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day12 新しい刀

「俺が黒炎弾を使えるようになったら、また違う付与が付けられるようになるよね」

「恐らくそうでしょうね。ですが、黒炎属性の付与のみでもとても強力ですよ」

「あーそっか。火属性の最上級なんだっけ」


普段使わないから全く実感がないのだけれど。


「惜しむらくは俺が他の属性が覚えられないことだねぇ」


色んな属性があれば色んな効果が付けられたはずなのに。

現状はジオンの氷晶属性の付与しかできない。

自身か仲間というのは、パーティを組んでいる他のプレイヤーの属性魔法も操れるということだろうか。

もしそうだとしたら凄い武器が作れるのではないだろうか。


いや……それはさすがにないかな。驚く程強力でメリットしかないようなスキルがあるわけがない。

もしそんなことがあるのなら、鬼神はどんな相手でもテイムできて、ほいほい黒炎魔法を使えるはずだ。

それからむきむきだろう。


「私が取得できたら良いのですが……さすがに属性魔法を覚えるのは難しいですね。

 【採取】や【採掘】と違ってこの行動をしていたら取得できるという明確な行動がないので……」

「この世界の人達はどうやって覚えるの?」

「属性魔法を扱える人は生まれつきその属性を持っている場合がほとんどですね。

 それ以外は研究に研究を重ねてようやく取得できるとか」


その点、プレイヤーはSPさえあればどの属性でも覚えられるのだから楽だ。

俺は覚えられないけど。覚えられないからこそ、この種族スキルを取得できているのかもしれない。


「では、先程の氷晶鉄で短剣を作りますね」

「それじゃあ俺は、その間にマナポーション買いに行こうかな。

 玉鋼にも融合したいしね。あ、離れても大丈夫なのかな?」

「大丈夫ですよ。お気をつけて」


村の商店に《初級マナポーション》が売っていたらいいのだけれど。

商店に向かい、カウンターのおばあさんに早速聞いてみる。


「マナポーションあるかな?」

「《初級マナポーション》があるよ。

 でもいいのかい? 異世界の旅人が作ったもののほうが出来が良いだろうに。

 ああでも、今はまだほとんどの旅人が壱ノ国にいるみたいだからねぇ」

「うん。転移陣使うにしてもお金掛かるからね」

「そうかいそうかい。

 1つ450CZだよ。いくつ必要かい?」


所持金を確認すると28,369CZある。

家を買う為にお金を貯めたいが、この調子ではいつ家が買える程に貯まるのだろうか。

お金を貯めるには、狩りを頑張らなきゃだから強い武器が欲しい。

強い武器を作るにはMPを消費して【融合】を繰り返して……あ。


ジオンの作った武器を売ればいいのでは?


