第108話 温泉
宿陽ノ國屋に戻り、女将さんの案内で温泉に通された。
よく魔法少女も日帰りで訪れるらしく、身体的な傷はもちろん、精神的な傷、思考の疲れも取ってくれる効能があるらしい。
俺も風呂は好きだ。近所のスーパー銭湯にも行くことがある。
けど……まさか能動的に、美少女と混浴することになるなんて思わなかった。
「あー……ライス、やっぱり私、部屋の内風呂に入ろうかと……」
「ティナはワタシとお風呂、入りたくありまセンカ? 確かにティナと比べたら、つまらない体ではありマスガ……」
「う、ううんっ。嫌じゃないですよっ。でも……」
「じゃあ、No problemデスネ!」
聞けよ人の話を!
脱衣所に入ると、コメットは指を振るって軍服を光りの粒子に変えた。一瞬で全裸になり、堂々と仁王立ちして俺のことを待っている。
ごめん、そんなに堂々としないでっ。せめて大事なところは隠して……! いくら温泉でカメラを切ってるからって、恥ずかしいでしょう……!
「ほらティナ。ワタシ、風邪引いちゃいマス」
「うぐっ……わかりましたよ……」
俺も指を振り、ワンピースを光りの粒子に変えてタオルを巻いた。さすがにいきなり全裸っていうのは抵抗がある。
「むむっ。ティナ、ONSENに入る時はタオルを入れちゃだめデス」
「じゃあそんなに見ないでください」
「お気遣いなくデス」
「あなたが言うセリフじゃないでしょう」
ジト目を向けてくるコメットを無視して、温泉に通じる扉を開ける。
室内温泉はなく、すべて露天風呂。手前にはシャワーや休憩スペース。右奥にはサウナまで完備されている。だというのに、異様に温泉が広い。多分、外から見た敷地より広がっている。どうなってんだ?
「Oh!! 空間を広げてマスっ。超高等魔法の一つデス!」
「あぁ、やっぱり魔法の力なんですね」
そりゃあ、魔法少女御用達の宿なんだ。これくらいできて当然か。
椅子に腰かけ、シャワーを浴びる。あぁ、この緩やかな水圧がマッサージみたいで気持ちいい。
コメットも隣に座り、石鹸で全身を洗う。本当に隠す気はないのか、全裸のまま。これじゃあ、気にしてる俺が馬鹿みたいじゃないか。
俺もタオルを光りの粒子に変えて、裸になる。そうだ、気にすることはない。今は俺も女。向こうも俺のことを女と信じ切ってる。だから大丈夫。大丈夫のはずだ。
「じー……」
「…………」
「じーーーー……」
「……あの。そんなに見ないで。洗いづらいです」
「お気遣いなくデス」
「遣うわ……!」
さすがにここまで凝視されてると、全部がやりにくい!
コメットのことを無視して、シャワーで念入りに……それはもう念入りに洗う。特に髪の毛。まだロッテン・スライムの異臭が髪の毛についてる気がする。
「髪の毛長いと、大変そうデス。ティナが髪の毛を洗ってる間、ワタシが背中を流しまショウカ?」
「え、いいんですか? それはありがたいですけど……」
「YES!! 任せてくだサイ!」
コメットがボディソープを手に、俺の背中に回る。誰かに背中を洗ってもらうのって、初めてかも。
髪の毛をじっくり洗っていると……ぴとっ。背中にコメットの手が触れた。ボディソープを泡立てているのか、もこもことした触感が心地よく、こそばゆい。
「Wow…ティナの肌、super綺麗デス……何か特別なスキンケアをしていマスカ?」
「あはは、何もしてないですよ。言ったじゃないですか。私の願いは美少女だって」
完全無欠の美少女だから、スキンケアとかなんにもしなくても美少女なんだよね。肌はいつまでも、モチモチぷにぷにすべすべなのだ。
「シミも傷もありまセン……触れれば触れるだけ吸い付くお肌、気持ちいいデス」
「そんなに褒められると、悪い気はしませんね」
コメットが背中を洗ってくれている間、俺も髪の毛を存分に洗えた。後は念入りにシャワーで流して……。
――ふにっ。
「ッ!? ちょっ、ライス……!?」
こ、コメットの手が俺の前側にっ……! てか胸とか内ももに触れて来たんだけど!?
そのせいで体が密着して、大きすぎず小さすぎない、程よいお碗型のお胸様が背中に当たってる!
「背中だけじゃ足りないデスヨ。ONSENに入る前は、全身洗わないとデス」
「だだだだだからって前の方はいいですから! 自分で洗いますって!」
「NO. ワタシに任せてくだサイ」
手際よくというか、手慣れているというか、全身まさぐるように洗ってくる。いや、これ洗ってるというか、本当にまさぐってないか!?
「ちょっ、ライスやめっ……んんっ」
「Ah…ティナの体、とっても魅力的デス……♡ ハァ、ハァ、ハァ……! ティナ……magic girlツグミの裸……!」
ッ! そ、そこはダメっ……にゃああああああああああ!?
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