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Episode-79 『作戦会議・百合神の場合』


「さて、この荒治療は吉と出るかそれとも凶と出るか」


 前方のモニターは通常時の五十分割ではなく、今は五分割されていた。

 そのモニターを見ながらポツリと呟く。

 

 二泊三日の宿泊学習ミッションが始まってまだ大して時間は経っていない。幸いなことにベスト5は全組前向きな心持ちのようだが、当然ながらワーストの方はそこまで乗り気ではないだろう。まぁ、だからこそ事前説明は行わずに今日急遽決まったかのように伝えて、この部屋へと誘ったのだがな。


 「ふぅー」、再びモニターを眺め息を吐く。

 当然ながらいつもと百合の花園の状態が異なっていようが、私にできることは同じだ。過度に干渉せずに、向こう側から何か要請があった際にのみ動く。

 受動的な手助けはするが、主体的に関わりはしない。他に私にできることといえばイベントなどを催し、百合を促進する環境を整えることくらいだ。

 

 ――何故ならば不用意に関われば、


「百合純度が落ちる~、でしょ」


 そこで私の心の声よりも先に高い女の声が割り込んできた。続いて後ろからしなだれかかる様な少しの重みが私の肩にかかる。

 「ちっ」、それに対して私は舌打ちで答えた。理由は簡単、不愉快だからだ。さっきまでご機嫌だったのに感情が急転直下だ、まったく。


「何の用だ、BL神」


 振り向かずにそう問いかける。


「お姉ちゃんて呼びなって言ってるでしょ、ユーくん」


「ユーくんと呼ぶなと言っているだろう、BL神」


「ヒヒヒッ、可愛くな~い」


 甲高い声でそう笑うと肩から不意に触れる感触が消える。

 そして私がやれやれと首を振りながら振り返ると、そこには自ら持ち込んだのかやけに豪奢な椅子に座るBL神の姿があった。

 …ここは私の部屋なんだがな。


「前回にもう話しかけてくるな、と言ったはずだが?」


「前回にそれは無理、って言ったはずだよ。それにユーくんの箱庭に干渉しないって約束は守ってるから安心して。今日は単純にユーくんに会いに来ただけ」


「――ずいぶん余裕だな」


「ヒヒヒッ。わかる?」


 私の言葉にBL神が楽しげに笑う。

 BL神のBLの箱庭の仕組みと私の百合の箱庭の仕組みとほとんど変わらない。催されるイベントや箱庭の内部構造は変わるだろうが、監視体制は同じ。つまり普段BL神がいる場所も今私がいる場所の様に箱庭全体を監視するモニターが設置してある。

 つまり、

 

「自身の箱庭の管理をほっぽいて私の所に茶々を入れに来るのだ、よほど順調なのだろう」


「うーん、引っかかる言い方だなぁ。箱庭の管理も確かに大事だけどユーくんとの交流も同じくらい大事だよ」


「私は全くそうは思わん、見解の相違だな」


「冷たぁい。…ま、確かに順調なのは事実だけどね♪ ぶっちゃけ、こっちは順風満帆青信号。やっぱこういうのも神の力に影響されるのかねぇ」


「…ちっ」


 ウキウキと言った様子が嫌でも伝わってくるその言葉に私は再び舌打ちで答える。

 神の力とは、司る対象の人間世界の世間一般での認知度にほぼ比例する。そして、今の私とBL神の力は正直言えばBL神の方が上だ。非常にひっじょーに不愉快だがな。

 というか、ズルい。力の上昇の仕方が幸運すぎる。ここ数年で更に人間界でBLの知名度が上がったことでこいつは力は昔以上に増しているのだ! 


「あー、百合も人間世界のドラマとかで大ヒットして流行しないものかなー」


「あっ、ユーくん遅れてる。今はそういうのバズるっていうんだよ」


「バズる? それは大ヒットとか流行とは違うのか?」


「一気にボン!って話題になるのがバズるだよ」


「なるほど…。では言い直そう、百合も人間世界のドラマとかでバズったりしないものかな」


「『お姉さんずライク』とかでいけるんじゃない?」


「話題にはなるがそれ炎上だろ。認知度が増えても悪感情では神の力は増えるどころか減るんじゃないのか? …ん? ちょっと待て、仮に炎上で話題になったらそれはそのバズるに含まれるのか?」


「むっ、それは確かにびみょーだね。どうなんだろ?」


 と、まぁそんな風に益体の無さすぎる神同士とは思えない話をBL神としていたところで、


『百合神~。ちょっと聞きたいことあんねんけど~!』


 そんな声がモニターの一つ――『ルーム50』から聞こえてきたのだった。


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