壁の向こうで何が起こる!?
2018123 17時更新
壁の先には部屋があった。
それも、ダンジョンの中にあるとは思えないくらい広い。
ただ、それだけの部屋――のように見えるのだが、
「あ~クソ! なんなんだこれはよ!」
部屋の中で野島が叫んだ。
地面に倒れ込んでゴロゴロと暴れまわっている。
怪我はないようだが、手足を枷によって拘束されていた。
「野島、誰にやられた?」
「み、宮真くん! やっぱ助けに来てくれたんだな!」
俺が呼びかけると、野島は歓喜した。
自分が見捨てられる可能性を考えていたのだろう。
「助けるから質問に答えてくれ。
誰がお前を拘束したんだ?」
「わ、わからねえんだ。
ここに吸い込まれて、一瞬で拘束されてた。
魔法でも使われたとしか思えねぇ……」
魔法……?
そう言われて野島の手枷に目を向ける。
するとその手枷は岩……のような素材で作られている。
足枷も同様だ。
(……この部屋の中に敵がいるのか?)
だが、気配察知による敵の反応はない。
罠察知のほうは……。
『近くに罠が存在します。』
こちらは反応が続いている。
「……とりあえず、急いでここを出るぞ」
「お、おう」
さっさと逃げるが吉だな。
俺は野島の拘束を解く為に膝を突いた。
(……とはいえ、どうしたものかな?)
この枷が岩で出来ているのなら、簡単に壊れそうだが。
「野島、叩きつければ簡単に壊せるんじゃないか?」
「もう試したんだが、傷一つ付きやしねえ」
なるほど……。
物理的なダメージは通りにくいのかもしれない。
だとしたら、この枷は魔法によって作られたものなのかもしれない。
「枷だけ狙って魔法を使ってみるか?」
「み、宮真くんを信じてないわけじゃねえけど……。
オレの手ごと吹っ飛んだりしねえ……よな?」
「多分、大丈夫だ」
「た、多分かよ!」
「不安なら無理に破壊するのはやめておくぞ。
他の手段を――っ!?」
パンパンパン! 俺の目前で何かが弾けた。
「なんだ?」
続けざまに、追いきれないほどの岩石が高速で飛んできた。
(――さっき弾けたのはこれか!?)
物理防御と魔法防御を掛けているお陰で、飛んでくる岩は俺に当たることなく、見えない壁に衝突し弾けていく。
「みみみみ宮真くん! て、敵がいるのか!?」
岩の砲弾は明らかに俺たちを狙っている。
だが、やはり敵の姿はない。
これが全て罠なのか?
俺は周囲を確認する。――と、目前の壁が裂けて、目と口のような形を作った。
それは戸惑う俺たちを見て、不気味に嘲笑っているようだった。
「大翔くん、どうしたの!?」
「大丈夫? 怪我はしてない?」
「何か手伝えそうなら、ボクたちもそっちに行こうか?」
壁の向こうで待つ三人の声が聞こえた。
「大丈夫だ。
直ぐに戻るから、そこで待っててくれ」
それだけ伝えて。
「……野島、今の見たか?」」
「お、おう……顔が、見えたような……モンスターなのか」
気配察知に反応がないことを考えると、生物ではないということだろう。
変わらず罠察知には反応が続いていることを考えると、この壁の化物……というか、部屋全体が罠なのだろうか?
「ま、どちらにせよ倒せばいいだけか」
「宮真くん、俺はどうしたらいい?」
「何もしなくていいぞ」
こちらを見ている壁に向かって、俺は疾駆する。
走りながら魔法を放った。
「ファイアアロー!」
壁の化物に向かって一直線に炎の矢が飛んでいく。
その行く手を阻むように、壁の中から岩の砲弾が無数に放たれた。
だが――
「無駄だ!」
炎の矢は砲弾を貫くと、そのまま壁の目を抉った。
「!?!?!?」
叫び声はない。
だがダメージはあるのか、敵の攻撃は止まった。
俺はこの隙に、さらに走る速度を上げ壁の化物に向かい突進していく。
(……さて、お試しといくか)
新しく獲得した魔法を使うにはいい機会だ。
「――ファイアバースト!!」
魔法の名前を口にして俺は壁に触れた。
その瞬間、
――バアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!
強烈な轟音と共に壁が爆発した。
爆発と共に壁を形成していた岩が弾け、欠片が飛び散り宙を舞う。
壁は跡形もなく消えて、その向こうには人が通れるような大穴が出来ていた。
(……お、思ってたよりも威力があるなこれ)
ちなみにこれでスキルレベルは3だ。
人には絶対に使えない……。
「す、すげぇ……って、うおっ!? いてっ、いってぇ~~~、弾けた壁が飛んで来やがるっ!」
野島は弾け飛んでくる岩壁の欠片を避ける為、ゴロゴロと転がり回っている。
少しだけ申し訳ない気もするが、命は助かったのだから多めにみてもらおうとしよう。
『周囲に罠の気配はありません』
システム音が聞こえた。
どうやら罠察知の反応も消えたようだ。
「野島、立てるか?」
「う、うす! やっぱ宮真くんはすげーよ。
あんな化物を倒しちまうなんて!」
「俺が凄いんじゃない。
魔法やスキルが凄いんだ」
「でも、それを使ってるのは宮真くんなんだから、やっぱすげーぜ!」
お前も覚えれば同じことが出来るぞ……とは言わなかった。
ファイアバーストの獲得条件にいたるまで、大量のマジックポイントが必要になった。
野島が気付くかわからないが、俺がなぜそんなに大量のマジックポイントを得るに至ったのか。
勘づかれると説明も面倒だからな。
「さて、枷を壊すのは後だ。とりあえず戻るぞ」
「おう!」
俺は野島を抱えて、壁の向こうに戻ったのだった。




