Episode-77 『作戦会議・関西弁JKの場合』
「さってと…どないしましょか?」
「う~ん、悩みどころだねぇ」
そんなわけでゲスト二人が自分の部屋に引っこんでもうたんで元通りの二人きりとなったうちと夜さんは、テーブルに対面に座って作戦会議を始めていた。
うーん、この展開は完全に予想外やねんな。ほんまどないしよ。
「まずはあの人らの性格理解せなあかん思うて触れ合い目的で用意したたこ焼きパーティやったんですけどね。まずは話さな始まらへんですよねぇ」
「そうだね。二ノ前先生はともかくもう一人の子は名前しかわからないしね。鬼村桃さんだっけ」
「ですね、見た目的には完全に輩でしたね」
「輩…、まあ確かに不良少女感はあったよね。スケバン的なね」
スケバンって…今日日あんま聞かんですよ夜さん。
でもニュアンスとしては間違ってへんか。そんな感じやし。
「とは言っても、こっちは現状名前と見た目しか情報があらへんのですよね。人は見かけによらへんってパターンもあるし、やっぱ実際話してみな何とも言えへんですよね」
「うーん、そうだね」
「そういや、夜さんはもう一人の二ノ前先生と知り合いやってんですよね。どんな人なんですか」
「どんな人かー。――あっ、ちなみにさっきも言ったけど会ったのは一回だけで、その後に会ったとかもないからね! 顔見知り以上友達未満の関係性だから! そこの所だけ誤解しないでね!」
「えっ、あっはい。別にそこは疑ったりとかは全くなかったですよ」
なんややけに焦ったような夜さんの答え方にちょいと引っかかるけど、そこで夜さんが安心した様に「コホン」咳払いを一つして、
「それならよかった。それで二ノ前先生なんだけど、さっきの態度で紗凪ちゃんも薄々感ずいてはいると思うんだけど、とんでもなくマイペースの変わった人だよ」
「まぁ、そりゃ何となく察しがついてました」
「だね、あとこれは私のカンというか予想だけどプロ意識はかなり高いと思う。実際、あの人って今の紗凪ちゃんぐらいの時に漫画家デビューして今まで常に第一線で活躍してるわけだしね。漫画家としては一流だよ」
「おー、そりゃ凄いですね! ん? というかあの人いくつくらいなんですか?」
「たしか私と同い年だよ」
「へぇー、そなんや。わっかいなぁ~」
夜さんは夜さんで大人びてて知らない人が見た目だけで実年齢当てるのはムズそうやけど、あの二ノ前? いや須能? この場合どっちゃでもええか、とりあえずあの人も一見しただけじゃ年わかりにくかってんな。年齢不詳な容姿っていうんやろか。子どもにも見えるし、大人にも見える的な。
「とりあえず、私の提案言ってもいい」
と、そこで夜さんが小さく挙手をする。
さすが、夜さん! もう名案が浮かんだんやろか!
「はい、どうぞ夜さん」
「二ノ前先生のそのプロ意識からして多分一回部屋で漫画描き始めちゃったら当分部屋から出てこない気はするんだよね」
「こんなとこに来てまで漫画描き続ける様な人ですもんね。というか多分あの二人が交流無くってワースト5に選ばれた原因ってあの人がずっと漫画描いてたからやないですか」
「ははっ…、ありえるね」
夜さんが困った様に笑う。
ほんで、何となく夜さんの言いたいことがわかってきた。確かに一度部屋に引っこんだあの人にすぐさまもう一回アクションかけるのは難儀な気がする。つまりは、
「まずは、鬼村桃の方から」
「うん、攻略していこうか」
とりあえず目標は決まった。ほんでその作戦にはうちの方に考えがある。
「なら、いい作戦があります」
「おっ、いいね。じゃあ今度は紗凪ちゃんの提案を聞かせて」
「はい、という訳でまずは鬼村さんとやらを部屋から誘き出しましょうか。――そんで、ここは恒例のあいつの手も借りるとしましょう」
ニヤリと笑い、まだ大量に余っているたこ焼きの生地の入ったボウルを手に立ち上がる。
そして、
「百合神~。ちょっと聞きたいことあんねんけど~!」
そう天井に向かって呼びかけた。