「10個……いや、20個ちょうだい!」

「おやおや、20個で9,000CZだよ」


お金を払って商品を受け取り、鍛冶場に戻る。

鍛冶場にいるおじさん達に挨拶をしつつ、作業部屋へと戻った。


「武器を露店で売ろう!」


作業途中のジオンはきょとんとした顔をして、作業の手は止めることはなく俺に頭を向けた。


「俺のスキルとジオンの鍛冶スキルがあれば強い武器が作れるはずだからね」

「まぁ……あ、もうすぐできますよ」

「あ、うん」


もっと時間がかかると思っていたけれど、案外早いようだ。

さすがゲームである。


机の傍に置いてある椅子に座り玉鋼を熔解する。

魔力回復のお陰で多少回復量スピードは上がったものの、スキルレベルが低いからか微々たるものだ。

買ってきたばかりの《初級マナポーション》を飲む。

マナポーションのクールタイムは初心者用も初級も変わらず、15分だ。

ちなみに攻撃スキルや魔法スキルのクールタイムはそれぞれで違う。


ジオンは忙しそうだし魔操は後にして、出来上がるまでの間は玉鋼を熔解しておこう。

マナポーションを飲みつつ熔解していると机の上が溶けた玉鋼で酷いことになったが、気にしない。


「できましたよ」


ジオンの差し出す短剣を受け取り鑑定する。


『スノーダガー☆3 攻撃力:26

 装備条件

 Lv15/STR10/INT4

 効果付与

 氷晶属性+5/冷気+3/沈黙+2』


鑑定の結果をジオンに伝えるとジオンは目を丸く開いた。


「すごい、ですね……まさか全ての効果が付与されるとは……。

 装備条件にINTが必要なのは氷晶属性が付与されているからですね。

 その分、STRの必要条件が低くなっています」

「なるほど……ということは、氷晶属性を多く付与できたら、その分INTの必要条件が上がってSTRの必要条件は下がる?」

「そうなりますね。完成した武器に付与した場合だと条件は変わりませんが、鍛冶時にモンスターの素材で付与をする場合、同じ武器、同じ素材でも付与の数値によって必要条件に差があります」

