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day61 改築

「ライ様の住宅ですと、建築面積を広げることは難しいですね。

 縦に伸ばすことは……外観維持の為、地下に伸ばすことしか出来ませんが、どうしますか?」

「ちなみに、増築ってどれくらいの時間がかかるの?」

「施工する大工によりますね。建築スキルの高い方ですと半日で完成しますよ。

 ちなみに今ご紹介できる大工ですと……1日ですかね」


そんなまさか。早く増築できるのはありがたいけれど、早すぎないだろうか。

でも確かに、ゲームの建築ってそういうものかもしれない。アイテムやお金で、時間短縮ができたりするようなのもあるし。


「地下を追加するとしたら、費用はどれくらいかかるかな?」

「そうですね~……800万CZから1,000万CZですかね」

「なるほど……」


1,000万CZ。一戸建てが買える最低金額だ。新たに家を購入したほうが良いだろうか。

片方を住居、片方を作業場に……離れた場所だと不便かな。


「近くで売られている家ないかな?」

「ライ様の住宅周辺は、異世界の旅人様向けの住宅地なのですが、現在はほとんど空いてますね」


俺達の家は区画の一番端っこ、階段の横にある家だ。

右側には階段、左側には俺達の家と良く似た一軒家が数軒並んでいる。その向こうはまた階段だ。

海に向かって斜めに建築物が立ち並ぶトーラス街では、階段での移動が主になる。


「隣の家って販売されてる?」

「えー……はい。現在販売中の物件ですね。

 不便であれば、1戸に改築することもできますよ」

「繋げるってこと?」

「はい、その通りです。その場合、余分に費用が掛かりますが……」

「いくらくらい?」

「隣の物件が……1,400万CZ、改築費用に大体300万CZでしょうか」

「する! お願いします!」

「待って……そういうのって、即決するものじゃなくない?」


後ろで会話を聞いていたフェルダが口を開いた。


銀行には3,000万CZ程入ってるし、払える。

大きな家を買うために貯めていたお金だけど、ここだって家をまだ見つけられていないし、見つかるまでまた貯めれば良いだけだ。

家が見つかるまでの間ずっと使うだろうし、悪い買い物ではないと思う。家が見つかれば別荘にする予定だし。


「そんなに急いで石工道具置く場所、確保してもらわなくても大丈夫だよ、俺」

「お金ならあるよ。大丈夫!」

「や、そうだとしても……申し訳なくなってきたな……」

「フェルダが申し訳なさを感じる必要はないよ。

 皆で一緒に生産したいからね。それに、早くフェルダの作った石工品見たいし」

「私も見たいですね」

「俺も!」

「一緒に作ろ!」

「元になるやつー手伝ってー」


フェルダは少しだけ困った顔をした後、笑った。


「ん、わかった。ありがと」

「うん! と言うことで、お姉さん! お願いします!」

「はい。では、先にいくつかの注意事項をお伝えしますね」


お姉さんの話を質問をしながら聞いていく。


トーラス街の景観ルールがあるため、俺達が外観を決めることは出来ないそうだ。

建築のことはさっぱりわからないので、寧ろ助かった。


内装や間取り等は希望があれば、それに沿って施工してくれるそうだが、内容によっては費用が高くなるとのことだ。

大工さんにお任せしても大丈夫だと言われたので、是非お任せしたいと思う。

最終的な費用は、改築終了後まで分からないそうなので、大工さんと予算について相談するように言われた。

また、一戸建ての金額1,400万CZはギルドで支払うが、改築費用は直接大工さんに支払うそうだ。


それから、家に置いてあるアイテムはそのまま置いておいて大丈夫らしい。

広くなった分、改築終了後に移動する必要はあるけれど。

必要なアイテムは回収しておくように言われた。


改築終了までは家に入ることはできないそうなので、宿を取る必要がありそうだ。

他にも改築後の住居IDについて、住居者登録について等の説明を受け、お姉さんの話は終わった。


「問題ありませんか?」

「うん、大丈夫」

「では、お先に一戸建ての金額1,400万CZをお支払いください。

 銀行引き落としもできますが、どうしますか?」

「銀行からでお願いします」

「それでは、ギルドカードまたは銀行カードをお借しください」


頷いて、ギルドカードを手渡す。

お姉さんは、新たに購入する住宅情報が書かれた羊皮紙と、ギルドカードを木箱の中に入れて蓋を締めた。

前に住宅購入チケットを使った時と同じものだ。


「ギルドカードをお返ししますね」


きっちり1,400万CZが引き落とされていることを確認する。

今までで一番大きな買い物だ。どきどきする。


「こちらが購入された住宅の鍵になります。使い方の説明をしますか?」

「ううん、大丈夫」

「わかりました。相談と確認に、ライ様の家へ大工が伺う時間や日程の希望はありますか?

