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【7/24】穢れた血だと追放された魔力無限の精霊魔術士【コミックス第4巻発売】  作者: 冬月光輝
第2章『精霊魔術士の伝説再び』

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祝勝会

新年、あけましておめでとうございます!

今年も皆さんに楽しんでもらえるように頑張ります!

「はぁ……、はぁ……、わ、私、あの化物を倒したんだ……」


 エルヴィンの腕の中で私は沼地の帝王(カイザーヌメーバ)を倒せたことを知る。

 やっぱり信じられないなぁ。でも、神眼を使うエルヴィンがそう言うんだから間違いないんだろう。


「まったく、真・精霊強化術(マナバースト)に加えて超精霊魔力砲(マナブラスト)まで使うなんて。無茶しやがって」

「えへへ……、エルヴィンたちの為だったら無茶くらいするよ」

「……はぁ、大した奴だよ。お前さんは」


 髪をクシャっとされてちょっとイラッとしたけど、力が出ないから抵抗しない。

 思った以上に疲れたな。マナブラストで使った魔力は元通りになったような気はするけど、マナバーストの反動がエグい。

 全身が火傷したみたいに熱をもっており、身体中が針でチクチク刺されているみたいに痛かった。


「まったく、お姉様の身体の中……損傷が酷いことになっていますわ。ティナにお任せください。聖なる治癒術(セント・ヒール)……!」


「はぁ、気持ちいい……。何これ……、凄い治癒術じゃん」


 ティナは空間移動術式で私の目の前に移動してすぐさま治癒術を施す。

 いつの間に彼女は治癒術をマスターしていたのだろう。熱はともかく痛みはほとんど消えて楽になった。


「リアナお姉様、わたくしが聖女ということをお忘れですか? そもそも癒やしの術は聖女の最も得意とするところなのです」


「あー、そっか。私、今まで怪我したこと無かったから」


 よく考えたら、ずっと無傷で戦っていたんだ私。

 だから、今日の戦いは怖かったし消極的にもなった。

 自分の力に知らない内に慢心しててそれを上回る敵にビビってしまったから。エルヴィン、ごめんね。やっぱり私が悪いよ……。


「おいおい、それじゃオレも妹ちゃんに治してもらえばよかった。そういうことは先に言ってくれよ~」

「あら、これは失礼。仲のよろしいお友達の方が嬉しいのかと思いまして」

「まぁまぁ、エルヴィンさん。無事で良かったではないですか」

「おい、依頼は終わったんだ。さっさと帰るぞ。――僕は君たちにこれから御馳走せねばならんのだから。遅れると店の予約が出来なくなる」


 レイス、約束守ってくれる気満々なんだ。

 てか、今から祝勝会……? 凄いなぁ、精神的にタフだなぁ……。

 私はヘトヘトなのに、レイスもエルヴィンも涼しい顔してる。


 こうして、私は皆んなと一緒にエルトナ王国の王都に急いで戻った。

 そして、最高危険指定生物を五人で打ち破った話は瞬く間に王都どころか国中に広まることとなる――。



 ◆ ◆ ◆



「ここがレイスの行きつけの店? 思ってたより普通の酒場なんだね……。大衆的というか」

「ああ、ここはオレたちがギルドデビューした時からの行きつけなんだ」


 レイスの行きつけという酒場に着いた彼以外の四人。

 レイスは既に店の中にいるらしい。良かったぁ……堅苦しい店だったらマナーとかうるさいこと言われそうだし。


「では、入りましょうか。ボク、こういう打ち上げって初めてですから楽しみです」

「あー、ごめんね。普通にご飯食べるとかしかしてないもんね」

「レイス様の奢りということですし、精々財布を軽くして差し上げましょう」


 というような会話をしながら私たちはお店の中に入る。

 お店の名前は“バー・エレガンス”だって。変な名前……。  


「あらぁ、エルヴィンちゃん。お久しぶり~~。レイスちゃんが珍しく貸し切りにするって言うからびっくりしたわよ」


 うわぁ! すっごい美人さん。背がスラッと高くて、膝まで伸びているサラサラの金髪……、こんなに綺麗な人初めてみたかも。

 ちょっとだけ、声は酒焼けしているのかハスキーだけど。


「アタシのオススメで良いって言ってくれたから適当に作っといたわよ。まぁ、今日は珍しくモテてるじゃない。可愛らしい子たち、連れてきて。誰が彼女さんなの? 何を飲む?」


「はは、誰にしようかちょっと迷っちまってて。ええーっと、誰にしようかなぁ?」

「ただの同居人とその友人ですわ。私、アイスココアを頂きます」 

「じゃあ、ボクも同じものを頂きます」

「私は牛乳ちょうだい」


 マスターのお姉さんに私たちは注文をする。

 エルヴィンの彼女さんだって、本当に面白いなぁ。私がそんなはずないじゃん。

 よーし、今日も牛乳を飲むぞ。もっと身長を伸ばせばリーチも長くなるし、強くなれると思うから。

 私たちはマスターの作ってくれたご飯を御馳走になった。



「それにしても、本当にレイスちゃんがルーキーたちに奢りなんて珍しいわね~~」


「うるさいな。僕がケチな男みたいに言うな」


 あの仏頂面のレイスが嫌そうな顔をしながらも親しそうにマスターと話している。

 これは二人はただならぬ関係にありそうだ。


「あはは、レイスって、マスターのお姉さんと仲が良いんだね。彼女だったりするの?」


「ぶはっ……!」

「くっ……、君は何を言ってるんだ……」

  

 私はマスターとレイスが付き合っているのか聞いてみた。

 すると、エルヴィンは吹き出してレイスはムッとした顔をしている。

 なんか、変なこと言っちゃったのかな。私……。


「あのう、リアナお姉様。マスター、その……」 

「男の方だと思いますよ。喉仏がありますし……」

「ええーっ!! こんなに綺麗な人なのに!?」


「あらぁ、ありがと」


 マスターはティナとルーシーに男の人だと指摘されても否定せずにウィンクした。

 確かにちょっと声が低いと思ったんだけど。

 まさか男の人だったとは……。ティナとルーシーはよく分かったなぁ。

 

「でもぉ、こんなに可愛らしい子にお似合いのカップルって言われるんだったら。アタシたち、付き合っちゃう?」


 マスターはそんなことを言いながらレイスの腕にしがみつく。

 レイスは心底迷惑そうな顔をしてる……。

 これは、男女の関係はないにしても、仲はかなり良いんだな。昔から見知ってる感じだし。


「ったく、いい加減にしろ! 早く、酒を持ってこい! シオン!!」


「「――っ!?」」


 し、シオン……!? シオンって、年間報奨金(アニューアルリワード)、第一位の……?


「この前はごめんね〜〜。ちょっと、ケツカッチンで会いに行けなかったの。アタシったら、お店もやらなきゃいけないから大変なのよぉ」

 

 不敵に笑いながら再びウィンクするマスターもといシオン。

 いや、大金持ちなのに何で酒場なんてやってるの……?

シオンは男性にするか、女性にするか迷った結果、こうなりました。


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