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Episode-69 『お酒を飲んだら呑まれたよ・超清純派女優の場合③』

 

「ああ、うん。楽しかったねぇ~」


「?」


 まずい紗凪ちゃんの言葉の意図が読めない。

 「昨日はホンマに楽しかったですね。いやぁ~、ええ日やった」、これは普通に受け取ればお花見のことを言っているのだろう。

 楽しかったですね→お楽しみでしたね、的な変換もできなくはないが流石にそれは穿った見方をし過ぎな気もする。


 あー、もう! 起きたのが紗凪ちゃんのベットじゃなければこんな深読みをしなくてよかったのに!

 うーん、困った。どうしたものか?

 と、そんな風に私がどう紗凪ちゃんに接すればいいのかを思い悩んでいたところで、


「あのー、夜さん。もしかしてですけど、昨日のことあんま覚えてはりませんか?」


 紗凪ちゃんが子首を傾げながらいきなり核心を突いた問いを投げかけてきた。

 さっ、流石紗凪ちゃん…! 相変わらず鋭いね!

 そして、私としてもその問いに嘘で答える様な不誠実はしたくないので、かなり申し訳ない気持ちになりながらも「…実はそうなの」と小さな声で答える。

 すると紗凪ちゃんは怒ったり呆れたりすることなく、「あー、やっぱり」と納得がいったように頷いた。


「やっぱり?」


「ああ、はい。傍から見てもけっこー酔っぱらってはったんで、これ明日大丈夫かな~と心配やったんですよ。ほら、酔ったら記憶とかあやふやになるって聞くやないですか」


「…あー、うん。そうだね」


 やっ、やっぱり酔っぱらってたんだー!? それも紗凪ちゃんがそんなにありありと酔っぱらってるってわかるくらい。

 表面では取り繕いつつも、やはり完全に酔っぱらってしまっていたという事実に少なからずショックを受ける。もう、酔いぐらい気力で吹っ飛ばせよ私!

 だが、私が酔っぱらったということは半ば理解できていた。問題は酔っ払い何をしてしまったかという点だ。


「あれ? つーと、夜さんどの辺まで覚えてます?」


「うーんと、二本目を飲みながら紗凪ちゃんと話してた時ぐらいの記憶まではあるかな…。その後は、正直…ごめんなさい」


 話している最中で申し訳なくなって思わずそうペコリと頭を下げてしまう。

 しかし、


「いえいえ、謝ることありませんし。そこまで覚えてるんなら別にその後は大したことありませんでしたよ」


 と紗凪ちゃんは笑ってそう言う。

 う~ん、相変わらずいい子すぎる。可愛すぎる。

 …でも、流石に大したことなかったは無いと思うんだ。だって紗凪ちゃんのベットで寝てる時点で大したことなんだから。


「一応、その後の話を聞いてもいい。起きたばっかりに申し訳ないんだけど」


「いえいえ、それは別に。えーっと、その後ですか…、うーんそうは言うてもほんまにそんな大したことはありませんでしたよ。何となく察しはついとるかもですけど、その後も夜さんは飲みながらうちは食べながら花見をしてて、それで全部飲み終わった辺りで夜さんが寝てまいましてね」


「うんうん」


「そんで、うちが夜さんおぶってメインルームまで帰ってきたんですよ」


「ええっ!?」


 と、紗凪ちゃんがさらりと言った言葉に驚きの声を上げてしまう。

 いや、まあ花見の場所で寝たってことは誰かがここまで運んでくれったってことで更にはその誰かは紗凪ちゃんしかいないわけで、当然と言えば当然かもしれないが実際にその事実を認識すると驚く。

 というかおんぶ! 紗凪ちゃんにおんぶしてもらったの!? いいなぁ、酔ってる私!!


