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人ならざる力がバレて世界中に狙われた少年、何故か人類の敵と認定されて大切な人を奪われたので復讐を決意します  作者: 寒い


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〈13話〉仲間

「何か欲しいものとか必要なものはない?」


 昨日は遅くまで柚葉さんと話していたから起きるのがゆっくりした時間になり、遅めの朝食を頂き今は出発の準備をしている。

 昼食を頂いてからここを出る予定だ。


「遠慮しないで言ってね」

「・・・・・・あったかくできる服とか・・・欲しいです」

「防寒具ね! そう言えば初めて会った時も半袖半ズボンだったもんね〜。分かった! ちょっと待ってて!」


 そう言って走って部屋を出ていく。

 また助けてもらうことになってしまうけど、借りれる物は借りておこう。

 山で凍え死ぬのは勘弁したい。


「はいっこれどうかな? 入る?」


 そう言って一枚のシャツと分厚いダウンを持ってきてくれた。

 所々ほつれていたり傷が入っていたりするが、とても温かそうだ。


「うん、憐君なら余裕で入りそうだね。はい、長袖の中にこのシャツ着て、1番上にダウン着てそしたらめっちゃあったかいから!」


 柚葉さんは持ってきたシャツやダウンを僕の体に当てて着れるか判断すし、満足そうに頷く。

 柚葉さんの言われた通りに着ると、


「めっちゃ暖かい!」

「ふふん、言ったでしょ?」

「家の中だとちょっと暑いまでありますね」

「あはは、ダウンも着てたらそりゃ暑いよね。脱いリュックの隣に置いといたら?」

「そうします・・・・・・でも、本当にこんなにいいんですか?」


 そう言いがらリュックの中を除くと、大量のお菓子やパンなどが入っていた。

 どれも柚葉さんや千代さんから貰ったものだ。

 遠慮は要らないと言われたけど、どうしても罪悪感かというか何というか、また気遣われていることに不甲斐なさを感じる。

 柚葉さん達だってそこまで金銭的な余裕があるわけでは無いはずなのに。


「その服とかは全部あげるよ」 

「えっ?」

「もう私じゃ入らないし、ちう捨てるか迷ってたんだけど、憐君ならまだ余裕持って着れるし貰ってくれない?」

「ありがとうございます!」

「うん!」


 駄目だ、卑屈になってばかりじゃ柚葉さん達からしても面倒臭いだけだろ。

 今は素直にこの人達も好意を受け取ろう。

 そして将来しっかり恩を変えそう!

 そうだ、そうしよう。絶対に。


「ご飯出来たよー! 二人とも準備手伝ってー!」

「行こうか!」

「はい!」


 千代さんに呼ばれて二人でリビングへと向かって、この家を発つまでの最後の昼食を堪能した時間は何とも言えない寂しい雰囲気があった。



 昼食を食べ終え、いよいよ出発の時間となった。

 柚葉さんに貰ったシャツ、半袖半ズボン、長袖長ズボンの順に着用し、その上にダウンを着る。

 食べ物が詰まったリュックを背負い玄関まで向かう。

 ここに来るまでは常に空腹と寒さに苦しんでいたが、今ではそれも全て解消された。

 何もかも柚葉さんと千代さんのおかげだ。

 いずれ必ず恩を返しをしようと心に誓った。


「憐君、ちょっといい?」

「どうしましたか?」

「そう言えば連絡先交換してなかったなって思って! 交換しない?」

「えっ、あ、いいですね! 交換しましょう!」


 れ、連絡先ってどうやって交換するんだ?

 やばい、分からない・・・・・・。


「・・・・・・すいません柚葉さん。連絡先ってどうやって交換するんですか」

「えっ!? QRコードで・・・・・・あっちょっとスマホ見してくれる?」


 恐る恐る質問すると、そう言われて柚葉さんにスマホを手渡す。


「ぅわお、アプリも入ってない!」


 驚きながらも僕のスマホと自分のスマホを交互にぽちぽちしたかと思ったら二つを上下に間を空けて重ねる。


「よし、これで出来ると思う・・・・・・これで文字打ったら、おっ! 出来た出来た! はい!」

「ありがとうございます」


 柚葉さんはそんなことを言いながらスマホを返してくれる。

 スマホを見ると、ホーム画面に今までは無かった緑色のアイコンのアプリが増えていた。


「これ押して柚葉って名前を押したら私と連絡取れるよ! 文字を打ってここを押したら送れるよ、やってみて」


 柚葉さんが見してくれた画面を見ると、「よろしく」という言葉が書いてあった。

 同じ「よろしく」という文字を打ち隣の横三角形のマークを押すと、文字が送信された。


「出来ましたっ!」

「うん、いいね! 完璧!」


 笑顔で親指をグッと上に向ける。


「準備出来たかい? これも持っていきな!」

「美味しそう・・・ありがとうございます!」


 千代さんが玄関まで来てくれておにぎりを二つくれる。

 まだ温かい。今さっき作ってくれたのだろう。本当にありがたい。


「寂しくなったらいつでも来ていいよ! お菓子を準備して待っとくから!」

「あんたの好きな豚汁作って待っとくからね! 遠慮せず来なよ!」


 雪も降っている冬の外だと言うのに、ここはなんて暖かいんだろうか。

 たった2日しか居なかったのに、あの頃と重ねてしまうほどに大切な、大好きな人達になってしまった。

 柚葉さんが近づいてきて、耳元で囁く。


「やっぱり嘘ついてたね、本当に辛くなったら毎日来てもいいからね」


 柚葉さんの言葉にビクッとなるが、殆どバレてた状態でスマホを見られたんだ。

 完全に嘘をついていたことを見抜かれてしまったみたいだ。


「はい、ありがとうございます! 二日間お世話になりました! ありがとうございました!」


 玄関まで見送りに来てくれた二人に頭を下げて感謝を伝え、後ろを向き歩き出す。

 ここに来た時はあんなにも寂しくて、寒くて、何かの衝撃で簡単に心が折れそうだったが、柚葉さんと千代さんの二人のおかげで、今は心が満たされている、久しぶりに感じた感覚だ。

 それはどこか懐かしさすら感じられた。



 山に戻ってから数日後、充電が残り少ないスマホでニュースを見ていると気になる記事を見つけた。

 どうやら自分を攫おうとしたヤクザがほぼ壊滅状態になっているようだった。


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