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day101.5 一方その頃

「……暇ね」

「だなぁー……」


空とグラーダが作業している姿を眺める。

『day101』に日付が変わってすぐ、0時から移動が可能となった亜空間で、生産スキルを持たないプレイヤーがする事と言えば、狩りくらいだ。

移動可能時間は0時から12時まで。それ以降は街から亜空間に移動は出来ない。

つまり、本戦ぎりぎりまで移動しないで、普段通りに過ごすなんてことは出来なくなっている。


プレイヤーの中には、亜空間に移動だけして、ログアウトして仕事に行った人もいるようだ。

俺もログアウトして作業しても良いけど、空とグラーダが生産している中、急ぎでもない仕事でログアウトするのも気が引ける。


来李は早くからログインして移動していたようだが、空とグラーダ以外の俺達は、11時頃からのんびり移動してきた。

亜空間内にいる魔物相手にレベル上げをしても良いが、亜空間内で出現する魔物は弐ノ国の魔物だ。おまけに弱体化もされている。

俺も含めたここにいるプレイヤー達は普段、参ノ国で狩りをしているので、少しばかり味気ない。


「それにしても、ボロボロね。

 こんな状態じゃ、すぐに中に入られてしまうわ」

「だなぁ。空が穴塞いでくれてっけど、どうなるかねぇ」

「……私、石工覚えようかしら」

「突貫工事でどうにかなるかぁ?」

「そうなのよねぇ……それに、道具もないしね」


うちのクランのクラメンも、それから同盟クランのクラメンも暇そうに座り込んでいる。

ウィンドウを開いている人達は誰かとメッセージをやり取りしているか、掲示板でも見ているのだろう。


「生産道具は大体鋳造だっけか……空に頼むのは、さすがに今は無理だよなぁ」


魔道具製造スキルでは鋳造品を使う事も多いらしいので、魔道具製造スキルを取った後に鋳造スキルも取ったみたいだ。

あちこちの壁を木工で作った木の壁で塞いでくれている空の仕事をこれ以上増やすわけにはいかない。

壁が終わったら、階段も修繕してくれるようだし、兵士用の杖や弓も作らなければいけない。


「銃工で使う生産道具で代用できるものもありそうだけど」

「ああ……良いんじゃない? SP有り余ってるでしょ」

「ま、取るものほとんどないしね」

「戦闘系全滅だもんなぁ。基本属性は全部覚えたんだっけ?」

「覚えてるよ。んー……採取系は全部取ってしまおうかな。

 今は道具がないから、採取くらいしか出来ないけど」


斧ならグラーダが作れるだろうけど、グラーダも武器を作るのに忙しそうだ。


スキル一覧に並ぶスキルを眺める。

短剣術や刀術、格闘術等の戦闘系のスキルが全てグレーアウトしている。


採取と採掘、伐採……ついでに隠密も取ろうか。

レベル上げばかりしているから、SPは大量に余っている。

特に取りたいスキルもなかったし、欲しいスキルはグレーアウトしてしまっているし。


「ん……」

「どした?」

「スキル増えてる」


新たなスキルが増えている事に気付いて、動かしていた指を止める。

【魔力感知・竜驤虎視】……来李のスキルと似たスキルかな。

こっちの種族特性が反映されたスキルが出てきたのは初めてだ。

鏡花水月が反映されたスキルは、魔力制御と魔力回復の2つを覚えているけど。


これで、現状覚えられる魔力に関するスキルは、のきなみ種族特性が反映されたことになる。

ハイエルフだからだろうか。魔法以外使えない不自由さはあるが、魔力に関する事は優遇されている。

魔力に関するスキルは他にもありそうだけど……ま、何が解放条件なのかわからないし、気長にやるとしよう。


【魔力感知・竜驤虎視】を取得して、ウィンドウから顔を上げる。


「……あー……失敗した。罠かこれ」

「おん? 何が?」

「種族特性の魔力感知取ったら、世界が虹色になった」

「は?」

「魔力の質か何かが見えてるんだと思う。

 ちなみに、朝陽はピンクになってるよ」

「ピンク……!? なんかやだなぁ……」

「ロゼは水色……違いがわからないな」


来李の言うもやとは違い、オブジェクトやプレイヤーが一色に染まってしまっている。

