Episode-74 『交差する世界・関西弁JKの場合』
ちなみに百合神から送られてきた用紙に書いてあったミッションの詳細内容というのは、
・開始時刻は明日の正午12時
・終了時刻は三日後の同じく正午12時
・開始時刻になると、壁の一部が入り口に変形してワースト5のペア二人が入室。終了時刻の退室時も同様。
・二人の新たなプライベートルームは今ある既存のプライベートルームと並んで追加される。
PS:無事ミッションを完遂した場合には、特別報酬有。
ってな感じやった。
大方予想通りやったけど、報酬有ってのは正直予想してへんかったやな。
まぁ、それの在り無しでやる気がガラッと変わるのは現金な話やし、最初からうちにできることはするつもりやったけど、やっぱモチべはちょいと上がるわな。
うちも人間やし。
そんなわけで、昨日は百合神との通信を終えてからは夜さんとの『報酬って何でしょな~』トークをしてその後はいつも通りの一日を送った。
そして、一日が経ち今はミッション開始日の11時50分。いよいよ、宿泊学習開始目前という訳や。
「あー、なんやこう時間が迫ってくるとちょいドキドキしますね」
テーブルに座りながら、台所にいる夜さんに話しかける。
ちなみに夜さんは来たる二人のおもてなし料理の下準備の真っ最中。といっても、二人で話し合った結果、作るのはたこ焼きに決定したので、食材の下準備が夜さん担当で実際の料理はうち担当ってな風に分担されていた。
せっかくもてなすんやから二人の合作がいいのではないかという夜さんの気遣いやな。
「そうだねぇ。どんな人たちだろうね」
「百合神曰く、悪人やないんでしたよね。やっぱお互いに全く干渉せぇってことは、会話苦手な二人なんですかね?」
「うーん、どうだろうね? あとはもう完全な一匹狼な人とか、それに片方の人だけが問題児って可能性もあるよね。仮に用事のある時以外はずっとプライベートルーム内にいられちゃったら、もう一人の人は会話の糸口すらない訳だしね」
「あー、なるほど。そういうパターンもあり得るんかぁ…。まぁ、どっちゃにしてももう二週間以上たっとるのにそんな感じの関係性なんやから、厄介な関係では当然あるでしょうね」
そんな風に夜さんと何となくこれから三日間を一緒に暮らす二人について話していると、
「ん?」
そこで壁の一部が不意に変化した。
白いだけだった壁にいきなし黒い線が引かれたと思うと、その線が段々とドアの形を造っていく。
「あれ? 夜さん今の時間って?」
「11時55分だね」
「はぁ~、5分前行動かいな。中学生の学級目標やないんやから」
「いやっ、紗凪ちゃん。たぶんあれって」
「はい? ――あっ!」
その夜さんの言葉に再びその造り出されたドアに目を向けたところでようやく気付く。
新たにできたドアは2つ。そして、その両方がうちらのプライベートルームの横に並ぶように追加されていた。
「あー。あれって、もう二人のプライベートルームかいな」
そのドアがどこに続いているかを理解して、座っていた椅子から立ち上がりそのドアへと向かう。
「紗凪ちゃん?」という夜さんの声を背に受けながら「ちょいと、確認で~す」と答えて新たにできたドアの前へと到着した。
予想通りご丁寧にドアにはネームプレートがついていた。
はてさて、新たな同居人の名前は、
「鬼村桃?」
そうドアの一つにかけられたネームプレートの名前を読む。
当然ながら、見覚えはない。
――つーか、ごっつい名前やなこの人。鬼に桃て、これ絶対初見やと桃太郎連想してまうやろ。…まぁたぶん本人嫌がるやろし、会ってもそこには触れへんようがええやろな。
さて、あと一人は、
「紗凪ちゃーん!」
と、少し横へと移動してもう一方のネームプレートを見ようとしたところで夜さんに名前を呼ばれる。
「はーい。どうしはりました?」
「これこれっ」
夜さんが壁を指差して言う。
そこにはこのドアが造られた時の様に黒い線が引かれ始めていた。
っと、もう時間かいな。
今度こそは来客の入ってくる扉なはずやな。
チラッとだけもう一つのネームプレートを確認し、夜さんの元へと小走りで戻る。
そして、夜さんの隣についた時には黒い線で描かれたそこそこの大きさの扉が完成しようとしていた。
「いよいよですね」
「そうだね。仲良くできるといいけど」
若干緊張した声で夜さんがそう言った瞬間だった。
ドアがゆっくりと開き、2つの人影が入ってくる。
そして、そこでうちの視線は、
―――やっ、輩がおる!!
向かって左の同い年ぐらいのやつに集中した。
金髪にピアスにスカジャンや! それに目つきワルッ!! なんや、こいつ!? ヤンキー麻雀あったら役満やろ!!
見た目で人を判断するんはあかんってのは百も承知やけど…もろヤンキーやん!!
キャラ立ちまくりか!!
そして、そんな左側の新たな同居人に興味津々のうちとは対照的にチラリと見た夜さんの視線はそのヤンキーの隣――地味そうな黒縁眼鏡に黒髪の年上っぽい人に向かっていた。
その表情はどこか不思議そうで『?』が顔に浮かんでいるよう。
そんな夜さんをうちが不思議そうに見ていたところで、
その地味めの人が、
「ん? 望城レイン?」
とポツリとそんなことを口にした。何故か夜さんを見ながらだ。
…いや、誰やねん? 相手は国民的人気女優やぞ、勘違いにしても――、
「ああっ! 二ノ前先生!!」
が、そこで何かを思い出したように夜さんがハッと声を上げる。
あれ? ってことは夜さんが望城? 望城…って誰?
それに二ノ前って?
――うちがさっき見たネームプレートには『鬼村桃』と『須能一』って書いてあったんやけど?
ん?
んんー?
んんんー?
――あかん、なにがなんやらや。
そんなわけで、二泊三日の宿泊合宿は混乱の幕開けを迎えたんやった。




