表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/94

久しぶりの担任登場

2017/1108/ 本日2回目の更新

「こ、九重!?」

「ちょ!? なんでいきなりっ!?」


 強制転移してきた俺たちを見て、クラスメイトたちは驚愕する。

 だが、その中で一人だけ冷静に口を開いた男がいた。


「さっきの放送……というか、聞こえてきた声が関係しているんじゃないかな?」


 数時間ほど前に見たイケメン――確か名前は三間 秀だったか?


「僕たちのクラス――1組が階層を攻略したと放送されたよね?

 でも、僕たちはこの教室からは出ていない。

 つまり、九重さんたちがダンジョンを……?」


 三間が俺たちに目を向けた。

 どうやらこいつは、しっかりと状況を把握できているようだ。


(……こいつら……結局一度も教室から出なかったのか?)


 馬鹿か? それともただの臆病者?

 誰かが問題を解決してくれるとでも思っているのだろうか?

 いや……少なくとも、1階層を攻略するという意味では、解決してしまったことになるんだが……。

 だとしても、現状に戸惑うばかりで何もしなかったのは愚かすぎる。


「九重さんたちが? でも、ダンジョンにモンスターがいたんでしょ?」

「野島くんはそう言ってたよね?」


 野島と呼ばれたのは三白眼の不良男だ。


「う、嘘なんか言っちゃいねえぞ!

 オレは、オレは確かに見たんだ! あの化物どもを!」

「落ち着いてくれ、野島くん。君が嘘を吐いているなんて思ってないよ」


 荒っぽい態度は変わらないが、何かぶつぶつと呟いている。

 少しヒステリーを起こしているようだ。

 モンスターに襲われた恐怖が、トラウマのように胸に刻まれてしまったのかもしれない。


「もしダンジョンを攻略したのが九重さんたちなら、何があったのか説明してくれないか?」


 説明……か。

 何もしなかったこいつらに、俺たちが命懸けで手に入れた情報を伝えるのは腹立たしい。

 感情の赴くままに行動するとすれば、俺はこいつらを直ぐにでも切り捨てたい。

 だが、少なくともまだ切り捨てる判断は出来な――


「こんにっちゃ~~~~!」


 俺の思考に割り込むように、教室の扉が開いた。

 現れたのは、


「お久しぶりの担任ちゃんで~す!

 ホームルームのお時間だよ~!」


 生徒たちは一瞬にして静まり返る。

 やかましい声と共に――担任の着ぐるみが、教室に入ってきたのだ。


「おめでとうおめでとう! ワタシの可愛い生徒たち!

 あなたたちは2位通過でした~!

 上々な滑り出しに、ワタシ自身もワオって驚愕! 吃驚仰天しちゃったよ~!」


 まるで楽しい出し物を見ましたという態度。

 俺の神経を最高に逆撫でしてくる。


「さてさて、前の放送で言っていたことを覚えてるかな?

 ダンジョンを攻略するとポイントが支給されるよ~。

 2位通過の1組にはクラスの共通ポイントとして500pをプレゼント!

 ポイントは次の階層に転移されるのと同時に、毎回振り込まれるからね~」


 苛立たしい気持ちを抑えて、俺は教壇に立つ着ぐるみを見守った。

 このポイントから、どんな恩恵を受けられるのか。

 生き抜く為に必要となる情報を、聞き逃すわけにはいかない。


「このポイントが何に使えるか。

 気になってる? 気になっちゃってるぅ~? 気になっちゃってるよねぇ~?

 じゃあ――教えてあげる。

 このポイントはこの世界におけるお金みたいなものなんだ。

 つまり~、お買い物が出来ちゃいま~す! これは物欲を満たすちゃ~んす!」


 俺たち――扇原たちとしていた推測のままに、やはりポイントは物資と交換できるようだ。

 後はポイントを食料に変えられるのか……という点だけが気になっていた。


「ちなみに教壇側の扉――今、わたしが入ってきた方ね。

 そこは君たちが生活する場所――タウンに繋がってま~す!

 これは1階層をクリアしたクラスへの報酬だよ。

 だからポイントは一切消費してないから安心してねん!

 だけどまだ、タウンにはなんにもないの――閑古鳥の鳴いたデパートかってくらい!」


 担任はデパートとたとえたが、それほどまでに広い空間なのだろうか?


「そこでポイントの出番ってわけ!

 なんとなんと、ポイントを使うことでその生活スペースを拡張することが可能です」


 生活スペースを拡張?

 食料を買えるわけじゃないのか?


「具体的には家具を買ったりとか~。シャワー室を備え付けたりとかだね!

 こういうのは、女の子の方が必要なんじゃないかな?」


 人間らしい生活の保障――その為にポイントを使うというわけか。


(……ふざけやがって)


 死にたくなければ――ダンジョンを攻略しろと言われてるようなものだ。


「それと、みんなが気になっているのは食料の問題だよね?

 ご安心を! それもばっちりポイントで買えちゃうよ!」

「じゃあ……ポイントがあれば、死ななくて済む……?」


 誰か……女子生徒の声が聞こえた。


「そうだよ~。ポイントがある限りは、ここでの生活は保障されてるってわけ!」


 担任に『生活は保障』と明言され、教室内に充満していた張りつめた空気が緩む。

 どうやら、生徒たちの多くが安堵したようだった。


(……そんなのは問題の解決になってない)


 『言葉』の魔法は恐ろしい。

 使い方次第で、これほど簡単に集団心理を操作することが出来るのだから。

 一時凌ぎにしかならない現状を理解し、正しい行動を選択できる生徒はどれだけいるのだろうか?


「それと、ポイントは物を買う為だけに使えるわけじゃないからね~。

 何を買うかはみんなで相談して決めること!」


 クラスに与えられた共通のポイント。

 つまり個人が自由に使えるポイントではない……というのは面倒だ。

 クラス全員の意見を上手くまとめられるリーダーが必要になる。


「先生がいると話しにくいと思うので、先生は教室を出ていくね。

 物資を購入する為に必要なポイントはステータス画面の物資から確認してねん!

 それじゃあ、何かあればスピーカーで知らせるからね!

 ちなみに【2階層】の攻略は全クラスが攻略してからスタートされるので、それまでは休憩タイムだ! みんな、ゆっくり休んでおくようにね~」


 と、クマがのしのしと扉に向かって歩き出した。


「あ……また忘れるところだった。

 ボスモンスターを討伐したMVPには特別ポイントが支給されるよ。

 これはクラスではなく、個人に支給されるの!

 頑張った結果って事だね~!

 MVPはキミ――宮真大翔くんだ~~~~!

 は~いみんな拍手拍手~~~!」


 当然だが、生徒たちは唖然とするばかりで、誰も拍手なんてしない。


「え、MVP……?

「あの人が……?」


 あのクソグマ……余計なことを……。

 何も言わずに出て行けば、俺がボスを倒した事を知られずに済んだのに。


「てなわけで~、先生は行きま~す! みんな、またね~ん!」


 言いたいことを伝えると、その場でくるっと一回転し嵐のように去って行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらが書籍版です。
『ダンジョン・スクールデスゲーム』
もしよろしければ、ご一読ください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