 一番早くてこの後、1時間後から伺えますが」

「じゃあ、1時間後にお願いします」

「それでは、そう伝えておきますね。どちらの家で待ちますか?」

「元のほうで、お願いします」

「はい。えー……他にご質問はありますか?」

「んー……大丈夫。ありがとう」


お礼を告げて受付を離れ、ギルドを後にする。

海を眺めながら、家への道を歩く。

家の前に辿り着いて、少し迷った後、新しい家の鍵を開けた。


「おー? 一緒だな?」

「そうですね。ですが、物がないので広く感じますね」


新しい家の匂いがする。

俺達の家とほとんど変わらない。違うのは階段の場所くらいだろうか。


住居者の登録がされているか一応確認した後、新しい家から出て、数歩先にある元の俺達の家に帰る。

前の家と新しい家、それからその隣に並んだ数軒の家は、隙間なくぴったりと、まるで1つの家のように繋がっているので、間の壁を抜いたら合体できるのではないかと思う。


「改築楽しみだね。

 部屋割りどうしようか?」

「これまで通り1部屋にベッドが2つだと、1人余りますね」

「うん。シアとレヴ、1つずつベッド使う?」

「やだー」

「シアと一緒に寝る」

「そっか、わかった。

 俺はこっちで眠る事少ないから1人でも良いけど……」

「俺別に1人で大丈夫だけど」

「えー寂しい」

「そう……」


エルムさんはどこでベッドを買ったのだろう。どうせなら同じベッドが良いけれど。

カプリコーン街には、多分まだ帰っていないはずだ。帰る前には会いに来てくれるんじゃないかなと思う。

俺がいなかったとしても、皆家にいることが多いみたいだし。

今もトーラス街にいるのだとしたら、魔道具工房にいるのかな?


「あ、そうだ。ポイントの交換決まった?」

「「うん!」」


シアとレヴ、そしてフェルダが選んだ鋳型を確認して、交換する。全部で1,030ポイント。残るポイントは870ポイントだ。


「あと用意するものは……素材だね。

 岩は採掘で採れるって分かるけど、砂や土は?」

「採掘で大丈夫。つるはしじゃ取れないけどね」

「スコップ?」

「そう」

「じゃあスコップもいるね。スコップ交換しよう」

「鋳型じゃなくてー?」

「うん。大工さんきたら、採掘に行こうかなって」

「いいな! 鉱石も宝石もすっからかんだからなー!」


改築が終わったら、交換したスコップを元に鋳型を作って貰えば良いだろう。


「岩山脈と石工の村の近くの鉱山、どっちに行く?」

「石工に使う素材はどちらのほうがあるんでしょうね?

 岩山脈はその名の通り、見渡す限り岩でしたが」

「んー……見てみないことにはなんとも。

 でも、石工の村って言うくらいだし、周辺に素材あるんじゃないかな」

「粘土は?」

「探さないとね。森とか山とか……。

 色んな種類の素材集めるならあちこちで採掘しないといけないんだよな。

 知り合いに石屋がいるなら取引もできるけど」

「いないなぁ……採掘が得意な仲間ならいるよ!」

「おう! 任せろ! けど……岩とか土とか砂はわかんねぇー……!