「それはお手数をかけて申し訳ない」


「全然全然、百合神が何か肉体強化いうのしてくれたんで全然大変じゃなかったですしね」


「そうなんだ。…でも、ありがとね」


「はいな。――で、なんでここで寝とるかのってのはメインルームについた後になんやいきなり夜さんがうちの部屋見たいって言いはりましてね、そんで二人してここに来たんです」


「ええっ!?」


 またもや、間をおかずに私の口から二度目の驚きの声が上がる。

 何やってるの、酔ってる私!? 

 …そりゃあ、まあ紗凪ちゃんの部屋を見たいとは思ってたけどさー、それを本人に言うかな普通! まあ言ったのは私なんですけど…!!

 そんな驚いてばかりの私を「あはは」と優しい笑みを浮かべながら見ていた紗凪ちゃんだったが、途中で何かを気付いた様に「あっ」と声を漏らすと、


「そういや、夜さん。頭痛ないですか?」


 とそんなことを聞いてくる。

 

「頭? 二日酔いで確かにちょいと痛いけど―――あっ!」


 そして私も話している途中で気づいた。

 内側の痛みの方は二日酔いで説明がつく。しかし、起きてからちょくちょくと痛いぶつけた様な痛みの方は理解不能だ。紗凪ちゃんはこれについてもなにやら知っているのかもしれない。


「うん、なんかぶつけたみたいな痛みがちょくちょくと…」


 そう答えると、紗凪ちゃんは苦笑いを浮かべながら「あー」と呟く。

 うん、その反応を見ただけでわかった。これも酔った私が何かやっちゃったんだね…。


「それはですね。なんかよくわからへんかったんですけど、酔った夜さんがうちの部屋に入るときに何かそこのドアの下でメッチャジャンプしはりましてね、上に思いっきり頭ぶつけてもうたんですよ。ごっつ痛そうでしたよ」


「………」


 三回目はさすがに「ええっ!?」はでなかった。その代わりにその衝撃を沈黙で示す。

 …マジで何をやってるんだ私は?

 いや、理解はできるんだけどさ。大方初めて紗凪ちゃんの部屋に入ってテンションが上がり場所もわきまえずにジャンプして頭ごっつんパターンでしょ。酔っていようとも私は私何となく想像はつくのだ。そして、想像がついてしまう自分が悲しい。


「ほんで痛みで悶絶しとるうちに夜さんが寝てまいまして、気持ちよー寝てはったんであんま移動さすのもと思いましてここで寝て貰ったって感じですかね。そんで今の状況ってな流れです」


「…なるほど。何から何までありがとうね、紗凪ちゃん」


「いえいえ、お弁当のお礼ですよ。あんくらいは当然のことです」


 そうニッコリと笑う紗凪ちゃん。

 結局のところ、紗凪ちゃんの話で知れたのはお酒を飲んだ私のダメなっぷりと紗凪ちゃんの天使っぷり。

 が、とりあえず私が酔った勢いで倫理的NGなことをしていなかったのを確認できたのは本当によかった。これだけわかればとりあえず一安心だ。


 …やばっ、安心したらトイレ行きたくなってきた。よく考えれば昨日からお酒をあんだけ飲んだのにトイレ行ってないしね。当然のことかもしてない。


「ごめん、紗凪ちゃん。私ちょっとお手洗いに」


「あっ、了解です」


 ベットから立ち上がり、名残惜しいが紗凪ちゃんの部屋を出てトイレへと向かう。

 そんな私の背中に、


「あっ、そうだ。夜さん」


「ん?」


 紗凪ちゃんの声がかかる。

 ドアノブを握りながら立ち止まり振り返る。


「言い忘れてましたけど。普段見れない夜さんの変わった新しい一面を見れたのも結構楽しかったですよ♪」


「………え?」


 ニコリと少し悪戯っぽく笑いながら紗凪ちゃんがそんなことを言った。


 そしてここから数日の間、私はその紗凪ちゃんが言った変わった一面がどんなものだったのかが気になって気になってしょうがなかったのだった。

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