。

 今日はティナの力を借りることは出来ないし、自分の力で頑張らなくっちゃ……。



 そんな話をしていると約束の時間が近付いていたので、私はティナに支度を手伝ってもらって、前回と同様に王宮の会議室を目指した――。

 

 誰か先に来てるのかな……。


「あら、小さな精霊魔術士さん。あんたも呼ばれたの? 陛下も心配性よね。最高危険指定生物だろうと、あたしだけで十分なのに」


「えっと、よろしく。アリシア……」


 年間報奨金(アニューアルリワード)第二位、“魔剣士”アリシアが先に席にちょこんと座っていた。

 私のことを小さな精霊魔術士って、アリシアの方が小さいじゃん……。


「でも、あんたの話は聞いてるわ。まぁまぁ活躍してたらしいじゃない。この前も最高危険指定生物を殺ったんでしょ? あたしとパーティーを組む最低限の資格はあるって認めてあげる」


「う、うん。ありがとう。アリシアは凄い人って聞いてるから、頼りにしてるよ」


「なかなか殊勝な態度ね。ま、あんたは今回は楽できると思うわ。本当のSランカーの実力をよく見てなさい」


 アリシアは私の前にSランクスタートをしたって聞いている。

 ハーフエルフで魔法と剣術の天才。人間の限界の何歩も先を行くという――。

 こんなにも凄い人が一緒なら、今回の依頼は安心していられるなぁ。


「アリシア・マーセルシュタイン、リアナ・アル・エルロン、両名ともよく集まってくれた」


「……アモス宰相じゃない。陛下の緊急招集じゃなかったの?」


「陛下は例の引き抜きと妨害対策で多忙なのだ。今日は私が陛下の代理できた」


 眼帯をした白髪混じりの壮年の男性はこの国の宰相であるアモスだ。

 今日は彼がオウルストラ三世の代わりに依頼を私たちに伝えるらしい。


 やっぱり、陛下もアレには頭を悩ませているんだね……。


「今回の依頼も超高難易度依頼だ。最高危険指定生物になる恐れがある、通称“山喰い”ジャイアントヒュドラの幼体を五体程だが……北東の山脈にて発見した。君たちは至急、ジャイアントヒュドラの幼体を仕留めてくれ。成体になる前に手を打たねば危険は目に見えている」


 あー、良かった。ジャイアントヒュドラのことは私でも知ってる。

 成体は山を飲み込むほどの怪物だということは。

 でも、相手は幼体だ。巨大な怪物を相手にしなくて良いというのはありがたい。

 それにしても、また北東の山脈か。あそこってこんな頻度で化物が誕生してるの……。


「各自、一人ずつパーティーに人員を入れることを許可するが、くれぐれも気を付けてくれよ」


「そんなのあたしたちには必要がないわ。時間が惜しい。早く行くわよ」

「えっ? ちょ、ちょっと。あ、アリシア……!」


 レイスですら私たちが仲間を集めるのを待ってくれたのに、アリシアは一向に待ってくれなかった。

 自分の認めていない人間と徒党を組むつもりはないとか言ってたけど、本当だったんだ……。


 こうして、私たちはたった二人で北東の山脈攻略へと赴いたのだ。

 この人数で本当に大丈夫なのかな~~?



 ◆ ◆ ◆



「魔剣――神焔ノ一閃(カミホムラノイッセン)!」

「グギャアアアアアアアッ――!」


 山かと見紛うくらいの巨大な五つ首の竜――ジャイアントヒュドラの幼体。前回デカいと思ってた沼地の帝王(カイザーヌメーバ)と同じくらいの大きさがある。

 いやいやいやいや、あれで幼体ってどれだけだよ。

 成体になったらどんなに巨体なるのか想像もつかない。


 それにしても、アリシアは凄い。剣術と魔法を同時に使って、威力を増幅させている。

 パワーも精霊強化術(マナブースト)を使った私と同じくらいだし……。これがハーフエルフの中でも超天才と言われている彼女の身体能力か……。


 山みたいにデカいジャイアントヒュドラの首を業火を纏った必殺剣で瞬く間に斬り落としてしまった。


「なるほど。こういう妨害をするって訳ね……」


「アリシア……? どしたの?」


「見てみなさい。これは魔物の成長を促す特殊な薬剤を注射した跡――。幼体にしては大きいと思ってたのよね」


「成長を促す注射――!?」


 二体目のジャイアントヒュドラの幼体を仕留めたアリシアはその身体に刺されていた極太の注射針を引き抜く。

 魔物の成長を促す薬剤を注射形跡って……そんなの刺したら――。


「「「グルアアアアアアア!!」」」


「ま、真・精霊強化術(マナバースト)ッ!!」


 山を喰らうぐらいデカい――通称“山喰い”ジャイアントヒュドラが三体。

 さっきのよりも二倍から三倍くらいのサイズの化物の登場に、私は思わず切り札(マナバースト)を使ってしまう。


「うらららららららららららッッッッ! 大隕石拳撃(グランメテオショット)ッッッッ!!」


 エルヴィンのアドバイスに従って、速攻で仕留めにかかる。

 真・精霊強化術(マナバースト)を使う時間を出来るだけ短くすれば身体に負担が少なくて済む。アブソリュートドラゴンの身体に穴を空けた時よりも更に強化された拳でジャイアントヒュドラの身体に風穴を開ける。

 あと、三体も居るんだし。急がなきゃ――。


「あら、中々やるじゃない。褒めてあげるわ」


「うぇっ!? もう倒したの? もっとデカイのが二体も居たのに……」


 何をしたのか分からないけど、真っ黒焦げになって全ての首が落とされていた二体のヒュドラ。

 エルヴィンが「アリシアとシオンは別格」って言ってたけど、こういうことだったのか――。

ようやくアリシアをまともに出すことが出来ました。

さて、依頼は完遂したと思われますが――。


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