大気中の魔力も見えているのか、空気にも色が付いている。

世界に溢れる極彩色に酔いそうだ。情報量の多さに頭がくらくらしてきた。


「あー……あ、見えなく……駄目だ。見える」

「魔力感知って集中しないと見えないんじゃなかったっけ?」

「らしいけど。取った瞬間から見えてたね」

「そんじゃ、逆に集中したら見えなくなるんじゃねぇか?」

「どうかな。若干色は薄くなるけど……何かしら制御する方法があるんじゃないかな」


ただでさえ回避に集中しているのに、これ以上負担を増やすのはやめて欲しい。

そう言えば、秋夜君も色々見えてるみたいだけど、こんな感じなのかな。

☆4種族の罠に嵌ってしまったことに溜息が出る。


来李は豪運の持ち主だから☆4種族の罠を回避できているが、☆4種族は本来、常に何かしらの不自由さが付いて回る。

スキルを制限されていたり、動けなくなったり、攻撃に当たった時に何かしらが起きたり……様々だ。

鬼神も大人しく動けなくなるデメリットにしておけば、来李がすくすくと成長することもなかっただろうに。

ま、豪運の持ち主が鬼神を引き、あまつさえぽんぽんテイムしていくなんて、運営も予想していなかっただろうが。


「スキルでそんなことになるのね……」

「これからはスキル取んのも気を付けなきゃな……ま、そんなわけわかんねぇスキル、早々出てこねぇだろうけど」

「……気分悪くなってきた」


目を閉じて、視界を遮断する。


「あーあ……目閉じちまったよ。どうすんだこれ。本戦大丈夫か?」

「それまでに、開眼するから安心して」


本戦までに制御できるコツが掴めたら良いけど。良い暇つぶしが出来たかな。

最悪、虹色の世界で戦えば良いだけだ。


「ふーん。ま、レンがそう言うなら、開眼すんだろ。

 つーか! 腹減った!」

「そうねぇ。食事は用意してきたけど、兵士の分はないのよね」

「やっぱいるよな? 用意しなきゃだよな?」

「だと思うけど」

「一応、フライパンは、街で買ったやつならあるわよ。

 コンロと包丁は、空とグラーダが作れるわよね」

「で、誰が作るんだ? つーか、誰が料理スキル取る?」

「生か焼くかなら、料理スキルなくても出来るって言ってたけど」

「んじゃ、適当に肉焼いて食うかぁ。

 誰か塩持ってねぇ? 胡椒もあれば尚良し!」





「秋夜さ~ん! 武器出来た~!」

「へぇ……毎回見せに来なくて大丈夫だから。

 さっさと兵士に渡してきなよ」


1本出来る度に見せに来なくて良い。

最初に見せてきたロングソードとそんなに大きな変化は見えない。


「秋夜さん! こっちとこっち、どっちが良いですか!」

「どっちでもいいねぇ」

「だったら、こっちはどうですか!?」

「どうでもいいねぇ……右」

「! これですね! それじゃ、これ!」

「はいはい。ありがと」


だらりとソファで横になる。

このソファも、暇で狩りに行っている間に出来ていた。

ソファより先に作る物があると思うんだけど。


「採掘してきまーす」

「何が足りないの?」

「石工の素材ですね。修繕するのにどれだけあっても足りなくて」

「もうないの?」

「まだありますけど、不安で」

「じゃ、作業してなよ。僕採ってくるからさぁ」

「いやいやいや! 大丈夫です大丈夫です!

 俺採ってくるんで! 秋夜さんは休んでいただいて!!」

「あーうるさいうるさい。

 君しか石工できないんだから、君がやんなきゃ誰がやんの」

「そうですけどぉ……」

「良いから。頼んだよ」


生産をしないクラメン達の視線を感じる。


「君達も、適当に素材集めしてきなよ。

 余ってもイベント終わった後に使えるでしょ」


それだけ言って、城壁の外へ向かえば、後ろからどたばたと足音が追ってくる。

付いてきたいなら好きにして良いけど……うるさくなりそうだ。


「秋夜さん! あいつの拠点、いつ行きます?」

「誰」

「鏡花水月ですよぉ!」

「ああ……お兄ちゃんのとこに行くのは最後のほうだねぇ」

「えぇ~初っ端で潰してやりましょうよ!」

「なんの旨味もないでしょ。

 ただでさえ面倒な相手揃ってんのに」

「秋夜さんならいけますよ!」

「そうですよ! ぶっ潰しましょうよ!」

「僕1人に戦わせる気?

