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【7/24】穢れた血だと追放された魔力無限の精霊魔術士【コミックス第4巻発売】  作者: 冬月光輝
第2章『精霊魔術士の伝説再び』

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前哨戦

「お姉様! 上空に打ち上げて下さい!」

「オッケー! ティナ! 行っくよ~~~! うららららららららッ! うらぁッッッ!!」


 ギガントサイクロプスの六メートル以上ある巨体の腹をぶん殴り続けて、ティナのリクエスト通り上空に打ち上げた。


聖光の大剣ホーリージャッジメントッ!!」


 聖女特有の光系統の魔術の中でも最大級の威力を誇るティナの得意技“聖光の大剣ホーリージャッジメント”。

 天空から巨大な光の剣が猛スピードで落下して、敵を串刺しにするという一撃必殺だ。

 いいなぁ。ティナの技はいちいち格好良くて。

 私なんて、魔力渡してぶん殴るくらいしか出来ないもんなー。


「す、すごいです。リアナさんとティナさんの連携……」

「姉妹でしかも能力が噛み合ってるんだ。あの二人が組めば火力だけならエルトナ王立ギルドでもトップと言えるだろうなぁ」


 なるべくルーシーには召喚魔術を温存して欲しかったから、私はティナと頑張って討伐難易度★★★★の強敵――ギガントサイクロプスを早めに駆除する。

 前に白髪の巨人(シルバーオーガ)を討伐しに行った時に息を合わせて戦う方法とか練習しておいて良かったな。ティナの動きは何故か手に取るように分かるんだよね……。

 

「ま、まぁまぁやるじゃないか……。足を引っ張りそうじゃない事だけは認めてやる」

「はは、声震えてるぞ……。最上級魔術で黙らせたつもりだろうが、あいつらはオレが見つけた中で最高の素材だ。黙らせるにはちっと刺激が足りなかったのさ」

「震えてない! 失敬だな。エルヴィンくんは!」


 何かエルヴィンとレイスが言い争ってるし。

 あの二人は仲が良いのか悪いのか分からない。

 レイスにはティナが妙に対抗意識を燃やしていて、「あの男、目にもの見せてやりますわ」とか随分と怖い顔をしていた。


 それにしても、あの二人――


「悪いな、オレの神眼は強さも弱点も、未来までも見通せるんだ。せめて痛みを感じる前に殺してやる。仙舞影歩(せんぶえいほ)――」


 残像を残しながら、不規則でそれでいて素早い動きでエルヴィンは音もなくサイクロプスの頭をレイピアで貫いていく。

 あのレイピア、すっごく貴重で世界一硬い金属って言われているオリハルコンで作られてるんだって。しかもエルトナで一番の名工が作ったという一振りだとか。

 エルヴィンは殆ど魔法は使わないらしいんだけど、収納魔法だけは極めていて……そこからありとあらゆる武器を取り出して戦う。

 あっ! 今度はトンファーを使ってるぞ、次は薙刀だ。凄く器用だよね~~。


属性の四重奏(カルテット)――!!」


 レイスは四つの魔法陣を展開させて、土属性、水属性、炎属性、風属性の中級魔術を同時に発動させる。

 常に上から目線で嫌味っぽいけど、やっぱりこの人は凄い実力なんだねー。尊敬しなきゃ。



 ◆ ◆ ◆

 


「ふー、ようやく一段落ついたか」

「うん。こんなに沢山魔物と戦ったの初めてだよ~」

「ご、ごめんなさい。ボク、一回しか召喚魔術使わなかったから……」

「いえ、十分ですわ。ルーシー様のシルフの完全具象化は完璧なタイミングだったからこそ、一気に敵を殲滅することが出来たのです」


 五十体以上ものサイクロプスたちを殲滅した私たちは、討伐対象の沼地の帝王(カイザーヌメーバ)を探すために歩く。

 早く見つけないとな。また魔物の群れと遭遇すると面倒だし……。


 ティナとルーシーが打ち解けたのは嬉しいな。二人とも優しい子だし、仲良くなれるのは分かってたけど。


「ピクニック気分が抜けてないな。多少は戦闘力があることは認めているが、油断したら手足を持っていかれる。それが最高危険指定生物――」

「レイス、避けろぉぉぉ!!」


「「――っ!?」」


 それは一瞬の出来事だった。

 エルヴィンの声に反応したレイスは上空に飛び上がると、彼の背後の木々が目にも止まらぬ勢いで吹き出してきた灰色の水によってドロリと溶ける。

 ひぃぃっ……、気持ち悪い。あんなのが当たったら、いくら精霊強化術(マナブースト)で防御してもしきれないかもしれない。


「くっ! 足をやられた!!」


 飛び上がったのが遅かったからなのか、レイスの靴は溶けて、足はかろうじて原型を留めているが見事に爛れている。 

 彼は治癒術式を使うも損傷が酷くてすぐには回復するのは難しそうだ。


「これは、いるってことだよね?」

沼地の帝王(カイザーヌメーバ)……一体どこに!?」

「さっきの攻撃から方向と距離を割り出すと――そこだなっ!」


 エルヴィンの目は琥珀色の炎がメラメラと燃えており、いつの間にか取り出したボウガンを灰色の水が飛んで来た方向に向かって連射させる。


「ギニャアアアアアアッッ!!」


 耳を塞ぎたくなるような不気味な叫び声とともに、それは飛び出した。  

 いや、吹き出したと言ったほうが良いだろうか?

 

「あっ、あああ……、ね、ねぇ、エルヴィン。あ、あれ、もしかして……、い、生き物なの……」


 ――防衛本能。

 人に生まれたからには自然とそういうのが身に付いていると絵本で読んだ。

 震えが止まらない。逃げ出したい気持ちが一気に溢れ出る……。


 目の前の山が隠れたんだよ。ドロドロとして全てを溶かす灰色の液体を撒き散らす規格外の巨人によって――。


 あ、アブソリュートドラゴンの軽く三倍はあるじゃない……。

 あんなのどうやって倒せばいいの――。



次回は沼地の帝王との戦いです。

パーティー戦闘はこの人数くらいが限度だということが分かりました。


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