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クイーン・オブ・魔法少女 〜いや俺、男なんですが!?〜  作者: 赤金武蔵
第4章 異国の魔法少女

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125/126

第125話 暴走

「Light sin of the Holy Cross!!」

「The Iron Fist of the Great Mother!!」



 そうしている間にも、敵は魔法を撃ってくる。

 一つ一つを受け、逸らし、捌く。だけど重くて速い。さすが対魔法少女の暗部、人と戦い慣れてやがる。

 その点俺が戦ったことがある魔法少女は、経験と言っていいほど多くはない。魔物は本能的に襲いかかって来るから、わかりやすくてたすかるんだけど……魔法少女は、思考と試行を重ねて、フェイントまで掛けてくるからやりづらい。

 だからと言って殺すわけにもいかない。ただ、あの気に食わない仮面野郎をぶん殴りたいだけだ。



「ライス、心は決まりましたか?」

「…………」



 俺の問いに、黙って俯いてしまった。

 もし俺側に着くと決めたら、明確な裏切り行為……ずっと、こいつらに追われることになるんだ。簡単に決められることじゃない。



「私は……いえ、私たちは、いつでも大歓迎ですからね」

「……ぇ……?」



 まだ戦えないでいるコメットを守りながら、俺の本音を伝える。



「また、お話しましょう。また、美味しい物を食べましょう。また、旅行に行きましょう。また、一緒の布団で寝ましょう。依頼とか任務とか忘れて、心の底から笑いましょう。今度は、みんなで」

「てぃ……な……わ、ワタシ――」



 コメットが何かを言おうとした、その時。前方に赤い光りが瞬いた。なんだ……?

 数人の魔法少女の体から赤い雷が迸っている。瞳にバチンッ、バチンッと雷が弾け、さっきとは比べ物にならない圧を感じた。



「なっ、あれは……!」



 コメットが驚き、一歩後退った。あのコメットでさえ警戒する魔法ってことか。



「グッ……ガッ……!!」

「ゴオッ……ギャッ……!!」

「グギギギギギッ……!!」



 ……どう見てもやべーよな。なんか、理性がぶっ飛んでる気がする。身体強化魔法とは違う気がするけど……。



「ライス。あれはなんですか?」

「……Knight(狂禍) of ()Madness(騎士)という魔法デス。身体強化系の魔法で間違いないですが、根本が大きく違います」



 ひたいから汗を垂らし、緊張感を露わにする。

 Knight of Madness……直訳で、狂う騎士ってところか。



「根本?」

「普通の身体強化魔法は、魔力によって筋肉、筋力、反応を高める魔法デス。でもKnight(狂禍) of ()Madness(騎士)は、相手の理性を飛ばし、潜在能力を極限にまで高める魔法なんデス」



 なんだと……!?

 おかしいだろ、そんな魔法。人権無視も甚だしいぞ……!



「使ってる人、わかりますか?」

「Sorry…あれを使えるmagic girlに心当たりがないデス」



 チッ。なら、やっぱり一人残らずぶっ飛ばしていくしかないか……!

 理性を飛ばした表情で迫る魔法少女たち。横っ飛びで避けると、元々仲間であるはずのコメットにも矛先が向いた。



「ライス!」

「大丈夫デス! この子たち、理性が飛んで見境がなくなってるだけデス!」



 だけって言っても、パワーもスピードも段違いなんだけど!

 大剣の斬撃を辛うじて避け、そのまま腹部に拳を叩きこむ。



「ハッ!!」

「ッ!? ガッ……!!」



 確かな手ごたえ。重みもパワーもすべて伝えられた。――はずだった。



「ガルルッ!!」

「ッ、えっ、はぁっ!?」



 めり込んだ腕が、抜けねぇ……!?

 一瞬戸惑った隙を突かれ、腕を掴まれる。上からは大剣が。左右から他の魔法少女が迫って来る。

 ちょっ、くそ逃げられねぇ!

 仕方ないッ。オーラを纏って防御力を……!

 全身をオーラで包み込む。が、奴らの方が一歩速い。まずいっ、防御が間に合わない……!



「がはっ……!?」



 腹部への突然の衝撃に、体が吹き飛んで一瞬世界が明滅する。

 なんだ? 今のは敵からの攻撃か? でも、どこから……!

 床を転がり、なんとか体勢を整える。

 顔を上げて周囲を見ようとすると、青い何かが俺の所に飛んできた。



「うぐっ……ぁ……!」

「え……ら、ライス……!?」



 傷だらけで、頭から血を流しているコメット。まさかさっき、俺を庇って……!?

 コメットを抱き上げ、ダメージを確認する。頭から血を流しているが、骨は折れていないみたいだ。



「ライス、どうして……!」

「……ワタシ、仲間と戦いたくありまセン。でも……もっと、もっと、ティナと戦いたくありまセン」



 コメットは頭を抑え、立ち上がる。

 その目には、覚悟の光りが灯っていた。



「長官。許してくれとは言わないデス。でも……理解はしてほしいデス」

「…………」



 仮面の奥の目が、僅かに揺れる。少なからず動揺しているみたいだ。

 沈黙の数秒。仮面野郎はそっと息を吐き、手を挙げた。



「──裏切り者を、殺せ」

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