「じゃあ、俺の刀は氷晶属性の玉鋼だけを使って作ればいいんだね?」

「ええ、そうですね。

 それで、露店で売るという話は?」

「あ、そうそう。家が欲しいんだよね。

 だからお金貯めたくて」


鍛冶道具のランクや鉱石の品質は低いがジオンのスキルレベルはLv☆だ。

兄ちゃんは恐らくカンストだろうと言っていたし、きっと良い物ができるはず。


「ふむ。ライさんが付与したものを売るのですか?」

「うーん……MPの問題もあるし、全部の金属に付与して作るのはきついかな。

 使う金属の中で1つか2つ程度? 付与だらけの武器を売ってると他の鍛冶師の人に恨まれそうだし。

 付与を持ってる人達のレベルが上がればどんどん強い付与が付いた武器も売られるだろうからいつかは作るかもしれないけどね」

「そうですね。全てに付与して作るのは、今は私達の使う刀だけにしておきましょう」

「そう言えばジオンの刀ってどんなの? 凄い刀だったりするの?」

「いえ? レベル1で装備できる刀ですのでライさんの刀とほとんど変わりませんよ」

「そうなんだ? ……ん? それじゃあジオンが元々持っていた刀とかは?」


ジオンは俺と出会う前もこの世界で生きていたようだろうから、愛用の刀がいきなり初心者用の刀に代わっていたりしたら凄く申し訳ないのだけれど。


「特にこだわりがなかったので、ずっとこれですね」

「レベルが上がっても? というか、レベルって俺と契約したことで1に戻った感じなの?」

「そうですね。とは言え、異世界の旅人と比べるとこの世界の住人はレベルがとても上がりにくいので、高くはなかったですよ。

 異世界の旅人の従魔になれば上がりやすくなるので、1に戻るとしても以前よりも強くなれる可能性のほうが高いです」

「ふぅん、そういうものなんだ。

 あ、それじゃあジオンの刀も作るよね?」

「はい。これからはもっと強くなりたいので、作ろうと思ってます。

 良いですか?」

「もちろん! 良いよ!」


まずは俺達の刀を作って、それから売る用の武器を作ることにする。

武器を作るのに使う金属の数はどういう物を作りたいかによって変わるらしい。

短剣に比べたら当然大剣のほうが多くなる。


ジオンと2人でせっせと氷晶玉鋼を生産していく。

昼時になり、そういえば昼ご飯のことを何も考えてなかったことに気づいて、商店でサンドイッチを買って作業場で食べた。

作業場は5時間借りているが、この調子だと延長する必要がありそうだ。

一旦別の場所で氷晶玉鋼を生産して再度借りて鍛冶をしてもいいが、広い机が便利なので5時間延長しておく。


ひたすらジオンと共に氷晶玉鋼を生産して、ジオンの言う必要数に達したら、そこからは売る用に銅、鉄に付与をしていく。

途中からは、鍛冶をしながら氷晶弾を浮かせておけば同時進行でできるというジオンの意見があり、同時進行で進めて行くことになった。

鍛冶をしながらできるものなのかと思ったが、特に何の問題もないようで、やはりジオンはハイスペックだなと再認識した。


そうして刀が二振りといくつかの短剣や長剣等の武器が完成した。


「できたー!」

「お疲れ様です」

「ジオンもお疲れ様。魔法も鍛冶もって両方させちゃってごめんね」

「いえ、お陰で良い物が打てましたから」


ジオンは満足そうな顔で笑っている。俺もきっと同じ顔をしているだろう。


「それじゃあ、見るよ?」

「はい。できるだけ軽くしたんですが……どうでしょう」


まずは俺の刀から鑑定する。

ジオンの刀と比べると細身の刀だ。


『雪月華☆4 攻撃力:24

 装備条件

 Lv15/STR4/INT16

 効果付与

 氷晶属性+21』


「装備できるよ! 今のSTRは4だからぴったりだよ!」


俺の言葉を聞いたジオンは安堵の息を漏らして、安心したように笑う。


「そうですか……それは良かった。読みが当たったようで安心しました」


俺の刀とジオンの刀では使った氷晶玉鋼の数が違う。

それから、俺の刀は『氷晶属性』が付いたものだけを使って作ってもらったものだ。


「さて、次はジオンの刀ね」


『雪中四友☆4 攻撃力:45

 装備条件

 Lv15/STR14/INT6

 効果付与

 氷晶属性+7/冷気+10/沈黙+7』 


「あ、装備条件、Lvだけ足りてないよ」

「ええ、恐らくそうだろうとは思っていましたが、すぐに上がるだろうと思い調整はしてません。

 レベルが上がるまでは持っていて頂いても?」

「もちろんだよ」


ジオンの刀はアイテムボックスに入れて、俺は装備を《はじめての刀》から《雪月華》へ変更する。

腰に提げた刀の鞘が黒から白へと変わった。

抜いて刀身を眺めれば、良く目を凝らさなければ分からないけれど、《はじめての刀》の刀身と比べて薄っすら青白い。


机の上にあった金属はほとんどなくなっている。

宝石は今回使わなかったけれど、いつか使うことがあるだろうか。

使いそうだからと全部取っておいたらアイテムボックスがぱんぱんになりそうだし、宝石はナビゲートのお陰で困ることはないだろうから売ってしまおうかな。


「あ、冷気の氷晶鉄が2つ残ってる」

「ふむ……次回用に残しておいてもいいですが……あ、包丁を作りましょうか」

「え? それ大丈夫? 食材に状態異常ついたりしない?」

「ふふ。大丈夫ですよ。冷気が付与された包丁は食材の鮮度を落とさず調理できるそうで、料理人の方には人気らしいですよ」

「いいね、カヴォロにあげよう」

「ええ、良い手土産ができましたね」


ジオンが包丁を作っている間に、机の上に残る金属と宝石、それから完成した武器をアイテムボックスの中に入れておく。

今の時間は『CoUTime/day12/18:23- RWTime/16:28』で、作業場を借りてからは9時間程が経っている。


マナポーション代と鍛冶場使用料で結構お金が減ってしまっているし、早めに売ってしまいたいところだ。

売れるだろうか……売れてくれるといいんだけれど。いや、きっと売れる。大丈夫。

とは言え、相場が分からないのですぐに露店を開くのは難しそうだ。


兄ちゃんが初日からログインしていたのなら迷うことなく兄ちゃんに聞いていたんだけれど。

カヴォロに聞いてみようかとも思ったが、それよりも適任がいることに気付く。ロゼさん達だ。

ただ、兄ちゃんの伝言を聞いて先に進んでしまっているだろうから、露店広場に行ってもいないかもしれない。


「できましたよ、ライさん」

「お疲れ様、ジオン」


ジオンの持つ包丁を受け取り、鑑定する。


『冷気包丁☆2 調理:13

 使用条件

 料理スキルLv5/DEX7

 効果付与

 冷気+3』


「へえ。包丁だと使用条件なんだ。それに、料理スキルなんだね」

「包丁ですからね。少し工夫して打てば戦闘でも使えるようになりますが、その場合は装備条件も追加されるみたいですよ」

「包丁で戦うんだ? まぁ、包丁も武器もってなるとお金かかるもんねぇ」


カヴォロの料理スキルがどれくらいあるのかはわからないけど、多分大丈夫だろう。

あれだけ人気の露店なんだからその分料理しているはずだ。

足りなかったとしてもそのうち使えるだろうし。


「早速試し斬りと行きたいけど……」

「今日は少し疲れましたね」

「うん。今日はもう夜ご飯食べて宿で休もうか」

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[一言] 主人公の性格が良すぎて気持ちよく見られる 後、尊い
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