第123話 ブチ切れ
「――あれ……? ここは……」
視界が元に戻ると大草原は影も形もなくなり、打ちっぱなしのコンクリート壁に囲まれた部屋だった。
出入口は一ヶ所のみ。それ以外は簡易的なベッドだけで、冷たい白色LEDが光っているだった。
「ここ、ワタシが任務の時に寝泊まりするprivate roomデス」
「それにしては、随分と寂しいですね」
個室なら、もっと可愛くデコレーションすればいいのに。
……って、何を考えてるんだ。集中しろ、集中。
顔を何度か叩き、コメットの後に続いて部屋を出る。外は長い廊下が続き、等間隔に並んでいる扉が左右に伸びていた。
「ホラー映画に出て来そう」
「ワタシも最初は怖かったデス。さあ、こっちデスヨ」
誰もいないことを確認して、コメットが廊下を走る。
人の気配はない。完全に無人みたいだ。
けど、ここまで来てはたと思った。まだコメットの所属している組織のことを聞いていなかった。
「ライス。今更ですけど、あなたどこの組織に所属しているんですか? 魔法少女協会?」
「そう言えば、伝えていなかったデスネ」
コメットが指先に光りを灯し、空中に煌びやかな文字を書いた。
「Magical Girl Association - Secret Division…日本語訳すると、魔法少女協会の暗部デス」
「暗部?」
聞きなれない言葉に、ついオウム返しで聞いてしまう。
「普通のmagic girlは魔物と戦うことをメインに行っていマス。でも暗部の人間は魔物以外に、危険思想のmagic girlと戦うんデス。大きな力を持って、心が悪に染まるのはよくあることナノデ」
確かに、そうなのかもしれない。魔法少女の力は、人類では太刀打ちできないほど強力だ。制御する組織があったとしてもおかしくない。
コメットの案内で、無人の廊下を走る。
何回かの角を曲がり、階段を上に登ると、はたと気付く。
「いつも、こんなに人が少ないんですか?」
「確かに……いつもはもっと賑わっていマス」
ということは……。
思考がとある答えに行き着こうとした、その時。階段が開け、唐突な眩しさが目を焼いた。
直後、背筋を駆け抜ける甘い痺れ。これは──
「ライス!」
「ッ!」
俺の意図を察し、コメットが前面に魔法陣を展開する。四方から迫る炎、氷、雷、風の魔法を防ぎ切り、視界が晴れた。
「やっぱりか」
「Jesus…」
体育館ほどの広さの空間に、数十人の魔法少女たち。さっきまで気配すら感じなかったのに……さすが、暗部の人間ってわけか。
痺れるような敵意を向けてくる魔法少女たちの中心に、1人だけ異質な存在感を持つ奴がいる。
間違いない……あいつが、コメットのボスだ。
フルフェイスのマスクだから、性別はわからない。けど魔法少女たちを従えてるなら、十中八九女だろう。
『──初めまして、ツグミ。日本の魔法少女よ』
ボイスチェンジャーか。正体を明かしたくないみたいだな。
「初めまして。……ボイスチェンジャーに、言語翻訳の魔法石まで使うなんて、徹底していますね」
『無礼は承知しているが、命を狙われる身なのでね。このままで許せ』
……随分と上からだな。自分の力に自信があるのか、周りの魔法少女たちを信じているのか。何にせよ、ここからは喧嘩だ。誰が来ようと、何が飛び出そうと、全力で叩きのめす。
全身からオーラを滾らせると、敵魔法少女たちも殺気を漲らせる。
が、仮面野郎が手を挙げた。同時に少女たちから殺気が消える。
『落ち着け。まずは話しをしようじゃないか』
「話し……? 私としては、一刻も早くその顔面に拳をぶち込みたいんですが」
『……何をそんなに怒っている?』
本当にわからない、とでも言うように肩を竦める。人の気持ちがわかる大人になりましょうって、親に言われなかったのか。
「理由は四つ。一つ、私のことをこそこそ嗅ぎ回ってきたこと」
『我々暗部は、魔法少女の力を悪用する者が出ないよう監視する任務がある。調査は当たり前のことだ』
さも、当然のことのように言うな。
「二つ、ライスの……コメットの良心を利用したこと」
『私の部下だ。公私混同せず、忠実に命令をこなす、優秀な子だよ』
仮面野郎の言葉に、コメットが顔を伏せた。
思わず、コメットの手を取り、強く握る。大丈夫、俺だけは味方だ、と言うように。
「三つ、自分は高みの見物を決め込み、私の力をコメットで試したこと」
『どの程度の実力か確認しなければならんからな。コメットの力であれば、可能と判断した』
……ああ、そうか。あくまで自分の言動を正当化しようってのかい。
『して、四つ目は?』
「ん? あぁ。総じて、あんたが気に食わねぇ。──ぶっ飛ばす!!」
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