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【7/24】穢れた血だと追放された魔力無限の精霊魔術士【コミックス第4巻発売】  作者: 冬月光輝
第2章『精霊魔術士の伝説再び』

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エルロン姉妹

聖なる光刃(セント・スライサー)ッ――!」


「おおっ! 十本同時に発動した!」

「全く魔術を発動するタメがないとは――」


 歓声がコロシアムで木霊する――



「聖女ティナのギルドランクはAランクです。いやー、エルヴィンさん、どうしたんですか? 精霊魔術士の次はアルム教皇公認の聖女資格持ちなんて人材。こんなにも短期間に普通は集められませんよ」


「ま、まぁな。これは、別にオレがどうこうしたワケじゃないんだが」


「意見が割れたんですけどね~~。あまりにも術式の起動が早いのでSランクでも良いのでは、と。そこは慎重に協議した結果、まずはAランクで頑張ってもらうことにしました」


 ティナがエルトナ王立ギルドに入ってしまった……。

 父のやったことに本気で怒りを覚えてるらしい。

 エルロン・ガーデンなど潰れてしまえと過激なことを言っていて、エルトナで私と暮らすと言って聞かなかった。

 私が返事をどうしようか迷ってるとエルヴィンが目を輝かせる。目を輝かせるというのは文字通りの意味で、神眼を輝かせてティナの潜在能力を鑑定したらしい。


 そう。エルヴィンの仕事は優秀な人材の発掘。


 聖女にまでなる程の逸材で誰しもが天才だと認めていた彼女の能力を見逃すはずがない。


『そりゃあ、愛する姉のことが心配だよなぁ。分かるぞ、こんなオレみたいな奴のところに居候してたら、不安だろ? どうだい。妹ちゃんもエルトナ王立ギルドに入るっていうのは? そしたら、リアナと一緒に居れるだろ?』


 ティナを口説くにはこれだけで十分だった。


 二つ返事でギルド試験を受けることになったティナはその力を示し――

 見事にエルロン・ガーデンに居たときと同様にエルトナ王立ギルドでもAランクの資格を得ることに成功したのである。


「すごいなー、ティナの魔法はいつ見ても。早いし、威力も凄いし」

「エルヴィン様のお屋敷がパワースポットになっていましたので、かなり調子が良かっただけですわ。お姉様の魔力のおかげです」


 ティナの魔法は鮮やかの一言である。タメの時間が異様に短くて、瞬きする間に次から次へと術式が発動するのは見応えがある。

 彼女は謙遜しているけど、マナプラウスは使ってないし、エルヴィンの屋敷に一泊した程度でそんなに力が上がるとも思えない。


「確かに魔法の火力の上昇は感じたが、術式の発動時間の早さは完璧に才能だ。それだけでAランクは確定だよ。おめでとう」


「ありがとうございます。エルヴィン様、約束は守ってもらいますからね」


「んっ? ああ、リアナの部屋に住むって話か? 別に構わないが、客人用の空き室なんて沢山あるぞ。相部屋じゃなくても――」

「約束は守ってもらいますわよ」

「あ、ああ。オレのこと、本当に警戒してるってワケね。それに……、いや深くは聞かねーよ」


 そしてティナと相部屋になった。

 まぁ、部屋はめちゃめちゃ広いから良いんだけど、一人部屋でも良いってエルヴィンは言ってるのになー。

 そこはやっぱり遠慮しろってことか。ティナは私と違って図々しくないから。


「それにしても、ティナもSランク査定出そうだったのに、Aランクなんだね」


「まー、火力がちょっと足りなかったかな。魔法中心で戦うSランカーにはレイスがいるけど、あいつを基準にするとどうしても威力が劣る。Sランクは火力に重点を置いてる部分があるから」


「そうなんだ。ティナの魔法は威力も十分だと思うけど……」


「もちろん、申し分ねーよ。だが、最初からSランクって前例はお前とアリシアだけなんだ。やっぱりSランクスタート決めるには、規格外の超火力を見せないと」


 どうやら、Sランクスタートって何を置いても火力が一番のアピールポイントらしい。

 だから、不器用で芸がない私でも大穴を空けるだけでSランクになれたし、逆に色々と器用に出来るティナはAランクからになってしまうのだとか。

 うーん。なんか納得がいかないなー。ティナの方が絶対に凄いのに。


「まぁ、オレもレイスもAランクからSランクに上がったし、ティナも実績を積めば直ぐに上がってくるさ」


 そっか。エルヴィンもレイスも最初からSランクじゃなかったんだっけ。

 それを聞くと自分が何でSランクスタートなのか益々分からないけど、ティナもいずれは昇格するだろうと彼が言ったので安心する。


「リアナお姉様、わたくし、嬉しいのです。お姉様とパーティーを組んで依頼をこなすことが夢でしたから。これから、よろしくお願いしますわ」


「う、うん。よろしくね。私の依頼は運営が振ってくるモノしかないから、いつ一緒になるか分からないけど」


「SランクとAランクの姉妹か。こりゃあ、王立ギルドの良い宣伝になりそうだ。妹ちゃんの望み、オレが運営に掛け合って早めに何とかしてやるよ」


 ティナが私とパーティーを組むことが夢とか大袈裟なことを言うと、エルヴィンが企み顔をしてポンと手を叩いた。

 何か嫌なこと言いそうな気がするんだけど、気のせいかな……。


「リアナとティナにパーティーを組ませて、超危険指定生物を何体も討伐しなきゃならねー、高難度ミッションを組ませて――」


 ほら、やっぱり私たちにヤバいことさせようとしているよ。

 そんなことしても、絶対に宣伝にならないから――


 

 ◆ ◆ ◆



『エルトナ王立ギルド、エルロン姉妹の活躍は留まらず。超危険指定生物、白髪の巨人(シルバーオーガ)を十体討伐に成功! すでに王国の英雄との呼び声も高くなり――』


「え、英雄? わ、私たちが……?」


「そりゃ、お前がマナプラウス使えばティナはSランク級の火力を軽く出せるようになるからな。相性抜群なんだよ。お前は近距離格闘特化だし――」


 まだ、ティナと組んで二つくらいしか仕事をしてないのに、王国の英雄みたいな記事が書かれるようになってしまった。

 世間の声というのはよく分からない……。


「だが、お前ら姉妹が活躍すればするほど、割を食う奴がいるよなー。すでにエルトナ王立ギルドのエルロン姉妹の名が大陸中に轟いてしまってるし……」

 

「どういうこと?」


 私がエルヴィンの言ってることの意味が分からずに首をひねると、彼は無言で新聞記事を見せる。


『英雄エルロン姉妹を出奔させた、エルロン・ガーデン、ギルドマスター・バルバトス・エルロン――深まる疑惑』


 そんな見出しの記事だった――



ということで、ティナも王立ギルド入りしました。

そして、バルバトスはというと――


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― 新着の感想 ―
[良い点] ティナがリアナとの相部屋を希望するのって。 遠慮しているのではもちろんなく、エルヴィンの狼化を警戒しているのもあることはあるでしょうが、単にリアナ愛が強すぎる彼女のガチの希望なのでは? …
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