新たな依頼とマファラ族
謁見したり、Sランカーに会ったり、ポールが来たりした日の翌日。
私は二つ目の依頼に挑戦することになった。
今回は私以外にもう二人パーティーに加わるということで、待ち合わせ場所に来たんだけど……。
どうやら、まだ誰も来ていないらしい。
「おう。ちゃんと待ち合わせ時間よりも十分前に来てるな。感心、感心」
「あれ? エルヴィンじゃん。なんだー、今日はエルヴィンと一緒なんだ。それなら、安心――」
「いや、俺は監督みたいなもんだ。依頼には付いて行かない。ちょっとリアナに紹介したい人がいるんでな」
「監督? 紹介したい人?」
エルヴィンったら、そりゃあないよ……。
せっかく、私はエルヴィンと一緒だから安心安全な上に楽が出来ると思ってたのに。
それにしても、私に紹介したい人って誰かな? この前、紹介してくれたお菓子屋さんの人は凄くクッキー焼くのが得意だったけど。
「ったく。また、お前と同じパーティーか。精霊魔術士、リアナ・アル・エルロン」
「あれ~~? カインじゃん。また一緒だね」
「このぼんやりした顔でえげつない強さだからイラっとする。もう一人は“神眼使い”、まさかお前か?」
黒竜の覇者の血を手に入れる依頼で一緒になったカインと今回も同じパーティーだった。
てことは、エルヴィンが紹介したいって人はもう一人の人ってことか……。
「いや、今回はオレじゃないんだわ。ちょっとリアナに紹介したい奴がいてな」
「紹介したい奴?」
「あ、あのう。す、すみません。遅れました……」
か細い声で私たちに話しかけてきたのは、黒髪でルビーみたいに綺麗な赤色の瞳の女性。真っ白でヒラヒラしているローブを身に着け、ずっと俯いて下を見ている。
エルヴィンが紹介したかった人ってこの子?
「ルーシー、待ってたぞ。……紹介しよう、ルーシー・アルティマイヤーだ」
「よ、よろしくお願いします……」
「よろしく。私、リアナ・アル・エルロン」
「カインだ。……ルーシー? こんなやつ、王立ギルドに居たか?」
エルヴィンがルーシーって子を紹介して、私とカインは自己紹介する。
古株のカインが知らないって、目立たない子なのかな。
「ルーシーはDランクだからな。半年くらい王立ギルドにいるけど、Aランクのカインとはパーティーを組むことが無かっただけだ。今回はオレがこのパーティーに加わるように運営に推薦したのさ」
「でぃ、Dランク!? そんな足手まといを俺たちに押し付ける気か!」
「ひぃっ……!」
あー、ルーシーって名前聞いたことあるなって思ってたけど、思い出した。
エルヴィンがスカウトした子でレイスからDランクって言われてた子か。王都に来た日に二人がそんな会話をしていたような……。
「カイン、怖い顔して怖い声だすから、ルーシーが怖がってるじゃん」
「誰が怖い顔だって!?」
「いやだから、その顔……」
カインはルーシーがDランクだからって目くじら立てるけど、私はエルヴィンに考えがあって推薦したのだと思った。
「まぁ、落ち着けよ。ルーシーが真の力を発揮したら、Aランク……いや、次第によっちゃSランク級の力を出すとオレは診ている」
「え、Sランク!? バカ言え! そんな逸材がDランクなはずがないだろ!」
やっぱり、ルーシーも私と同じで何か隠れた力があるんだ。
宮廷鑑定士のエルヴィンがそう言ってるんだから間違いない。
だけど私にルーシーを紹介したいっていってたけど、どういう意味なんだろうか……。
「ルーシーは、な。マファラ族の生き残りなんだよ」
「マファラ族!? てことは、この女はまさか召喚士か!? 精霊魔術士と並び伝説級の存在だぞ! お前、召喚魔術が使えるのか!?」
マファラ族って何? 召喚士っていうのも初耳だし。
生き残りっていうのも気になるし。何かカインは大騒ぎしてるけど、凄い人なのかな。
「え、えっと。そ、そのう、すみません。ボクの魔力が弱すぎて……、と、とても小さな精霊しか召喚出来ないんです……。ですから、戦うことが――」
ポツリ、ポツリとルーシーは魔力が弱くて戦える程の力がないことを告白した。
とても悲しそうな顔をしてる……。
私には分かるよ。自分の力の無さを嘆くその気持ち。
やるせなくて、打ちひしがれるような、何とも言えない辛さがあるんだ。
「マファラ族っていうのは百年前に魔界から魔王っていうのが、この大陸を侵略しようと暴れまくってたときに召喚魔術という特殊な魔術を用いて活躍した民族だ」
「へぇ~~、ルーシーのご先祖様って凄いんだね~」
「魔王はマファラ族をとにかく危険視してな。絶滅させようと躍起になった。そして、実際に歴史から姿を消したんだ……」
百年前に魔王っていう魔界の住人がこの大陸で暴れて人類と戦争になったって話は子供だって知ってる。
ルーシーの一族は絶滅寸前まで追い込まれたのか……。とてつもなく重い話だ……。
「純血のマファラ族が生き残っていたことは驚愕だが、その女は召喚魔術をまだマスターしておらんのだろう? それでは戦力には――」
「そこで、リアナの出番だ。リアナ、お前さんの精霊魔術が伝説の召喚魔術を復活させる」
「へっ?」
エルヴィンに背中をポンと叩かれた私はとんでもない大任を背負わせられる。
そりゃあ、ルーシーが力を得られるなら協力したいけど、どうすれば良いんだろう――。
第二章を開始しました! これからも引き続きよろしくお願いします!
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