第101話 いい子
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「明日の16時に東京タワーね。いい約束を取り付けたじゃないか、ツグミ」
その日の夕方、本部でパフェを食べていたキキョウさんに説明すると、ニカッと笑ってスプーンでこっちを指してきた。お行儀が悪いから止めなさい。
「どうする? 見張りを何人かつける?」
「いえ、私1人で問題ありません」
「本当に? びりゅーから聞いたけど、相当な実力者なんでしょ?」
ビリュウさん、報告してたのか。
確かにあの量の魔物を一瞬で殲滅したのは驚いた。いったいどんな力を使ったのか気になるな。
「明日は話を聞くだけなので、大丈夫です」
「そう……でも危なくなったら、直ぐ逃げるんだよ」
「はい!」
翌日。学校終わりに即ツグミに変身して、屋上から東京に向かって飛ぶ。
時間まであと30分もある。このまま走っていけば、余裕をもってコメットを待てるな。
東京タワーが見えてきた。脚に力を込め、思い切り跳躍。何回か鉄骨を足場にし、トップデッキまで上がった。
「……ん? あれ、コメット……さん?」
「! お待ちしてマシタ、ツグミ!」
俺より先に、もう着いていた。昨日見た軍服姿で。
綺麗な敬礼で迎えられ、俺も釣られて敬礼モドキをしてしまった。
「早いですね。約束まで時間があるのに」
「ワタシ、ツグミに会える日を楽しみにしてマシタ。どんな人なのカ、何を話そうカ、朝からこの景色を見て考えてマシタ」
朝からここに!? いくら魔法少女とは言え、かなり強風で寒いだろうに。
「す、すみませんでした。良ければ暖かいところに移動しますか?」
「NO. 問題ありまセン。さあツグミ、こちらへドウゾ。コーヒーとドーナッツを用意していマス」
至れり尽くせりすぎる。手ぶらできたのが申し訳ないな。
強い風の中でも椅子とテーブル、カップやドーナッツが飛んでいかない。これも魔法少女の力の1つなんだろうか。
「朝からずっとここにいて、暇じゃなかったですか?」
「まったくデス。ここから見渡す日本、とっても美しいデス。ツグミには負けますケド」
キュン。何この子、イケメンじゃない? 俺男なのに胸キュンしちゃった。
近付くと、コメットが俺の座る方の椅子を引いてくれた。こんなところまで紳士なのか。
「Ladies first.」
「さ、さんきゅー……」
ダメだ、全てのことで上を行かれてしまっている。なんとかして主導権を握らないと。
「コメットさんは軍人なんですか?」
「NO. これはmagic girlのユニフォームデス。祖国を守るsoldier、強くて逞しくてカッコイイデス。とても尊敬していマス」
ふむ。ということは、アメリカの魔法少女協会の人間……? けどキキョウさんは、この人を見たことがないって言ってたような。
「ということは、魔法少女の契約時には『強くなりたい』と願ったのですか?」
俺の質問に、コメットは首を横に振って満面の笑みを浮かべた。
「ワタシ、モモチとの契約時、病気で死にかけてマシタ」
「え」
いきなり重い話をされた。それ、そんな笑顔で言うことじゃないよ。
「病院にも見放されて家のベッドで死ぬのを待っていた時、モモチの声が聞こえマシタ。そこで願ったんデス。……死んだら、お星様になりたいッテ」
「お星様……?」
「昔聞いたことがありマス。人は死んだらお星様になる、ト。恥ずかしながら、死にかけてたワタシはモモチの声を幻聴と思ってイテ……」
「星になりたいと願った……ということですか」
相当恥ずかしい過去なのか、真っ赤になった顔を手で覆って伏せてしまった。そんなに恥ずかしがることはないと思うけど……というか、そんな容態だったコメットを魔法少女にするとか、モモチのやつ鬼かッ、悪魔かッ。
「最初はちんぷんかんぷんデシタ。でもこの力を手に入れてカラ、病気は完治。doctorも奇跡だと言っていマシタ。両親もすごく喜んでたことを、今でも昨日のことのように覚えていマス」
目をランランと輝かせて、当時のことを語るコメット。
嘘はついていない……と思う。嘘をつく理由もないし。
「コメットという名前も、あの時の閃光も……全て星の力なんですね」
「YES!! ワタシ、生きながらに星になりまシタ! とっても幸せデス!」
衝撃すぎて話が頭に入ってこない。そんな理由で契約する魔法少女もいるんだな。……俺が言えた義理じゃないけど。むしろ俺の方が酷いまである。
「ワタシの話ばっかり、つまらないデス! ツグミのお話もたくさん聞きたいデス!」
「わ、私の話ですか? いいですけど、聞いてもつまらないかと……」
「そんなことないデス! ワタシこの日の為に、どれだけツグミのことを調べタカ!」
調べた? 俺のことを? まさか俺のことを探ってるんじゃ……?
勘ぐった直後、ドサッと足元にカバンを置かれた。開いたチャックから中身が見えるが……全部、俺のグッズだった。
「ワタシ、ツグミの大ファンデス。今まで出た雑誌、全部買ってマス。広告のイメージになった商品、コラボしたグッズ、お菓子等、全部全部ぜーーーーんぶ買ってマス」
「そ……そうですか」
まさかの事実ッ。コメット、俺のオタクだった……!
……こんなの、どう報告すればいいんだよ……?
「あの……祖国にいるツグミファンに自慢したいので、一緒に写真撮ってもらえませんか?」
「あ、はい。私でよければ」
「〜〜〜〜ッ。YES! YES!! YES!!!!」
コメットは顔を真っ赤にして、全身で喜びを爆発させている。
もしかして……この子、いい子なのでは?
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