 君達が活躍してくれんの、楽しみにしてるからねぇ」


そう言うと、分かり易いくらい喜色を顔に浮かべる。

扱いやすくて良いけど、ここまでちょろいと心配になるな。


「じゃあ、あいつのとこはいつですか?」

「あのねぇ、あいつって言われてもわかんないから。

 今度は誰?」

「うぐぅ……鬼の……」

「はいはい、ライ君ね。

 ライ君か……どうしようかねぇ」


一筋縄ではいかない相手だ。正直、お兄ちゃんのクランより厄介かなぁ。

拠点の強化は間違いなく、全ての拠点で一番だ。

お兄ちゃん達のクランと組んでくれていたほうがまだマシだった。

ライ君達だけでも、どの拠点よりも強固な拠点だっただろうけど、ライ君が出来ない部分を補える生産職が揃っている。


戦闘面に関しては、生産頑張ってる連中は、まー、どうでも良いけど。

ああ、2人面倒なのがいるか。ま、そこ2人はうちのクラメン連中で何とかできる。


問題はライ君達だ。ライ君達は僕達より20くらいレベルが低い。

が、レベル50前後で、適正レベル60程度であろう哀歌の森で普通に戦えていた。

まー、多少時間は掛かっていたけど、あの程度些細な問題だ。


装備に助けられてるなぁとも思うけど、そもそも……あれは元々の身体能力なのかねぇ。

体を動かす事に慣れているように見える。

装備とプレイヤースキルで、所謂前線プレイヤーと呼ばれるやつらとの差を埋めるどころか、頭一つ抜けている。


「はー……行きたくない……」

「えっ……? 行かないんですか……?」

「放っておいて勝てるなら行かないけどねぇ」


終盤まで生き残るであろうクランは、ある程度予想がつく。

よっぽどおかしなことが起きない限り、最後まで生き残ったクランが優勝するだろう。

ライ君達もその1つだ。


こういう時のライ君の動きが全く予想できない。

大人しく拠点にいそうだとも思うし、あちこちに突撃しそうだとも思う。


「あー……面倒だけど、話してみるしかないかねぇ」





【暇人の集い】雑談スレ part126【from廃墟】


387 名無しの旅人さん

採取で持ってきたでかい岩で1階の壁塞いだらなんとかなると思う?


388 名無しの旅人さん

>>387

それどうやって中に入んの?


389 名無しの旅人さん

出入口は最低1個絶対必要っぽい

全部埋めた時点で警告くる

本戦までに出入口作らないと棄権になるらしい


390 名無しの旅人さん

>>389

まじか 引き籠って防衛ポイント稼ぎは無理か


391 名無しの旅人さん

岩で塞ぐのは良いけどつるはしで壊されたら終わりじゃない?


392 名無しの旅人さん

それはちゃんと修繕した壁でも終わりでは?


393 名無しの旅人さん

採取で採ってきただけの岩はつるはしで簡単に壊れるけど

石工やらで加工された壁だったり床だったりはつるはしで壊すの時間かかるよ


394 名無しの旅人さん

石工スキル取ってみたけど道具がない!!!


395 名無しの旅人さん

なんで取ったんだよw

ちょっと考えればわかるだろw


396 名無しの旅人さん

暇すぎて無駄にスキル取ってしまった


397 名無しの旅人さん

そういうのは高レベルのやつらの遊びだって

あの人らSP貯めこんでるから


398 名無しの旅人さん

弱体化されてるからレベル上げ楽だわー!

でも経験値も少なくなってそうですねー!


399 名無しの旅人さん

弱体化されてんだからそらなw

けど、弱体化してるからレベル低くても狩りできて良いよね


400 名無しの旅人さん

岩山脈にいるという噂のワイバーン倒せて感動


401 名無しの旅人さん

私も倒しに行ったw

魔石ってアイテム出たけど、これ何に使うの?


402 名無しの旅人さん

細工じゃねぇの?


403 名無しの旅人さん

>>402

カットはできたけどその後使おうとしたら木端微塵に消し飛んだ


404 名無しの旅人さん

>>403

握力ゴリラ?


405 名無しの旅人さん

私も消し飛んだよ

アクセサリーに使える素材じゃないっぽい


406 名無しの旅人さん

サポート枠の人に聞いてみたよ

魔道具で使うアイテムなんだって


407 名無しの旅人さん

魔道具・・・!

待って俺も聞いてくる


408 名無しの旅人さん

魔道具職人ってほとんどいないみたい

素質がないとスキル取得できないんだって


409 名無しの旅人さん

俺らにもそれって適用されてんの?

魔道具作る素質ってなに?


410 名無しの旅人さん

さぁ・・・?

魔道具職人1人は各街にいるらしいから詳しく知りたきゃ聞いてみたらってさ


411 名無しの旅人さん

どこにいるかわかりませーん!


412 名無しの旅人さん

良いなー良いなーサポート枠の人に色々教えてもらえて良いなー


413 名無しの旅人さん

ずるいなーうちにはいないのになー


414 名無しの旅人さん

イベント終わったらサポート枠に聞いた情報交換スレでも作るか・・・


415 名無しの旅人さん

イベント中でもええんやで?


416 名無しの旅人さん

やだね!ちょっとくらい有利でいさせろ!


417 名無しの旅人さん

勝負は既に始まってんだよ!


418 名無しの旅人さん

教えたところで何にも困らないような高レベルクランじゃないんで!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 初めまして。面白くて一気に読んでしまいました! 主人公もテイムモンスター達のキャラクターも魅力的でとても好きです! 続きのイベント戦も楽しみです。
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