 俺の宝眼じゃ探せねぇなー……」

「んー……まぁ、見たらわかるから大丈夫。

 それに、リーノの宝眼が反応しないとこにあると思えばいいんじゃない?」

「お、確かにな! 岩山脈にしようぜ! いくつかなんもない場所あったんだよなー。

 そこでたくさん採れるんじゃねぇかな」


岩山脈に行くならカプリコーン街に……あ、いや、一回トーラス街側から登って、短剣が使えるか試してみても良いかもしれない。

駄目なら逃げたら良いだけだし。


「他に必要なものある?」

「んー……この家、水ある?」

「一応浴室に蛇口があるよ。お風呂はないけど。

 生産で使う時はそこから汲んできてるよ」

「あー……そうなんだ」

「うん? 水道の水じゃ駄目なの?」

「駄目じゃないけど、水属性の方が良いね。

 貯めとくための魔道具が必要だけど」

「貯めとけるの!? 攻撃以外で使えるの!? 」

「出来るよ。使ったことない?」


俺だけでなく、ジオン達も驚いた顔をしている。


「水属性が得意じゃなきゃ無理らしいけど。魔力の制御も必要。

 制御が上手い人なら、美味しい水になるよ」

「飲めるの……!?」

「龍人の街では普通だったけど、他の種族はしてないのかね」

「龍人の街ってどこにあるの?」

「肆ノ国」

「おや、私と同じですね」

「そういや鬼人の街あったな」


肆ノ国には龍人と鬼人の街があるのか。和風な国なのだろうか。

フェルダもガヴィンさんも和装ではないけれど。


「鬼人の街でもそのような話は聞きませんでしたね」

「シア、レヴ。できる?」

「初めて聞いたーでもアタシたち水の魔法得意だよ!」

「フェルダくん教えて」

「良いけど、俺も詳しくないよ。水属性持ってないし。

 魔力の制御なら俺以外のが良いんじゃない?」

「得意なのはジオンじゃねぇか?」

「俺も魔力の制御練習したい! ジオン教えて!」

「ええ、もちろんです」


水属性以外でも魔力の制御が上手くなれば様々なことに使えそうだ。

先日の黒炎弾の調整しかり、封印の調整しかり。


「水弾を貯めておく魔道具……どんな魔道具だろう」

「そこまではわかんないや。婆さんなら知ってるんじゃないかな」


聞きたいことがどんどん増える。エルムさん今何してるかなぁ。


それにしても、飲み水になるのか……ん?

そう言えばカヴォロが、料理で使えるかと思って水属性と火属性を取ったと言っていたような……。


『TO:カヴォロ FROM:ライ

 水属性、料理に使えるかも!

 詳しくわかったらまた連絡するね』


詳しく分かってから送ったほうが良いと分かっているのに、すぐに伝えたい気持ちが勝って、気付けばメッセージを送ってしまっていた。


『TO:ライ FROM:カヴォロ

 楽しみにしてる

 それと、いくつか鋳造品を頼みたい

 今日の夜、時間があるのなら店にきてくれないか?』


「りょうかい……と。今日の夜ご飯はカヴォロのご飯だよ!」

「おぉ! 楽しみだなー! フェルダ、カヴォロの料理はめちゃくちゃ美味いんだぜ!」

「へー、楽しみにしとく」


カヴォロに調理道具以外を頼まれたのは初めてだ。

あ、そうだ。冷蔵庫も頼まれてたんだった。


「ね、フェルダ。あそこにある冷蔵庫を解体して欲しいんだけど、出来る?」

「道具があればね。何に使うの?」

「鋳型にしてもらいたくてね」

「あーなるほど。何で作るの? 砂?」

「いつもはシアとレヴに鉱石で作って貰ってるけど……砂でも出来るの?」

「できるよ。まぁ、金型のほうが精度の高いものができるけど」

「シア、レヴ。どうしたい?」

「大きいのは砂型がいいよ。鉱石いっぱい使うからね」

「今まではできなかったけど、フェルダくんいたらできるねー」


なるほど。確かにたくさんの鉱石が必要になる。

鍛冶も細工も、そしてもちろん鋳造でも鉱石を使うので、節約できるのはありがたい。


「鋳物砂も必要だね」

「鋳物砂?」

「あー……え、どれくらい説明したら良い?

 何がどれだけ含まれてるとかそういう話?」

「聞いても理解できる自信がないなぁ……。手に入る?」

「さー、どうかな。あちこち掘り返してみようか」


石工スキル、奥が深そうだ。

前にはじまりの街で採掘スキルがない状態で採掘した時、たくさん転がっていた岩は、鑑定しても《岩》と表示されていた。

実はただの岩じゃなく、例えば前にガヴィンさんに見せてもらったような、安山岩だったりするのだろうか。

そのことをフェルダに伝えて聞いてみる。


「鑑定だけだと、スキルレベルが余程高くないとわからないな。

 石工と鑑定、両方あるならわかるけど。砂や土も。

 石工職人じゃない限り、種類なんて知らなくても問題ないからね」

「そういうこともあるんだ? 合わせ技みたいな」

「他のスキルでもあるのかは知らないけど。

 まぁ、岩は岩だし、土は土だよ」


石工の素材についてはフェルダに全て任せてしまおう。

他の鉱石や宝石だって、皆に任せきりではあるけれど。

暫くはあちこちに採掘に行くことになりそうだ。

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[一言] そういえば前のイベントのポイントって使い切ってたっけ?
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