第115話 罪悪感
「ライス……いったいどうしたんですか? 悩みがあるなら、相談に乗りますよ」
なるべく刺激しないように、ゆっくり近づきながら声を掛ける。
けどコメットは泣きながら首を横に振り、俺から距離を取った。
「ち、近付かないでくだサイっ。ワタシ……ワタシは……!」
「わかった、わかりました。……大丈夫ですよ。落ち着いて。私は何もしませんから」
これ以上近付くと、また逃げられかねない。今はここでステイだ。
どうしてこんなに怯えているのか……わからない。とにかく、訳を聞かないことにはどうしようもできないぞ。
「ゆっくりでいい。自分の言葉で話してください」
「っ…………」
ぐっと言葉を飲み込み、地面を握る。
目からあふれ出す涙は止まらないが、さっきよりは幾分落ち着いているように見えた。
そのまま待つこと数分。顔を伏せたまま、コメットが口を開いた。
「ワタシ、ティナの……magic girlツグミのファンデス。大好きデス。嘘じゃない……本当に好きなんデス」
「え、ええ、知っています」
そこまで好き好き言われると、こっちまで恥ずかしくなってくるんだけど。
「だからアナタと仲良くなりたいというのは、本当の気持ちデス。友達として、親友として……できれば体の関係も持ちたいデス」
「そ……そうですか」
最後、チラッと自我が見えたぞ。
そっと息を吐いて、状況を整理する。さっきコメットは、「私を探っているのか」と聞いたら飛び出してしまった。加えて、この子が俺を好いていてくれてるのは、本当だろう。ということは……。
「罪悪感……ですか?」
顔を伏せたまま、小さく頷くコメット。そういうことか。
「私のファンと言っておきながら、私の正体や裏を探るという罪悪感を覚えてしまっていると……優しいんですね、ライスは」
「っ……怒ってない、デスカ……?」
「こんなことで怒るほど、小さい人間じゃないですよ」
もう一度コメットに近付き、傍に膝をついて頬に手を添える。一瞬、体がびくっと反応したが、ゆっくりと顔を上げた。
怒られている子供みたいな表情……可愛く、可哀想で、どこか儚げに感じた。
「教えてください。いったい、どういう命令をされたんですか?」
……。
…………。
………………。
「はい? 私がアメリカの脅威になるか調べて来いって……そんなこと言われたんですか?」
まさかすぎる命令だ。俺がアメリカと敵対って……何故に?
きょとんとする俺を見て、コメットは小さく頷く。
「Americaは協会の総本部もある、世界最大のmagic girl大国デス。世界中のmagic girlの情報が集まり、新しい人や引退した人まで膨大な情報を有していマス。……そこに、突然アナタが登録されマシタ。素顔、年齢、能力、そのほとんどが謎のmagic girlとして」
あ……そういや、情報のほとんどを登録してなかったな。キキョウさんたちは知っているけど、外部の人からしたら謎すぎて怪しいに決まってるか。
「正体不明の魔法少女だから、向こうのお偉いさんが私を危険人物か確認するためにライスを寄越した……ということですか」
「YES…」
コメットはしゅんとしてしまっているが、お偉いさん方の言いたいことはわからなくもない。逆の立場なら、俺だってそういう判断をする。
言っちゃなんだが、俺はパワーだけで言えばこの国でも随一だ。無敵状態のキキョウさんもお墨付きのパワーを持っている。そんな魔法少女が自国に牙を剥いたら……考えるだけで恐ろしい。
「それで、私はアメリカさんと敵対しそうですか?」
「そ、そんなことないデスっ。むしろワタシは、ずっとティナのことを信じていました……!!」
「あはは。大丈夫です、私もライスのこと、信じていますから」
必死の表情のコメットに、つい笑いがこみ上げてくる。
でも一つだけ気になるのは……。
「ライス。もし……もしですよ? あなたが私を危険人物だと判断したら……どうしていましたか?」
真っ直ぐ、コメットの目を見つめて問いかける。
と……コメットも俺の目を見つめた。
「ワタシ、ティナのファンデス。でも……その前に、祖国を愛する者デス。危険人物は排除しマス。……それが、誰であろウト」
その目は真剣で、迷いがなく……どこか、ほの暗いものを感じた。
続きが気になる方、【評価】と【ブクマ】と【いいね】をどうかお願いします!
下部の星マークで評価出来ますので!
☆☆☆☆☆→★★★★★
こうして頂くと泣いて喜びます!




