第125話 暴走
「Light sin of the Holy Cross!!」
「The Iron Fist of the Great Mother!!」
そうしている間にも、敵は魔法を撃ってくる。
一つ一つを受け、逸らし、捌く。だけど重くて速い。さすが対魔法少女の暗部、人と戦い慣れてやがる。
その点俺が戦ったことがある魔法少女は、経験と言っていいほど多くはない。魔物は本能的に襲いかかって来るから、わかりやすくてたすかるんだけど……魔法少女は、思考と試行を重ねて、フェイントまで掛けてくるからやりづらい。
だからと言って殺すわけにもいかない。ただ、あの気に食わない仮面野郎をぶん殴りたいだけだ。
「ライス、心は決まりましたか?」
「…………」
俺の問いに、黙って俯いてしまった。
もし俺側に着くと決めたら、明確な裏切り行為……ずっと、こいつらに追われることになるんだ。簡単に決められることじゃない。
「私は……いえ、私たちは、いつでも大歓迎ですからね」
「……ぇ……?」
まだ戦えないでいるコメットを守りながら、俺の本音を伝える。
「また、お話しましょう。また、美味しい物を食べましょう。また、旅行に行きましょう。また、一緒の布団で寝ましょう。依頼とか任務とか忘れて、心の底から笑いましょう。今度は、みんなで」
「てぃ……な……わ、ワタシ――」
コメットが何かを言おうとした、その時。前方に赤い光りが瞬いた。なんだ……?
数人の魔法少女の体から赤い雷が迸っている。瞳にバチンッ、バチンッと雷が弾け、さっきとは比べ物にならない圧を感じた。
「なっ、あれは……!」
コメットが驚き、一歩後退った。あのコメットでさえ警戒する魔法ってことか。
「グッ……ガッ……!!」
「ゴオッ……ギャッ……!!」
「グギギギギギッ……!!」
……どう見てもやべーよな。なんか、理性がぶっ飛んでる気がする。身体強化魔法とは違う気がするけど……。
「ライス。あれはなんですか?」
「……Knight of Madnessという魔法デス。身体強化系の魔法で間違いないですが、根本が大きく違います」
ひたいから汗を垂らし、緊張感を露わにする。
Knight of Madness……直訳で、狂う騎士ってところか。
「根本?」
「普通の身体強化魔法は、魔力によって筋肉、筋力、反応を高める魔法デス。でもKnight of Madnessは、相手の理性を飛ばし、潜在能力を極限にまで高める魔法なんデス」
なんだと……!?
おかしいだろ、そんな魔法。人権無視も甚だしいぞ……!
「使ってる人、わかりますか?」
「Sorry…あれを使えるmagic girlに心当たりがないデス」
チッ。なら、やっぱり一人残らずぶっ飛ばしていくしかないか……!
理性を飛ばした表情で迫る魔法少女たち。横っ飛びで避けると、元々仲間であるはずのコメットにも矛先が向いた。
「ライス!」
「大丈夫デス! この子たち、理性が飛んで見境がなくなってるだけデス!」
だけって言っても、パワーもスピードも段違いなんだけど!
大剣の斬撃を辛うじて避け、そのまま腹部に拳を叩きこむ。
「ハッ!!」
「ッ!? ガッ……!!」
確かな手ごたえ。重みもパワーもすべて伝えられた。――はずだった。
「ガルルッ!!」
「ッ、えっ、はぁっ!?」
めり込んだ腕が、抜けねぇ……!?
一瞬戸惑った隙を突かれ、腕を掴まれる。上からは大剣が。左右から他の魔法少女が迫って来る。
ちょっ、くそ逃げられねぇ!
仕方ないッ。オーラを纏って防御力を……!
全身をオーラで包み込む。が、奴らの方が一歩速い。まずいっ、防御が間に合わない……!
「がはっ……!?」
腹部への突然の衝撃に、体が吹き飛んで一瞬世界が明滅する。
なんだ? 今のは敵からの攻撃か? でも、どこから……!
床を転がり、なんとか体勢を整える。
顔を上げて周囲を見ようとすると、青い何かが俺の所に飛んできた。
「うぐっ……ぁ……!」
「え……ら、ライス……!?」
傷だらけで、頭から血を流しているコメット。まさかさっき、俺を庇って……!?
コメットを抱き上げ、ダメージを確認する。頭から血を流しているが、骨は折れていないみたいだ。
「ライス、どうして……!」
「……ワタシ、仲間と戦いたくありまセン。でも……もっと、もっと、ティナと戦いたくありまセン」
コメットは頭を抑え、立ち上がる。
その目には、覚悟の光りが灯っていた。
「長官。許してくれとは言わないデス。でも……理解はしてほしいデス」
「…………」
仮面の奥の目が、僅かに揺れる。少なからず動揺しているみたいだ。
沈黙の数秒。仮面野郎はそっと息を吐き、手を挙げた。
「──裏切り者を、殺せ」
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